トヨタ自動車×デンソーを占う

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いよいよ今週末大一番がやってきます!

昨季対戦時はgame1をトヨタ自動車が85-78、game2はデンソーが82-79で制し、星を分け合った。2試合とも接戦、かつWリーグの試合としてはハイスコアだった。そこから選手の入れ替わりは少なく、今季も熱戦が期待できる。 注目ポイントはたくさんあるが、以下の3つを挙げたい。

 

3pt成功率

西地区6チームの昨季と今季の3pt成功数・試投数・成功率の比較である。昨季は16試合・全チームと対戦していない、今季は6試合(三菱電機、山梨QBは8試合)・地区内で対戦が一巡していない・交流戦はなしという状況。単純比較はできないことはご了承いただきたいが、アイシンAW以外は成功率が下がっている。世界的に3ptが重視される傾向にある中でアウトサイドのディフェンス力が各チーム上がっているのだろうか。西地区で考えるとトヨタ自動車デンソーは特に3ptを警戒されるチームだが、昨季からトヨタ自動車は7ポイント近く、デンソーに至っては10ポイント近く下がっている。要因として両チームのキャプテン&正PGの三好選手、稲井選手に当たりがきていないことが1つ挙げられる。

  • 三好選手 43/101 42.5%→12/43 27.9%
  • 稲井選手 22/57   38.5%→6/32    18.7%

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三好選手は5試合、稲井選手は全6試合でスタメン出場しており、両選手とも平均プレータイムは25分。3pt試投数は三好選手が平均7本、稲井選手も5本。信頼は厚いことがうかがえるし、この状況でもトヨタ自動車は6戦無敗、デンソーも2戦目から5連勝と結果が出ている。これらから両チームは武器や策が豊富なことが分かるだろう。3ptで見てもトヨタ自動車は×三菱電機game2でスタメン起用されてから調子を上げてきた栗原選手が4/8、山本選手が8/20(西地区3ptランキングトップってご存知ですか?私も週明けに確認しましたが、そこまで決めてるとは思わず驚きました!)、平下選手も6/20。デンソーは近藤選手が7/20、篠原選手が9/30。山本選手、平下選手はドライブの速さもあり、栗原選手やデンソーの2選手は少ないチャンスでも確実に仕留めてくる職人さがある。

こうしてカバー出来る選手は複数いるが、トヨタ自動車デンソーの対戦となるとキャプテンにも当たりがこないと厳しい戦いになるし、誰が当たるか・何人当たるかは重要なカギとなるだろう。ピックアップした選手たち全員に当たりがこればWリーグではあまり見ない100-95などかなりのハイスコアになるかもしれない。そういう試合もたまにはあってもいい(笑)

 

 

インサイドの闘い

ペイントエリアでの肉弾戦が増えればフィジカル、パワーで勝るトヨタ自動車が有利か。デンソーとしてはトヨタ自動車のビッグマンを外に釣り出して、ひまわり選手・本川選手がドライブでアタックしていきたい。ミスマッチが起こる時間帯が多いだろうが、そこをトヨタ自動車がどう守るか。スピードがあるエブリン選手、永田選手、パワーでは国内なら誰にも負けないステファニー選手がカギか。

(改めて水島さんの引退を痛感…デンソー本川選手とのマッチアップ見たかった…)

 

 

欧州の名将対決

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トヨタ自動車・モンデーロHCはスペイン、デンソー・マルコヴィッチHCはセルビア。母国の女子代表HCを兼任している。両HCともに長く中国などの強豪クラブチームと代表HCを兼任している百戦錬磨の名コーチである。マルコヴィッチは昨今の情勢下において来日が遅れていたが、先週末チームに合流して、この大一番から指揮を執ることが発表されている。

両チームとも戦力は充実しており、今季の平均プレータイムが一番長い選手はトヨタ自動車が三好選手、デンソーは稲井選手。そう!3ptの調子が上がってきていない両キャプテンです!平均30分以上出ている選手が居ないのです!

(これも山本選手の3pt同様調べてみてビックリでした。トヨタ自動車はエブリン選手、デンソーは髙田選手かひまわり選手だと思ってました)

名将が豊富な駒をどう活かすか、ご注目ください。

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またトヨタ自動車を一昨季率いたトリノス現AHCはリオ五輪でモンデーロHCの下でアナリストを務めた。デンソーを昨季率いて、今季も6試合代行HCを務めたヴクサノヴィッチHCではセルビア代表でもマルコヴィッチHCの右腕でして活躍している。さらにはトヨタ自動車・大神AC、デンソーには小畑AC、伊藤ACとかつてWリーグで活躍した元選手がいる。 世界を知り尽くしたコーチとWリーグを知り尽くしたコーチたちの融合。皆さん試合前も試合中も試合後も選手たちとコミュニケーションをすごく取ります。モンデーロHCは審判とも(たとえ国際審判でもスペイン語は分かる方って少ないと思うから、皆さんスルーしてるのかな笑笑)マルコヴィッチHCはどういうタイプか分からないですが、予習しておきたい方は昨年7月のスペイン×セルビアの試合をご覧ください。


Spain v Serbia - Full Game - FIBA Women's EuroBasket - Final Round 2019

1分半くらいのハイライトもあって、日本と欧州の違いをつかみだけでも知ることができるので、よろしければ。世界は戦い方に男女の境界線がなくなりつつあるのかなと思います。

 

さらには近藤選手、森選手は古巣対決(近藤選手は移籍2年目ですが)、トヨタ自動車のユニフォームは何色か(黒か赤かピンクかはたまた紫か)など楽しみが満載ですが、予想としては過去2季同様game1をトヨタ自動車、game2をデンソーが制すると思います。さらに予想するとgame1は三好選手の3ptが入り始めて意外と15点差くらいで勝利、game2は1〜2ポゼッション差で、デンソー

 

一昨季四国、昨季沖縄、今季も当初予定では四国だったのがカーディング変更により、地元で見られる。この点に感謝して、会場で堪能したい。

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勝手に東地区前半戦アウォード

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東地区は前半戦の全日程が終了。西地区中心に見てる身ではありますが、厚かましく開催しますw

※得点、3pt等公式記録はこちらを。 

東地区の選手が上位独占気味ですが、残り2週で西地区の選手も割って入ってくることを期待したい。

 

MVP

渡嘉敷来夢ENEOS #10)

説明不要のスーパースター。今季はPG2選手が退団・引退し、怪我人も多い中でよりリーダーシップを発揮。プレーエリアも広がっており、進化はまだまだ止まらない。

 

ベスト5

宮崎早織ENEOS #32)

開幕戦でのヒロインインタビューの言葉通りの活躍ぶりだった。以前はゴール下まで一直線なドライブが多かったが、特長は残しつつ、ENEOSの正PGに相応しいゲームメイクを見せている。

 

北村悠日立ハイテク #28)

スピード、フィジカル、シュート力を兼ね備えたウィングプレーヤー。谷村選手の活躍がクローズアップされがちだが、それもウィングに北村選手がいるからこそ。ディフェンス力も高く、年々脅威な存在になっている。11月に日本代表活動が行なわれるが、引き続き招集されるだろう。

 

野口さくらシャンソン化粧品 #20)

本川選手、谷村選手が移籍、石川選手は欠場が続く中で平均プレータイムは37分超えているが、攻守にフル回転。苦しいチーム事情の中で開花の時を迎えた。フィジカル強化が出来れば日本代表入りも見えてくるだろう。

 

谷村里佳日立ハイテク #11)

渡嘉敷選手にも屈しないフィジカルの強さで柱となれるだけでなく、ドライブ、3ptと得点パターンが豊富。さらには鈴木選手とのハイロープレー、スクリーナーとしての貢献度も高い。シャンソン化粧品時代からさらにプレーの幅を広げた超オールラウンダーで、MVPにしようか迷った。日本代表ホーバスHCは渡嘉敷選手、髙田選手、長岡選手に続くインサイドプレーヤーを見定めているようだが、4番手どころか長岡選手のところに割って入っても全く不思議ではない。日立ハイテクへの移籍は大成功だった。

 

 

渡嘉敷来夢

 

ベスト6thマン

谷口二千華富士通 #13)

平均プレータイム15分、平均得点7.8などスタッツ上では大きく目立つ活躍はないが、篠崎選手とのタイプの違いで相手は惑わされただろう。ひらりひらりと抜け出して放たれるレイアップシュートは女版・比江島慎か(2度目のフレーズ)3pt成功率も40%超。

 

ベストディフェンダー

曽我部奈央日立ハイテク #5)

富士通からの移籍初年度は鶴見選手の控えという立ち位置だったが、今季は全試合スターターでの出場。平均プレータイムも27分と正PGの座を獲得。その要因がディフェンス力の高さであることは言うまでもなく、粘っこいマークは町田選手や本橋選手も苦しめた。

 

新人王

藤本愛妃富士通 #18)

正直なところ厳格な審査をすると前半戦の時点では該当者なしだと思う。篠原さん、山本さんが引退で懸念されたインサイドオコエ選手、田中選手と競い合って、レベルアップし、自身もテーブスHCの檄を受けながら立ち位置を確保。その藤本選手に敢闘賞的な意味合いも込めて。

 

MIP

田中真美子富士通 #14)

最も印象に残った選手なので完全な主観です(笑)

大学時代は職人肌のセンタープレーヤーという印象だっだか、今季はオールラウンドなインサイドプレーヤーに変貌。開幕前のインタビューでテーブスHCが期待する選手として名前を挙げていたが、その期待に沿う活躍ぶりで昨季はなかったスタメン出場が4試合。佐藤寿人選手ばりの鋭い嗅覚と稲垣祥選手ばりのハードワークで速攻を支えた(伝わらない表現)

3ptの精度が更に上がってくるとホーバス氏とロイブル氏で奪い合いが始まるかもしれない。

 

この記事を読んでくださった奇特読者(←)の皆様のご意見もお聞かせいただければと思います。そして西地区アウォードも11月上旬にやろうと思ってるので、お楽しみに(何様)

Wリーグ東地区第5週レビュー


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富士通レッドウェーブ×日立ハイテククーガーズ

game1は両チームとも自分たちの特長を出そうと戦い、日立ハイテクはそれがハマり快勝。game2は前日から攻守においてアジャストした富士通が圧勝。両チームの実力は拮抗していると思うが、それゆえかバックトゥバックの難しさを実感する試合でもあった。

日立ハイテクは谷村選手が38分出場で30得点・15リバウンドと獅子奮迅の活躍を見せたが、北村選手・佐藤選手が3ptだけでなくドライブからの得点を決めるなどオフェンスパターンが増えてきたように思う。それ以上に目立ったのがディフェンス。曽我部選手が町田選手に自由を与えず、基点を潰した。今季鶴見選手より曽我部選手のプレータイムが増えているが、ディフェンス面への高評価であることは明らかだ。インサイドにボールが入ってもダブルチーム、ヘルプ、ヘルプに行くフリなど使い分けが絶妙で、富士通は外からのタフショットが増えた。

3ptアテンプトが日立ハイテクより10本以上多い32本だが、成功率は30%を切っているのがその証か。加えて日立ハイテクはサイズ、フィジカルを備えた選手が多く、3番ポジション以外は基本マッチアップで優位に立てる。その相手に富士通インサイド陣は完全なパワー負け。ならばガード陣で打開しようと谷口選手、岡田選手が奮闘。谷口選手は12得点の活躍。岡田選手もエナジー全開のディフェンスと積極的なドライブを見せたが、キックアウトから連動性がなかったり、フィニッシュで迷いが見られたりとチームにフィットしきれていない感があった。

その中でテーブスHCは町田選手・岡田選手・篠崎選手のスリーガード布陣を仕掛けてきたが、練習でやっていない策であることは明らかだった。それだけ厳しい展開であり、打つ手のなさを露呈してしまった。

 

game2は一転富士通がアグレッシブなディフェンスを仕掛け、終始圧倒した。3ptラインで激しくプレッシャーを掛け、インサイドにボールが入っても時にダブルチームで潰しにいき、谷村選手を封じた。簡単に捌かれてオープンで3ptを打たれる場面も多かったが、それは覚悟の上だったのだろう。3ptを捨ててでも谷村選手にはやられたくなかった。結果日立ハイテクは谷村選手の得点は約半分となっただけでなく、3ptの成功数も下がった。ボールの回りが悪く、本来のオフェンスの形ではなかったからだろうか。谷村選手依存ではないようで、スタッツ通り依存していることが浮き彫りになった一戦だった。9人でローテーションしているが、ダラーメ選手ら新卒1,2年目の選手の台頭にも期待したい。

ディフェンスでリズムを掴んだ富士通は速いオフェンスで圧倒し90点。game1はチーム全体のアシストが12だったが、game2は町田選手が1人で11アシストをマークするなどチーム合計で25。篠崎選手は29得点とこれだけ見てもこのチームのらしさが全開だったことが分かるし、チームとしても納得の前半戦ラストマッチだったのではないだろうか。広報さんのウキウキ感が出まくってますね(笑)

他の選手含めて45度からドライブインで仕掛けて、ノーチャージセミサークルエリアまでは攻め込まず、パスアウトからの3pt(成功率は50%超)やミドルシュートやフローター、スクープショットを多用し、パワー差を埋めるアイディアも見られた。

谷口選手は引き続き好調。篠崎選手とはタイプが全く違うので守りづらく、かつ併用も可能なので、2,3番ポジションのバリエーションは実に豊富である。game1ではらしさは出しつつも孤立気味なところがあった岡田選手もチームが良い流れの中で起用され、キッカケを掴みそうだ。町田選手という絶対的な存在がいる中で現状は繋ぎ役・ディフェンスでエナジー注入といったところだが、外からのシュートの精度を上げていけばテーブスHCとしても起用しやすくなるのではないか。イメージとしては山本選手(トヨタ自動車)、酒井選手(アイシンAW)のような役割だろうか。決着がついた試合終盤にしかプレー機会は与えられていないものの懸命なアピールを続ける星田選手含めて3人でPGをローテーションし、時にツーガードも出来れば、ディフェンス強度を40分維持でき、よりこのチームの良さが出せるかと思う。

 

両チームのファンではないが(どちらかというと富士通の方が好き)2試合とも見た立場からすると変化を楽しめたが、最終的には11点差に収まったgame1を含め2試合とも前半で決着がついてしまった感があったのは残念だった。当然スカウティングもアジャストもされるが、試合の中でアジャストしたり、ベンチがさらにもう一手二手打って、接戦になった上で、星を分け合っていたら誰が見ても見応えがある試合になっていたのではないだろうか。両チームに能力の高い選手が揃っているだけに余計にそう思えてしまった。さらに言えばそれが出来なければENEOSだけでなく、分厚い戦力を策士が操るトヨタ自動車デンソーの上をいくのは難しいのではないかと感じさせられたが、時間はある。両指揮官が皇后杯までにどうバージョンアップさせられるか。交流戦がないのは残念だが、激戦続きの皇后杯になることを期待したい。

 

新潟アルビレックスBBラビッツ×東京羽田ヴィッキーズ 

  • game1 新潟●54-58○東京羽田
  • game2 新潟●66-81○東京羽田

前週まで8連敗の両チーム。新潟は戦力的に厳しいのは否めず、怪我人もいるようでやり繰りも難しいが、ロー・ヤシン選手という(ENEOS戦以外では)絶対的な高さを誇る選手がいる。東京羽田に関してはどう考えてもこの成績はあり得ない。私は地区3位に予想していたし(贔屓目もあるが笑)、最低でも4週で2勝は出来るチームだ。

そう思いながらgame1を見たが、新潟は大黒柱ヤシン選手、高いスキルを活かして得点を量産できる千葉選手にボールを回す型がもっとあれば勝てる試合だった。game2も17分くらいは互角の展開だったが、軸丸選手の連続得点により前半でケリをつけた。

正直なところ試合内容としては凡戦。両チームが何故結果が出ていないのかを考えると他のチームと比べて圧倒的に試合中のコミュニケーションが少ないことが見て取れた。クロックが止まっている時にハドルを組む、ファールやイージーミスをした選手を励ます、交代でベンチに下がった選手にコーチが声掛けするなどバスケットボールという競技は試合中のコミュニケーションが取りやすい。それによって気持ちを切り替えることもアジャストすることも微修正することも可能だが、それが出来ないと悪い流れを変えることは難しい。

  1. コミュニケーションが少ないから弱いのか
  2. 弱いからチームに亀裂が生じてコミュニケーションが減っていくのか
  3. コーチングスタッフ編成に問題があるのか
  4. HCの性格などがチーム体質に影響しているのか

全てが正解だと思うが、両チームとも特に3,4の部分が大きいのではないか。両指揮官とも選手とはある程度距離を取って接する威厳のある先生タイプだと思う(新潟の場合は選手とのジェネレーションギャップがありすぎるのかもしれないが…)個人的には好きな手法ではないが、それはそれでアリ。ただそれならトヨタ紡織・中川HCやシャンソン化粧品・丁前HCのように時にはもっと熱くなってもいいのかなと思う。叱咤することもあってもいいと思う。プロレベルのアスリートって負けず嫌いの塊、やられたらやり返す・叱られたらそれに発奮する人ばかりでしょう。

叱咤しないのならデンソー・ヴクサノヴィッチAHCのように常に穏やかにコミュニケーションを取っていくべきだと思う。またHCの性格やチーム作りの方針に合ったACが必要だが、そういう存在もこの両チームにはいない。これはコミュニケーションだけでなく、戦術面・技術面にも大きく影響してくる。シーズン中の選手補強は出来ないリーグだが、コーチングスタッフなら可能であり、手を付けるべき部分だろう(お金もコネもないのかもしれないが…)

 

ENEOS×シャンソンは見てません…野口選手の活躍は聞いております。

 

東地区の前半戦ベスト5を勝手に選出しようとしましたが、長くなったので、別トピックにします。とりあえずリーダーズをご覧ください(笑)

Jリーグ 川崎フロンターレ×名古屋グランパス

グランパスのディフェンスは非常に堅い。1試合平均で見ると2番目に少なく、前節までの3試合は全て完封勝ちを収めている。組織的であり(ゴールキーパーセンターバック、守備的MFはほぼ固定であり、嫌でも連携は上がってくる側面はあるが 笑)、局面局面では身を投げ出していけるメンタル・フィジカル・判断力がある。実際この試合でもフロンターレにそこまでズタズタに崩されたわけではない。8月の対戦時と似た展開で、フロンターレがボールを保持し攻め込むも名古屋としては充分守れていて、ワンチャンスをモノに出来れば勝機もあり…という前半に見えた。

しかし終了間際にその目論見は崩れた。名古屋守備陣の弱点として高さ不足という点がある。これを補うため相手セットプレー時は基本的にゾーンディフェンスを敷く。バスケでもサイズで劣るチームがよく用いるが、間に割って入られたり、変化をつけてこられたりすると脆い。前半終了間際の失点を含め全てこの弱点を突かれた。

1点目はキッカーが中村選手から田中選手に変わった。この時点で変化(それまで中村選手のキック精度があまりよくなく警戒感が薄れていた可能性もなくはない)田中選手のキックは低く速いボール。直接ヘディングシュートは難しいボールだが、コースを変えて三笘選手は軽く当てるだけ。

2点目は中谷選手に当たっており、オウンゴールに近く、不運とも見えるが、フロンターレの狙い通りだろう。ゴールから遠い位置をターゲットにし、ジェジエウ選手とオ・ジェソク選手で大幅なミスマッチを作り、かつ中谷選手を釣り出した。この時点で勝負あり。中谷選手に当たっていなくても川崎の選手が押し込んでいた可能性が高い。3点目も直接誰かに合わせず(松本育夫氏の名言を思い出しましたw)、一度他の選手に短くパスしてから中村選手が左足でクロスボールを入れた。崩れたグランパス守備陣の間に屈強なジェジエウ選手が飛び込んでドカンと2発目を叩き込んだ。

 

繰り返しになるが、決してグランパスが悪かったわけではない。阿部選手もそう言ってます(笑)

他の相手ならマテウス選手中心に特攻し、セットプレーやミドルシュートで得点を獲れるが、フロンターレも当然前回対戦時に破れた悔しさがあり、スカウティングをしてくる。その中でしかし前回より決定機は少なく、マテウス選手がボールに絡むことが少なく、そうなるとセットプレーを得ることもミドルシュートでゴールを脅かすことも出来なかった。川崎はここ数年中軸は変わらず、そこに大学で鍛えられたユース出身選手や大島選手を成功例に増えている静岡学園高出身者がボトムアップしているチームなので、当然成長スピードはすさまじい。高さに欠け、シャビエル選手・相馬選手の負傷離脱によって、ただでさえ少ない手駒がさらに減ったグランパスには後半反撃できる力が残っていなかった。

前述の通りグランパスも本来セットプレーは得意だが、それ以上に豊富なバリエーションを駆使して、得点を量産できるフロンターレが5枚くらい上手。24試合の消化で2度目の10連勝なんて間違いなくJリーグ歴代最強チームです。よっぽどの大アクシデントが発生しない限り優勝する。となると4年で3回フロンターレが優勝。どこのチームにも優勝も降格も可能性があるくらい混戦なのがJリーグの特徴だったのに、これでは面白味がない。こういう一強独走リーグはWリーグだけでいいです。

というのは半分以上負け惜しみですが(←)、特定の推しチームがないファンからしても興味を削がれると思うし、メディアの注目ポイントも偏ってしまったり、やっぱりいくつかのチームが強い方が良いです。1シーズンでも早く王者が入れ替わってほしいし、それがトヨタ自動車のチームだと尚良いです(トヨタ自動車の社員ではありませんがw)

グランパスは来季のACL出場権を獲得できたりしたらなんだかんだ資金注入されて補強するだろうし、アンテロープス絶対王者の高さに対抗すべく自由と規律の絶妙なバランスで破壊力あるチームを作っています。このまま強化が進めばフロンターレみたいな守り方が見つけられないチームになるはずです。ご期待ください!こういう光景が近いうちに見られるはずです←最後は女バスで締めるスタイル

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Bリーグ2020-21 第3節 三河×名古屋D game1

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※画像と今日の試合は関係ありませんw

三河クロスゲームを制した。名古屋Dとしてはアウェイでバーレル選手のファールトラブルもあった中でよく耐えて拮抗した試合に持ち込んだとも言えなくはない。しかし4Qのゲーム運びはチームの未熟さを露呈してしまった。齋藤選手の軽率なプレー、決めきれなかった安藤選手、残り1分で1ファールしかしておらず、ファールゲームの選択肢すら持てなかった。三河は柏木選手がコントロールし、金丸選手が要所要所で3ptを決めた。4Qオフィシャルタイムアウトの前の両選手の連続3ptで勝負は決した感があり、ベテランの力の尊さを実感した(後半も高橋選手やシェーファー選手を見たかったなぁと思いつつ、そりゃホーム開幕戦勝ちたいですよね)

 

前半は三河のハーフコートオフェンスに付き合ってしまった感があった名古屋Dだが、3Qは速い展開から人もボールも動き、3ptアテンプトが増え、理想とするバスケができていたのではないだろうか。早々にバーレル選手がファールトラブルに陥ったが、かえって流れをつかんだ。ゾーンディフェンスで三河のオフェンスリズムを崩し、木下選手のドライブは三河のオフェンスマシーン達を疲弊させた。それだけによく頑張ったより勿体ない負けという印象が強い。ガード的な役割もこなせるライオンズ選手はいつ合流できるのだろうか……

 

5連勝の三河は今日最後に出ていた5選手を中心に起用していけば西地区優勝の可能性は高いかと思う(琉球とか大阪とか見たことないけど←)ただ東地区の強豪は上手くて速くて強いので(語彙力)、金丸選手と川村選手併用の時間が長くなるのは厳しいのではないだろうか。高橋選手は今日の2Qで力は証明しているので使っていけばもっとフィットしていくだろう。インサイドは現状で全く問題ないが、コリンズワース選手をどう活かしていくか。デカくて特にパスが上手いが速さがないので、Bリーグのガードとしての適性には疑問符もつく。今後どうフィットさせていくか、フィットしなかった時に決断することはあるのか。その時にどういうタイプの外国籍選手と入れ替えるか。今季の三河を占うポイントかもしれない。

 

久々にBリーグの試合フルタイムで見ましたが、面白い試合だったし、コア層もライト層もたまたまTVで見た人も満足できたと思います。Wリーグもこういう試合が増えて欲しいです。

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game2も後半から見たが、前日同様の接戦。笹山選手とバーレル選手のコンビネーションで3Qで勢いづいて、4Qも流れを保ち、結果的には名古屋Dが快勝。

 

前半は齋藤選手の活躍が目立っていたようで、三河としては木下選手も含めたエネルギッシュなガード陣にかき回されると苦しい。

 

柏木選手のプレータイムが2日連続で長くなり、金丸・川村選手のディフェンス負担が増えると後手後手になってしまう。Bリーグは60試合の長丁場であり、結局は例年同様若手育成・戦力底上げが求める。

Wリーグ西地区第4週レビュー+東地区も少々

西地区の4チームは前週試合がなかった。その間に開幕から出場できていなかった選手が続々と復帰し、また新加入選手が徐々にフィットしてきた。一方で基本的に同地区の試合は同会場で行なわれるため、各チームスカウティングがしやすいように思う。実際トヨタ自動車×山梨の後半をトヨタ紡織の中川HC、知花AC、トヨタ紡織×三菱電機の後半をデンソーのヴクサノヴィッチAHC、伊藤ACが視察していた。確認はしていないですが、審判も東地区担当・西地区担当で分かれているのではないかと思う。となると審判によるレフェリングの特徴まで分析が可能である。週末同一カード連戦が基本の日本バスケにおいてはスカウティングは大きくカギを握る要素だが、今季のWリーグのレギュレーションだとさらに重要度が増す。シーズン後半戦では3,4回目の対戦がある。策が尽きる、引き出しが空っぽという事態が起きてもおかしくない(皇后杯で対戦したチームとセミファイナルやファイナルで対戦したら8戦することに?見る方も飽きてしまうかもですね

ということが起きないようにデータをどう活かすか、立てたプランをどう選手に落とし込むか、プランが崩れた時にどういうラインナップを組むかなどコーチ陣の手腕もものすごく勝負を左右する。ということが頭に浮かんだ週だった。

さて対戦カードごとに振り返っていきますか。

 

トヨタ自動車アンテロープス×山梨クィーンビーズ

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スカウティングの重要性を特に痛感したgame1の前半。山梨のアグレッシブなディフェンスの前にトヨタ自動車は大苦戦を強いられた。足を動かし、ディナイを怠らないディフェンスに対してオフボールの動きが停滞。パスが回らず、たまにオープンが出来てもこのチームの生命線とも言える三好選手の3ptシュートがこの日は不発(0/6でミドルシュートによる2得点に終わった)。敵陣を切り裂くドライブで流れを変えることを出来ず、4分ほどでタイムアウトを請求。その後も1Qで全12選手を起用する珍しい策を講じても打開できず、3点ビハインドで1Qを終えた。平下選手、永田選手のルーキーコンビで徐々にらしさを取り戻し、6点リードで折り返した。3Qで試合を決めたのは栗原選手。このクォーターだけで3pt2本、ミドルシュート2本で10得点。

(↓の写真は2本目のコーナーから決めた3ptです。審判も3ptのジェスチャーしてますが、ダメダメな写真ですねw自分としては思い出に残るので満足です笑笑)

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さらには安間選手かと思うくらいの華麗なアシストも。ハイライト動画見ていただくと分かりますが、このときコーナーで山本選手が呼んでるんですよね。栗原選手はインサイドの河村選手を選んだんですが、こういう声が聞こえるのって面白いなぁとか試合中でもちゃんとさん付けで呼ぶんだととか思いました(サッカーの中田英寿氏は試合中にさんとかくんとかつけてられないから皆呼び捨てと言ってました。女性社会だと難しいのかな。梅木選手もクゥさん!とコールしてました)

 

と話は逸れまくりましたが、栗原選手の活躍は10得点よりディフェンス面だったと思います。気の利いたポジショニングでチームを引き締めて隙を与えず、ブロックショットも2つ記録。この日のMVPは間違いなく栗原選手だった。「私がこんな頑張らなくてもいいようにあなたたちしっかりしなさいよ」とか「このチームは私が居ないとダメよね」とか絶対思ってないでしょうが、そう思ってても不思議ではないくらいの救世主な活躍ぶりだった。

4Qはやや集中力に欠ける場面もあったものの、15点差つけての快勝だった。こうしてトヨタ自動車は手を変え品を変え、山梨のスカウティングを無力化してしまった。選手層が厚いといえばそれまでだが、戦況を見極めて打開できる選手を投入したモンデーロHCの采配、応える若手選手、アジャストする中堅・ベテラン選手。チームの総合力の高さを証明した試合でもあった。

game2は前日結果を出した若手選手をスタメン起用しつつ、先を見据えて色々と試してるようだった。

山本選手が牽引して、平下選手、永田選手は引き続き期待に応えてともに30分近いプレータイムで2ケタ得点。前日4分ほどの出場に終わったステファニー選手はこの日のスコアリーダー。数年後のトヨタ自動車を思い描くことが出来た。山本選手はオフの間に身体が一回り大きくなったが、スピードは落ちていない。むしろ上がっている。アーリーオフェンスで起点となっていた。平下選手、一見速さも強さもそこまでないように見えるが、ボールを持つと速い。高く強いドリブルはボールの置き所やコース取りも巧みで一気に相手ゴールまで迫れる。体幹も強くミドルシュートの精度が非常に高い。永田選手は大学リーグとのギャップに苦しんでいた感があったが、活きる道を見つけた感がある。ダイナミックさはそのままに無理な突破は避け、ファールを誘うドライブやミドルシュート、速攻時のポジション取りなどに進化が感じられた。クロックが止まっているときなど合間にはモンデーロHCが若手選手にマンツーマン指導する場面も何度か見られ、後半にはゾーンディフェンスを敷く時間を長く取るなど打倒ENEOSに向けて手綱を緩めることはなかった。

クォーター内での交代は少なく、ツープラトンに近い形となり、主にスタメンが1,3Q、安間・三好・栗原・長岡・河村の5選手が2,4Qに出場したが、この日のセカンドユニットも皆目立った活躍はなかったものの特長は発揮していたと思う。 一方で前日結果を出せなかった脇選手、西澤選手は大差がついても出番はなし。これがプロの厳しさだろうか。

一週空いてからのデンソー戦。ヴクサノヴィッチAHCも今季のチームを掌握し始めている。次戦ではマルコビッチHCが指揮を執るかもしれない。2連勝したチームが皇后杯でのENEOSへの挑戦権を獲得、星を分け合ったら今年も…と言っても差し支えないだろう。

 

三菱電機コアラーズ×トヨタ紡織サンシャインラビッツ

game1のみ観戦。三菱電機はいつもどおり西岡選手、小菅選手がインサイドでファイトする戦い方をして、トヨタ紡織・中川HCはいつもどおりの采配をした。結果は2Qで川井選手、渡邉選手を少し休ませられた(それでもプレータイムは充分長いが…)三菱電機が東藤選手、加藤臨選手をフル出場させたトヨタ紡織に勝った。正直この差だと思う。1Qで平末選手、白選手の出来が悪いと判断したのだと思うが、点差が迫ってきたところでずっとベンチを温めていた平末選手を戻し、この試合全く出ていなかった坂本選手を投入したところで彼女たちは心も身体も準備できてないですよ…中川HCの使い倒すスタイルを全否定するわけではないけど、それなら怪我人出たときとかアクシデントは別にして最後まで貫かないと選手に迷いが生じるだけ。采配で落とした試合だと思います。

 

アイシンAWウィングス×デンソーアイリス

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game1のみ観戦。アイシンAWにとってはサイズ不足、フィジカル差でリバウンドやディフェンスで苦しくなるのは予想できたが、オフェンス面への対策も完璧に練られ、完敗。選手のコンディションは上がってきたが、パスが回らず頼みの3ptシュートは苦し紛れのものばかり。上長選手を投入して打開を図るも他の選手の動き出しが少なすぎた。デンソーもぞーんぎディフェンスに戸惑ったの外の精度が悪く、2Q序盤までは接戦だったが、デンソーが取ったタイムアウト後に渡部選手を投入し、中・外のバランスがよくなり、本川選手が躍動。万事休すとなった。

コーチングスタッフが代わって、コーチ同士、コーチと選手、選手同士コミュニケーションが格段に増えたと思う。ベンチメンバーの表情もすごく明るくなった。4試合スタメン出場はおろかプレータイムにも恵まれなかった江良選手がデンソーgame1でスタメン起用されたのは競争原理が働いている証。戦い方のコンセプトも良いと思う。開幕まであと1ヶ月程のところで2週間活動停止を余儀なくされても開幕戦であの試合が出来たのは6月から取り組んできたことが正しいことを証明している。しかし勝てそうだった対山梨game2や対トヨタ紡織game2を落とすなど、結局は5連敗。内容や過程も大事、育成も大事だが、このままでは負け癖がついてしまう。勝てなくても仕方ないという気持ちになってしまう。ニ頭体制に亀裂が生じてしまうかもしれない。地元安城での開催で何とか連敗を止めたい。

 

ENEOSサンフラワーズ

熱血バスケで見ただけですが(笑)、真打ち登場って感じで岡本選手・宮澤選手が出場して、バサッと斬ったようですね。

(まともにENEOS追ってなくても岡本選手がここに照準合わせてて、宮澤選手は大事を取ったことくらい予想できたので、彼女たちのファンのためにも一言アナウンスしてあげればいいのになぁと…自分みたいな性格悪いやつは読めるけど、純真な高校生や大学生のファンの子とか心配してたと思います)

それにしてもENEOSって強いチームと戦うと前半は苦戦することって結構あるのに3Qで試合決めてしまうパターンがお決まりですよね。選手のアジャスト能力がハンパないなと思います(あくまで選手です。このチームは誰がHCでも変わらないと思ってるので…さらに言ってしまえば渡嘉敷選手がHC兼任でも変わらない成績というかもっと強くなるとすら思います

 

東京羽田ヴィッキーズ

あまり多くは語りたくないですが(←)Bリーグとかプロだったら今月末あたりでそうなってるんだろなぁと思います。Wリーグのクラブチームだとシーズン途中でそういうことをする資金力もコネもないだろうから、選手で何とかするしか…

富士通戦は津村選手、モニィーク選手の活躍が目立ったし、軸丸選手はプロの壁を実感しただろう。他にも選手は揃ってるんだから、もうここまできたら全選手もっともっと我を出していけばいいのでは思います。

 

富士通レッドウェーブ

今季は田中選手、藤本選手も3ptを積極的に打つなど速さありきではなくどこからでも点を取れるスタイルにマイナーチェンジを図っているところだと思う。その中で篠崎選手の個性が活きていなかったように感じるが、8試合目の4Qにして全国1000万人のWリーグファンが待っていたであろう忍者ぶりが披露された。町田選手も13アシストの大活躍。ホットラインの健在ぶりをアピールした

サイズ不足は否めず、後半戦もENEOSから白星を挙げるのは正直厳しいかもしれないが、皇后杯トヨタ自動車デンソーと当たった時にどういう試合になるかは非常に楽しみなところ(地区制は仕方ないが、交流戦がないのは非常に残念…)。岡田選手がもっとフィットして、町田選手の負担が減ったり、町田選手と岡田選手のツーガードが出来たりするとより脅威なチームになるだろう。

と先のことを考える前に今週は日立ハイテクとの対戦。元富士通とか前所属先が同じなど縁のある選手も多いので楽しみ。西地区はバイウィークを経て大一番が待っている。アイシンAWもここで勝てれば自信を取り戻して(昨季の皇后杯のような)強豪からの勝利もあるかもしれない。

 

とにもかくも拮抗した試合が見たい。20分、25分で決まってしまうような試合ばかりでは興味・関心を引くことはできない。渋谷対千葉みたいな胃がキリキリする試合を!!

チームマネージメントが難しい今シーズン

カテゴリーを問わず選手を預かる立場(部長、監督など)であれば皆選手は大事にしたいと思うだろう。怪我してほしくない、長く活躍してほしい、多くの選手に出場機会を与えたいと考えるだろう。一方で誰でも勝ちたい、勝利の味を知って欲しいという感情もあると思う。ファンからは「若手を使え」「○○選手を無理させるな」「育成も大事だ」などの声が挙がってくる。これはチームスポーツにおいて永遠に解決しないと思う(笑)

今シーズンはその舵取りが例年以上に難しいのではないか。Jリーグのファンから「今シーズンは降格ないんだから思い切った采配を」みたいな声がよく聞こえてくる。実際遠藤保仁選手を放出したガンバ大阪などそういうチームもあるが、降格ない、ならば若手起用と簡単にジャッジ出来ることではない。トップカテゴリーで戦うに相応しい心技体を備えていない、監督の求める戦術理解度に達していない選手を無理に起用すればその選手が大怪我をしたり自信を失ったりして成長を阻害することになりかねない。チームとしても勝利を得ることは難しくなる。未成熟な選手の分もカバーする他の選手は余計に疲労が蓄積される。主力が怪我してしまったら大打撃だ。かと言って主力を酷使しすぎるのも怪我に繋がるし、選手生命を短くしてしまうかもしれない。マッシモ・フィッカデンティ監督も李玉慈HCもこうした葛藤と日々戦っていると思う。

 

というわけで名古屋グランパスシャンソン化粧品シャンソンVマジックを例に挙げてお話しを。

どのチームでもシーズンごとに目標がある。3年、5年などの単位での中長期目標もある(ヴ○○セル○戸のようなロマンだけ壮大で、実態はオーナーの気分で監督をすげ替えているクラブもあるが←)グランパスの場合、公には優勝を掲げていたが、現実的な目標は組織的に戦えるチームにする・若手を育てる・トップ6に入るだと思う。シャンソンの場合は3シーズン前ベスト4に進出した頃の主力は誰も居なくなり、一からのスタート。経験の乏しい選手を育てて、Wリーグで戦えるチームにすることが目標だったのではないだろうか。

グランパスだとルヴァン杯や大学、社会人チームとの練習試合で場数を踏み、主力の疲労が顕著になり始める夏以降戦力になれる選手を育てていきたかったはず。シャンソンは春先身体作りやスキルアップに時間を割き、6月以降紅白戦や練習試合を重ね、オータムカップで最終確認して、リーグ戦開幕を迎える算段だったのではないだろうか。

しかし新監督の下でただでさえ難しい状況において(フィッカデンティ監督は昨シーズン途中の昨年9月に就任)コロナ禍でそれらは全て狂った。練習することすら制限された。グランパスでは6月からチーム全体練習が再開され、ピッチを上げていこうとしたところで、感染者が出たため10日ほど活動停止。7/4の再開初戦は他チーム以上に急仕上げで挑んだ。その初戦で白星を挙げるなど上々のスタートを切り、現在も4位。優勝は厳しい状況だが、2位までは充分に狙える位置につけている。その点に関してはフィッカデンティ監督の手腕、主力選手の遂行力、フィジカルコーチ等選手の維持する体制が整っていることに尽きるが、若手育成は出来ていない。今季のJリーグは約4ヶ月の中断を埋めるべく水曜日に試合を詰め込んでいる。通常であればリーグ戦が水曜日に行われるのは月に1回あるかないかだが、今季は水曜日にリーグ戦が行われない月が無いくらいの超過密日程。練習は主力選手はコンディション調整に追われ、主力と控えが相まみえる日は少ないだろう。監督は主力のコンディション確認や相手チームのスカウティング等を短いスパンでする必要があり、控え選手のケアは充分に出来ていないと思われる。一貫した育成方針があるクラブや昨季の時点で芽が出てきた若手が多数いるのならば今季はチャンスだが、グランパスのようなチームにとってはマイナスでしかなかった。今季は一定の成績を残せているが、怪我人が戻った9月以降は試合登録の18人がほぼ固定。リーグ戦全試合でスタメン出場している選手が5人もいる。今季は気力で乗り切れたとしても来季以降が心配でならない。

シャンソンはただでさえロスターが少ない中、8月末に謎の退団者まで出て、怪我人もいては紅白戦すら満足にこなせなかっただろう。強度の高い練習で腕を磨き、格上・格下色んな相手と練習試合をして、課題を抽出する時期にトライ&エラーで強化を図ることが出来なかった。その中で開幕週連勝したのは相手の不甲斐なさを差し引いても称賛しかできないが、3試合目(日立ハイテク戦)で接戦を落とし、力尽きた感がある。野口選手、水野選手は6試合で230分ほど出場、小池選手も215分出場。この3選手はほぼ出ずっぱりで、実質6.5人くらいでローテーションしているトップカテゴリーでは本来あり得ない(高校とかアンダーカテゴリーでも変えていかなくてはならないが…)チームになってしまっている。力尽きるのも当然だが、李HCとしては控え選手を使うよりも勝利の可能性が高いと判断しているのだろう。プレータイムが少ない選手たちはいかにも身体の線が細い。上手い・速い・可愛いにプラス華があって、なんかスターの雰囲気を感じる知名選手は女子バスケ人気向上のためにも育ててほしいが、本来なら1試合10分以上使うのは時期尚早な気がしていて、李HCの気持ちが分からないでもない。

 

コロナは誰にも想定出来なかったことではあるが、結局は一貫性とか継続的なビジョンがあるかないかでイレギュラーへの対応力も変わってくる。若手が育たない・選手の入れ替わりが激しいのは

  • 育成を怠った前任者(特にグランパスはこの点)
  • 能力ある選手を獲れなかった・引き留められなかった強化責任者(シャンソンはここ?)
  • 会社の魅力を提示できなかった幹部
  • チーム強化のための予算を引き出せなかった幹部

が悪いということなのでしょうか…

なのでそういう状況にあるチームからのオファーを受諾してくれて、日々頭を悩ませているであろうフィッカデンティ監督や李HCはものすごーくリスペクトされるべき存在なのだと思います。自分だったらグランパスならやがてトヨタが強化費出してくれるだろうから良いチーム作れるかもと思って引き受けますが、シャンソンのHCやりたいと思えないですもん。。

 

というわけで彼らは正義のヒーローだと思うので、ファンの人たち(自分もグランパスファンですが 笑)は精一杯サポートしてあげてください!