【名古屋グランパス】アジア王者撃破!

ピクシー“1勝”の思い出 敵地でアジア王者の浦和撃破(中日スポーツ

恩師も見た、ピクシー浦和破り初勝利(日刊スポーツ)

試合公式記録(名古屋公式)

名古屋が今季初勝利を飾った。同時に埼玉スタジアム初勝利であり、何よりピクシーの公式戦初勝利であった。試合もやや安定感に欠けたが、目指すサッカーをアウェーだろうがアジア王者だろうが貫き勝利したことはサポとしても誇らしいし、改めてサッカーとはタレントを集めただけで勝てるものではない奥の深いものだと実感させられた試合だった。

それでは試合を振り返っていきたい。

名古屋はバヤリッツァ、浦和は闘莉王とそれぞれ守備の要が欠場した。特にバヤリッツァは全く情報がなく(試合後に京都戦での負傷の痛みが取れなかったとピクシーが話しているが)、平均年齢22歳を切る急造若手DF陣、しかもそのうち青山はこれまでリーグ戦での出場がなく、竹内も昨季序盤出場機会が多かったが、終盤は出番が減った選手。試合前は不安がよぎった。浦和がその急造DF陣を各々の高い個人技で切り裂いていけば早い段階で試合が決まることもありえた。しかし探り探りでの序盤戦だった。

しかし意外にも14分で早くも試合が動いた。名古屋が左サイドでの分厚い攻撃からヨンセンが得意のパターンで決めた。そのあとは前半終了まで終始名古屋ペースとなった。面白いようにボールがつながる。闇雲に前へ前へ行くのではなく、状況に応じてしっかりつないで機を伺いながら行くときはSBやセンターハーフも含めて一気に攻め立てる。セフとピクシーのスタイルがうまく融合していた。

後半は浦和が珍しく早めの選手交代を仕掛けたことで一転劣勢となった。正直追いつかれるのは時間の問題だと思った。鈴木のポスト直撃のミドルシュートがあったし、DFの連携ミスをつかれたもの、相馬のドリブル突破からの攻撃など浦和優勢だった。しかしその浦和のムードに終止符を打ったのは他ならぬ浦和GK都築。自滅だった。あのプレーはアジア王者の正GKとしては情けなさ過ぎる。もちろん小川の集中力も讃えたい。ピクシーの掲げる「Never give up」が勝った瞬間だった。その後も浦和は途中出場の梅崎の個人技などで攻撃していたが、時すでに遅しで、途中アップしていた田中達也は結局使われなかった。

こうして名古屋は半ば必然とも言える勝利をつかんだが、勝因はまずDF陣の奮闘だろう。しかも若手で無失点に抑えられたのは今後にも繋がる。もちろんDFの中心はバヤリッツァであり、昨年のスピラールのように万が一長期離脱なんてことになってしまったら死活問題だが、1、2試合の欠場ならば十分カバーしていける組織でのDF力がついているとも受け止められるだろう。また開幕戦は右SBを務めた竹内が4バックのセンターでも機能したこと、ユース出身2年目の吉田がしっかり統率したことは有意義なことだし、開幕1週前にレギュラーを外れ自信を失いかけていた青山が及第点の活躍をしたことも見逃せない。途中出場で名古屋デビューを飾った三木も闘争心溢れるプレーを随所に見せ、この試合ラストプレーとなった激しいタックルからのドリブルは圧巻で、名古屋ゴール裏からも大歓声があがっていた。その他昨年序盤戦はレギュラーだった増川も控えており、今後DFのポジション争いは激しさを増すだろう。GKの楢崎もいつも以上に安定したプレーぶりだった。

中盤は吉村が守備重視で働いた。激しいプレス、シンプルな捌きと持ち味を見せた。中村・マギヌン・小川は頻繁にポジションチェンジをし、玉田・ヨンセンの2トップは広範囲に顔を出し、中盤の動きを引き出し、自らもフィニッシュに絡んでいた。特にマギヌンは独特のリズムでドリブル、パス、シュートと幅広く攻撃に貢献した。まだチームには完全にフィットしておらず、今後がさらに楽しみだ。

ただ苦言を呈すとすると小川のプレー精度。昨夏から出場機会を増やし、ピクシー体制では欠かせない存在となりつつある選手で、PSM岐阜戦、開幕の京都戦でも活躍していて、この日も奮闘していたが、細かいミスが多く、特にクロスの精度が悪かった。ピクシーからは技術の高さを評価されており、また得点シーンを見ると分かるようにサッカー頭脳の高い選手である。それだけにもっとやれる選手だし、安定感のあるプレーを今後は求めたい。また青山もクロスの精度が芳しくなかった。リーグ戦初スタメンが大観衆アウェーの舞台で緊張もあっただろうが、竹内、吉田、三木とのポジション争いを勝ち抜くためにはもう緊張だとか不慣れとは言っていられない。こちらも期待している選手だけにどうしても厳しいことを言ってしまうのだが。

ピクシーの采配に関しても少々。センターハーフに開幕戦でフル出場山口ではなく、2/20の練習試合で負傷以来対外試合に出場しておらずぶっつけ本番だった吉村を使ってきた。浦和ボランチが激しくプレスにくること、サイドにスピードのあるアタッカーがいることを考慮してもものだろうが、これが見事当たった。開幕戦後に当ブログで書いたとおり吉村と山口には一長一短があり、今後も併用が続いていくかもしれない。吉村には持ち味のミドルシュートを打っていってもらいたいものだ。

敗れた浦和に関して。いろいろ問題点はあったが、何よりもトップ下の山田と2トップの距離感が悪すぎた。あれでは阿部や鈴木、細貝がいいボール奪取をして、相馬が突破してもチャンスにならないし、高原に関しては相馬の進路にふたをかぶせているときもあった。他にも高原は終始凡プレーを披露し、自分が浦和サポーターなら目を覆いたくなっただろう。ボールを持ってもすぐ奪われ、何でもない当たりに倒れて、ファールだと主張。これまでドイツで何をやってきたのか。また何のために日本に戻ってきたのか。何のために代表を外れて、コンディション調整に励んできたのか。試合後のコメントで「チームとしてバラバラ」と言っているようだが、バラバラになった主な要因は自分だと言うことを自覚していないようだ。こんな選手は今後復調しても日本代表に入れないで欲しい。やがてチームワークを乱すだけだ。交代が遅いオジェック監督が後半開始時点で見切りをつけたということをよっぽど酷かったということを証明している。メディアもいつまでもこんな選手に期待するのはやめていただきたい。

そのオジェック監督が解任された。一部では横浜FM戦終了後から「名古屋戦も負けたら解任」と報じられていたが、現実となった。後任にはJクラブでの経験が豊富で、現状も把握しているエンゲルスコーチが昇格となったが、昨年までの2年間の原動力がポンテ、ワシントンに長谷部であったことが証明されてしまった組織力のないチームだけに立て直しは容易ではないだろう。ただ明るい材料もある。それは新加入の梅崎、細貝といった若手に昨年はケガもあり不完全燃焼だった相馬。梅崎はビハインドの中投入され、攻守とも落ち着きのないプレーが多くはあったが、持ち味を発揮し、連動性のある攻撃ができない浦和の現状を考えると起爆剤となる可能性はある。昨年までは層の厚さに阻まれ、出番が少なかった細貝には成長の跡が感じられる。一見細身でひ弱に見えるが、非常に当たりに強くなった。相馬もケガなくやれればあれくらいのパフォーマンスは当然の選手であるし。こういった選手が活力となれるかどうかが、そしてネームバリューにとらわれない選手起用ができるかが今後の浦和のカギを握るだろう。

最後に浦和、名古屋からも選ばれている日本代表のFW争いに関して述べる。W杯予選タイ戦以降けが人が続出しているが、今回選ばれている選手も「日本代表選手」となんて呼びたくない高原に負傷明けの巻、目に炎症を起こしている田代、好調ではあるもののPSM含めて今季の有料試合でゴール、アシストはなく、全て途中交代の玉田では非常に心許ない。大久保が追加招集されたが、こちらもケガ明けでベストコンディションではなさそうで、厳しい中東アウェー戦という中でどう戦うのかある意味見物ではある。