チームマネージメントが難しい今シーズン

カテゴリーを問わず選手を預かる立場(部長、監督など)であれば皆選手は大事にしたいと思うだろう。怪我してほしくない、長く活躍してほしい、多くの選手に出場機会を与えたいと考えるだろう。一方で誰でも勝ちたい、勝利の味を知って欲しいという感情もあると思う。ファンからは「若手を使え」「○○選手を無理させるな」「育成も大事だ」などの声が挙がってくる。これはチームスポーツにおいて永遠に解決しないと思う(笑)

今シーズンはその舵取りが例年以上に難しいのではないか。Jリーグのファンから「今シーズンは降格ないんだから思い切った采配を」みたいな声がよく聞こえてくる。実際遠藤保仁選手を放出したガンバ大阪などそういうチームもあるが、降格ない、ならば若手起用と簡単にジャッジ出来ることではない。トップカテゴリーで戦うに相応しい心技体を備えていない、監督の求める戦術理解度に達していない選手を無理に起用すればその選手が大怪我をしたり自信を失ったりして成長を阻害することになりかねない。チームとしても勝利を得ることは難しくなる。未成熟な選手の分もカバーする他の選手は余計に疲労が蓄積される。主力が怪我してしまったら大打撃だ。かと言って主力を酷使しすぎるのも怪我に繋がるし、選手生命を短くしてしまうかもしれない。マッシモ・フィッカデンティ監督も李玉慈HCもこうした葛藤と日々戦っていると思う。

 

というわけで名古屋グランパスシャンソン化粧品シャンソンVマジックを例に挙げてお話しを。

どのチームでもシーズンごとに目標がある。3年、5年などの単位での中長期目標もある(ヴ○○セル○戸のようなロマンだけ壮大で、実態はオーナーの気分で監督をすげ替えているクラブもあるが←)グランパスの場合、公には優勝を掲げていたが、現実的な目標は組織的に戦えるチームにする・若手を育てる・トップ6に入るだと思う。シャンソンの場合は3シーズン前ベスト4に進出した頃の主力は誰も居なくなり、一からのスタート。経験の乏しい選手を育てて、Wリーグで戦えるチームにすることが目標だったのではないだろうか。

グランパスだとルヴァン杯や大学、社会人チームとの練習試合で場数を踏み、主力の疲労が顕著になり始める夏以降戦力になれる選手を育てていきたかったはず。シャンソンは春先身体作りやスキルアップに時間を割き、6月以降紅白戦や練習試合を重ね、オータムカップで最終確認して、リーグ戦開幕を迎える算段だったのではないだろうか。

しかし新監督の下でただでさえ難しい状況において(フィッカデンティ監督は昨シーズン途中の昨年9月に就任)コロナ禍でそれらは全て狂った。練習することすら制限された。グランパスでは6月からチーム全体練習が再開され、ピッチを上げていこうとしたところで、感染者が出たため10日ほど活動停止。7/4の再開初戦は他チーム以上に急仕上げで挑んだ。その初戦で白星を挙げるなど上々のスタートを切り、現在も4位。優勝は厳しい状況だが、2位までは充分に狙える位置につけている。その点に関してはフィッカデンティ監督の手腕、主力選手の遂行力、フィジカルコーチ等選手の維持する体制が整っていることに尽きるが、若手育成は出来ていない。今季のJリーグは約4ヶ月の中断を埋めるべく水曜日に試合を詰め込んでいる。通常であればリーグ戦が水曜日に行われるのは月に1回あるかないかだが、今季は水曜日にリーグ戦が行われない月が無いくらいの超過密日程。練習は主力選手はコンディション調整に追われ、主力と控えが相まみえる日は少ないだろう。監督は主力のコンディション確認や相手チームのスカウティング等を短いスパンでする必要があり、控え選手のケアは充分に出来ていないと思われる。一貫した育成方針があるクラブや昨季の時点で芽が出てきた若手が多数いるのならば今季はチャンスだが、グランパスのようなチームにとってはマイナスでしかなかった。今季は一定の成績を残せているが、怪我人が戻った9月以降は試合登録の18人がほぼ固定。リーグ戦全試合でスタメン出場している選手が5人もいる。今季は気力で乗り切れたとしても来季以降が心配でならない。

シャンソンはただでさえロスターが少ない中、8月末に謎の退団者まで出て、怪我人もいては紅白戦すら満足にこなせなかっただろう。強度の高い練習で腕を磨き、格上・格下色んな相手と練習試合をして、課題を抽出する時期にトライ&エラーで強化を図ることが出来なかった。その中で開幕週連勝したのは相手の不甲斐なさを差し引いても称賛しかできないが、3試合目(日立ハイテク戦)で接戦を落とし、力尽きた感がある。野口選手、水野選手は6試合で230分ほど出場、小池選手も215分出場。この3選手はほぼ出ずっぱりで、実質6.5人くらいでローテーションしているトップカテゴリーでは本来あり得ない(高校とかアンダーカテゴリーでも変えていかなくてはならないが…)チームになってしまっている。力尽きるのも当然だが、李HCとしては控え選手を使うよりも勝利の可能性が高いと判断しているのだろう。プレータイムが少ない選手たちはいかにも身体の線が細い。上手い・速い・可愛いにプラス華があって、なんかスターの雰囲気を感じる知名選手は女子バスケ人気向上のためにも育ててほしいが、本来なら1試合10分以上使うのは時期尚早な気がしていて、李HCの気持ちが分からないでもない。

 

コロナは誰にも想定出来なかったことではあるが、結局は一貫性とか継続的なビジョンがあるかないかでイレギュラーへの対応力も変わってくる。若手が育たない・選手の入れ替わりが激しいのは

  • 育成を怠った前任者(特にグランパスはこの点)
  • 能力ある選手を獲れなかった・引き留められなかった強化責任者(シャンソンはここ?)
  • 会社の魅力を提示できなかった幹部
  • チーム強化のための予算を引き出せなかった幹部

が悪いということなのでしょうか…

なのでそういう状況にあるチームからのオファーを受諾してくれて、日々頭を悩ませているであろうフィッカデンティ監督や李HCはものすごーくリスペクトされるべき存在なのだと思います。自分だったらグランパスならやがてトヨタが強化費出してくれるだろうから良いチーム作れるかもと思って引き受けますが、シャンソンのHCやりたいと思えないですもん。。

 

というわけで彼らは正義のヒーローだと思うので、ファンの人たち(自分もグランパスファンですが 笑)は精一杯サポートしてあげてください!