Wリーグ西地区第4週レビュー+東地区も少々

西地区の4チームは前週試合がなかった。その間に開幕から出場できていなかった選手が続々と復帰し、また新加入選手が徐々にフィットしてきた。一方で基本的に同地区の試合は同会場で行なわれるため、各チームスカウティングがしやすいように思う。実際トヨタ自動車×山梨の後半をトヨタ紡織の中川HC、知花AC、トヨタ紡織×三菱電機の後半をデンソーのヴクサノヴィッチAHC、伊藤ACが視察していた。確認はしていないですが、審判も東地区担当・西地区担当で分かれているのではないかと思う。となると審判によるレフェリングの特徴まで分析が可能である。週末同一カード連戦が基本の日本バスケにおいてはスカウティングは大きくカギを握る要素だが、今季のWリーグのレギュレーションだとさらに重要度が増す。シーズン後半戦では3,4回目の対戦がある。策が尽きる、引き出しが空っぽという事態が起きてもおかしくない(皇后杯で対戦したチームとセミファイナルやファイナルで対戦したら8戦することに?見る方も飽きてしまうかもですね

ということが起きないようにデータをどう活かすか、立てたプランをどう選手に落とし込むか、プランが崩れた時にどういうラインナップを組むかなどコーチ陣の手腕もものすごく勝負を左右する。ということが頭に浮かんだ週だった。

さて対戦カードごとに振り返っていきますか。

 

トヨタ自動車アンテロープス×山梨クィーンビーズ

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スカウティングの重要性を特に痛感したgame1の前半。山梨のアグレッシブなディフェンスの前にトヨタ自動車は大苦戦を強いられた。足を動かし、ディナイを怠らないディフェンスに対してオフボールの動きが停滞。パスが回らず、たまにオープンが出来てもこのチームの生命線とも言える三好選手の3ptシュートがこの日は不発(0/6でミドルシュートによる2得点に終わった)。敵陣を切り裂くドライブで流れを変えることを出来ず、4分ほどでタイムアウトを請求。その後も1Qで全12選手を起用する珍しい策を講じても打開できず、3点ビハインドで1Qを終えた。平下選手、永田選手のルーキーコンビで徐々にらしさを取り戻し、6点リードで折り返した。3Qで試合を決めたのは栗原選手。このクォーターだけで3pt2本、ミドルシュート2本で10得点。

(↓の写真は2本目のコーナーから決めた3ptです。審判も3ptのジェスチャーしてますが、ダメダメな写真ですねw自分としては思い出に残るので満足です笑笑)

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さらには安間選手かと思うくらいの華麗なアシストも。ハイライト動画見ていただくと分かりますが、このときコーナーで山本選手が呼んでるんですよね。栗原選手はインサイドの河村選手を選んだんですが、こういう声が聞こえるのって面白いなぁとか試合中でもちゃんとさん付けで呼ぶんだととか思いました(サッカーの中田英寿氏は試合中にさんとかくんとかつけてられないから皆呼び捨てと言ってました。女性社会だと難しいのかな。梅木選手もクゥさん!とコールしてました)

 

と話は逸れまくりましたが、栗原選手の活躍は10得点よりディフェンス面だったと思います。気の利いたポジショニングでチームを引き締めて隙を与えず、ブロックショットも2つ記録。この日のMVPは間違いなく栗原選手だった。「私がこんな頑張らなくてもいいようにあなたたちしっかりしなさいよ」とか「このチームは私が居ないとダメよね」とか絶対思ってないでしょうが、そう思ってても不思議ではないくらいの救世主な活躍ぶりだった。

4Qはやや集中力に欠ける場面もあったものの、15点差つけての快勝だった。こうしてトヨタ自動車は手を変え品を変え、山梨のスカウティングを無力化してしまった。選手層が厚いといえばそれまでだが、戦況を見極めて打開できる選手を投入したモンデーロHCの采配、応える若手選手、アジャストする中堅・ベテラン選手。チームの総合力の高さを証明した試合でもあった。

game2は前日結果を出した若手選手をスタメン起用しつつ、先を見据えて色々と試してるようだった。

山本選手が牽引して、平下選手、永田選手は引き続き期待に応えてともに30分近いプレータイムで2ケタ得点。前日4分ほどの出場に終わったステファニー選手はこの日のスコアリーダー。数年後のトヨタ自動車を思い描くことが出来た。山本選手はオフの間に身体が一回り大きくなったが、スピードは落ちていない。むしろ上がっている。アーリーオフェンスで起点となっていた。平下選手、一見速さも強さもそこまでないように見えるが、ボールを持つと速い。高く強いドリブルはボールの置き所やコース取りも巧みで一気に相手ゴールまで迫れる。体幹も強くミドルシュートの精度が非常に高い。永田選手は大学リーグとのギャップに苦しんでいた感があったが、活きる道を見つけた感がある。ダイナミックさはそのままに無理な突破は避け、ファールを誘うドライブやミドルシュート、速攻時のポジション取りなどに進化が感じられた。クロックが止まっているときなど合間にはモンデーロHCが若手選手にマンツーマン指導する場面も何度か見られ、後半にはゾーンディフェンスを敷く時間を長く取るなど打倒ENEOSに向けて手綱を緩めることはなかった。

クォーター内での交代は少なく、ツープラトンに近い形となり、主にスタメンが1,3Q、安間・三好・栗原・長岡・河村の5選手が2,4Qに出場したが、この日のセカンドユニットも皆目立った活躍はなかったものの特長は発揮していたと思う。 一方で前日結果を出せなかった脇選手、西澤選手は大差がついても出番はなし。これがプロの厳しさだろうか。

一週空いてからのデンソー戦。ヴクサノヴィッチAHCも今季のチームを掌握し始めている。次戦ではマルコビッチHCが指揮を執るかもしれない。2連勝したチームが皇后杯でのENEOSへの挑戦権を獲得、星を分け合ったら今年も…と言っても差し支えないだろう。

 

三菱電機コアラーズ×トヨタ紡織サンシャインラビッツ

game1のみ観戦。三菱電機はいつもどおり西岡選手、小菅選手がインサイドでファイトする戦い方をして、トヨタ紡織・中川HCはいつもどおりの采配をした。結果は2Qで川井選手、渡邉選手を少し休ませられた(それでもプレータイムは充分長いが…)三菱電機が東藤選手、加藤臨選手をフル出場させたトヨタ紡織に勝った。正直この差だと思う。1Qで平末選手、白選手の出来が悪いと判断したのだと思うが、点差が迫ってきたところでずっとベンチを温めていた平末選手を戻し、この試合全く出ていなかった坂本選手を投入したところで彼女たちは心も身体も準備できてないですよ…中川HCの使い倒すスタイルを全否定するわけではないけど、それなら怪我人出たときとかアクシデントは別にして最後まで貫かないと選手に迷いが生じるだけ。采配で落とした試合だと思います。

 

アイシンAWウィングス×デンソーアイリス

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game1のみ観戦。アイシンAWにとってはサイズ不足、フィジカル差でリバウンドやディフェンスで苦しくなるのは予想できたが、オフェンス面への対策も完璧に練られ、完敗。選手のコンディションは上がってきたが、パスが回らず頼みの3ptシュートは苦し紛れのものばかり。上長選手を投入して打開を図るも他の選手の動き出しが少なすぎた。デンソーもぞーんぎディフェンスに戸惑ったの外の精度が悪く、2Q序盤までは接戦だったが、デンソーが取ったタイムアウト後に渡部選手を投入し、中・外のバランスがよくなり、本川選手が躍動。万事休すとなった。

コーチングスタッフが代わって、コーチ同士、コーチと選手、選手同士コミュニケーションが格段に増えたと思う。ベンチメンバーの表情もすごく明るくなった。4試合スタメン出場はおろかプレータイムにも恵まれなかった江良選手がデンソーgame1でスタメン起用されたのは競争原理が働いている証。戦い方のコンセプトも良いと思う。開幕まであと1ヶ月程のところで2週間活動停止を余儀なくされても開幕戦であの試合が出来たのは6月から取り組んできたことが正しいことを証明している。しかし勝てそうだった対山梨game2や対トヨタ紡織game2を落とすなど、結局は5連敗。内容や過程も大事、育成も大事だが、このままでは負け癖がついてしまう。勝てなくても仕方ないという気持ちになってしまう。ニ頭体制に亀裂が生じてしまうかもしれない。地元安城での開催で何とか連敗を止めたい。

 

ENEOSサンフラワーズ

熱血バスケで見ただけですが(笑)、真打ち登場って感じで岡本選手・宮澤選手が出場して、バサッと斬ったようですね。

(まともにENEOS追ってなくても岡本選手がここに照準合わせてて、宮澤選手は大事を取ったことくらい予想できたので、彼女たちのファンのためにも一言アナウンスしてあげればいいのになぁと…自分みたいな性格悪いやつは読めるけど、純真な高校生や大学生のファンの子とか心配してたと思います)

それにしてもENEOSって強いチームと戦うと前半は苦戦することって結構あるのに3Qで試合決めてしまうパターンがお決まりですよね。選手のアジャスト能力がハンパないなと思います(あくまで選手です。このチームは誰がHCでも変わらないと思ってるので…さらに言ってしまえば渡嘉敷選手がHC兼任でも変わらない成績というかもっと強くなるとすら思います

 

東京羽田ヴィッキーズ

あまり多くは語りたくないですが(←)Bリーグとかプロだったら今月末あたりでそうなってるんだろなぁと思います。Wリーグのクラブチームだとシーズン途中でそういうことをする資金力もコネもないだろうから、選手で何とかするしか…

富士通戦は津村選手、モニィーク選手の活躍が目立ったし、軸丸選手はプロの壁を実感しただろう。他にも選手は揃ってるんだから、もうここまできたら全選手もっともっと我を出していけばいいのでは思います。

 

富士通レッドウェーブ

今季は田中選手、藤本選手も3ptを積極的に打つなど速さありきではなくどこからでも点を取れるスタイルにマイナーチェンジを図っているところだと思う。その中で篠崎選手の個性が活きていなかったように感じるが、8試合目の4Qにして全国1000万人のWリーグファンが待っていたであろう忍者ぶりが披露された。町田選手も13アシストの大活躍。ホットラインの健在ぶりをアピールした

サイズ不足は否めず、後半戦もENEOSから白星を挙げるのは正直厳しいかもしれないが、皇后杯トヨタ自動車デンソーと当たった時にどういう試合になるかは非常に楽しみなところ(地区制は仕方ないが、交流戦がないのは非常に残念…)。岡田選手がもっとフィットして、町田選手の負担が減ったり、町田選手と岡田選手のツーガードが出来たりするとより脅威なチームになるだろう。

と先のことを考える前に今週は日立ハイテクとの対戦。元富士通とか前所属先が同じなど縁のある選手も多いので楽しみ。西地区はバイウィークを経て大一番が待っている。アイシンAWもここで勝てれば自信を取り戻して(昨季の皇后杯のような)強豪からの勝利もあるかもしれない。

 

とにもかくも拮抗した試合が見たい。20分、25分で決まってしまうような試合ばかりでは興味・関心を引くことはできない。渋谷対千葉みたいな胃がキリキリする試合を!!