Wリーグ西地区後半戦 アイシンAW×トヨタ自動車

このカードについて語る前に先週末のWリーグ全体の印象から。3週間空いてからの再開だったが、上位3チームと下位3チームの差が広がったように思う。デンソー×トヨタ紡織はgame1を3Qまで観戦したが、トヨタ紡織は今季加入選手がフィットしきれずにシーズンを終えてしまいそうだ。怪我なのか欠場している選手も何人かおり、補強の成果を示せていない。昨季2戦2勝だったデンソー皇后杯も含めて5戦5敗、点差も広がっている。スコアだけでの話にはなってしまうが、山梨や東地区も同様の傾向がある。東西とも星を分け合ったカードはなく、1桁点差もシャンソン×富士通のgame1のみ。

Bリーグ1部でもチーム間格差、地区間格差は指摘されているが、それでも先週末の試合で見ると9カード中3カードが1勝1敗。東地区上位×西地区下位の対戦が3カードあったが、三遠が渋谷に連勝、京都は宇都宮に連敗したものの2試合とも5点差以内である。また新リーグが発足するラグビーはなるべく拮抗した試合を増やすために1部リーグのチーム数を12とした(現状のトップリーグは16チーム)

スポーツ興行においてメインディッシュは試合、前菜やトッピング、デザートが少ない(セントラル開催の今季は皆無に等しい)Wリーグなら尚更である。得点がたくさん入るスポーツは両チームが得点を獲り合うことで盛り上がる。日本代表強化においてもマイナスであり、Wリーグも12チーム(来季からはアランマーレ秋田が新規参入し13チーム)が同じカテゴリーで戦うのはもはや無理があるのではないか。

 

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今季4,5回目となったこのカード。これまでの3回はアイシンAWが前半何とか喰らいついていたが、今回は2試合ともトヨタ自動車が終始圧倒。game2ではアイシンAW米谷選手が3ptシュートを8本沈める大活躍だったが、それでも得点は10しか増えず、失点は2しか減らなかった。その要因を探っていきたい。

 

3〜5番ポジションはほとんどの時間帯でトヨタ自動車が優位な状況にあった。サイズがあるだけでなく、フィジカル、クイックネスでも優っていた。デカくて強くて動き出し速い選手たちがインサイドを攻め続けたのだ。アイシンAWのコンタクトを受けてもびくともせずレイアップを決め切り、3ptシュートの精度は2試合通して悪くここは課題だが、セカンドチャンスもことごとくものにした。エブリン選手、長岡選手、河村選手がスタメンで出て、交代でステファニー選手、ソハナ選手、永田選手らが出てくるので、強度が全く落ちない。ものすごいスピードでレベルアップしているチームだと思う。

世界基準を知るコーチ、能力の高い選手、質量とも充実したスタッフが揃い、強度の高い練習が出来ているのだろう。同じように強度を上げても怪我のリスクが高まる。練習を長くやったからといって必ずしも成長するわけではない。長時間練習の弊害を指摘する声は多々出てきている。実際日本女子バスケでは今も長時間練習をしているチームはあるようで、怪我人が多いチームがいくつか思い当たる。チーム力の差を埋めるのは容易なことではない。

 

アイシンAWトヨタ自動車の3ptシュートを相当ケアしていたが、インサイドで着実に得点を重ねるとともにミドルレンジも制圧していた。これもフィジカルと関係してくるのだろうが、ノーマークを作り出し、確実に決めてくるのがトヨタ自動車であり、アイシンAWはエアボールになってしまう場面が何度も見られた。

 

  • オフボールでの動きの質の差

チームごとに戦術は異なり、一概には言えないが、トヨタ自動車の選手たちは常に動きが見られる。一度下がってボールを受けようとする動き、ハイピックなどでマークのズレを生み、スペースを作り出し、得点機会をうかがう。ディフェンスにおいてもボールがないところでも激しいディフェンスを仕掛ける。アイシンAWはまずドライブでズレを作るスタイルなのかもしれないが、トヨタ自動車のディフェンスが激しく、割って入っていけない。game2では酒井選手の小気味いいパスとハイピックから米谷選手のシュートシーンを作り出せていた。常に流動性を作り出していきたい。

 

  • この試合にかけるモチベーションの差

皇后杯準々決勝で前半苦戦したトヨタ自動車から相手を叩きのめす強い意思が感じられた。2試合とも同じスタメンで臨み、序盤から圧倒した。10月のリーグ戦ではgame1とgame2でスタメンを大幅に入れ替えたこともあったが、アイシンAW相手では最初から試す余裕はないと判断したのだろうか。

アイシンAWもコート上の選手は試合終了まで戦っていたが、ベンチワークは来季のチーム編成に向けてのセレクションでもしているかのように映った。降格がないリーグなので先を見据えることも大切ではあるが、プレーオフ進出が消滅したわけではない。トヨタ自動車に勝つための戦術、意図のある選手交代が見えなかった。

 

トヨタ自動車は3ptシュートの精度向上は継続の課題ではあるが、ソハナ選手という強力なセンターが既にフィットしており、40分通して高さを維持できる。思い切って打っていけば良い。皇后杯でも28分くらいまでは自分たちのペースで試合を運べていた。ベンチも含めてビビらずに戦えればたとえベストメンバーのENEOS相手でも勝てるレベルにあると思う。

アイシンAWは繰り返しになってしまうが、とにかく今季中に1つ勝つこと。これに尽きる。