バスケ男女代表新体制への期待と不安

まず協会に対して思うところを。

男子は11月末からW杯予選、女子は来週W杯予選を兼ねたアジア杯がある。来年2月にはW杯予選も行なわれる。次の五輪は3年後。早めに新体制を固める必要があり、前回も述べたようにベターな人事ではあると思う。男子に関してはラマス氏が指揮を執り始めるまでに空白期間があったが、今回はそれを回避でき、日本で指導歴が長いホーバス氏なので技術委員会との連携も良くなりそうだ。

ただ両代表チームのこれまでの総括や検証がなされずに新体制がスタートするのはいかがなものか(していたとしても発表しなければあまり意味がない)

ラマス体制がどうステップアップしていきたいのか何となく分かるがあくまで何となく(笑)ホーバス氏が男子代表に移って恩塚氏の内部昇格という形になったが、ホーバス氏が掲げた野望を受け継げるHCとして熟考を重ねてのことなのか。そのあたりが見えてこない。次の大会が迫っていてもせめて↓くらいのレポートは出せないものか……

 

選任理由や所信表明はあったが前を向くばかりでPDCAが機能していないし、その表明もメディア向けで一般人は協会のリリースやメディア記事経由でしか知ることが出来なかった。技術委員長や両HCの生の声を聞くことが出来なかった。特にホーバスHCに関しては五輪銀メダルの女子代表から男子代表に移るという話題性もあるのに非常に勿体ない。クローズドな体質は相変わらずだ(その分サッカーやバレーボールのように噂話が飛び交うことはなかったが)

 

兎にも角にも男子は技術委員会がリストアップした選手ではなく、呼びたい選手を呼べるよう徹底的にバックアップしてもらいたい。女子はHCが代わってもアメリカに勝って世界一の野心を継続して抱き続けてほしいし、そのために国内リーグの改革、代表の強化試合増などに取り組んでもらいたい。

 

では両代表チームへの期待と不安をいくつか。

ホーバスJAPAN

  • 目標を立てる→基礎を叩き込む→型を作る

(技術委員会とは違い)PDCAのサイクルが明確なコーチ。女子代表では就任当初から一貫して東京五輪での金メダルを目標に掲げていた。選手ですら懐疑的だったそうだが、ブレなかった。目標や確固たる信念があり、その達成のために突き進む。戦術練習ではセンチ単位のズレでも一度止めてやり直し。オフェンスのフォーメーションは100種類とも200種類とも言われている。ラマス氏の前に暫定HCを務めたパビチェビッチ氏と似たタイプなのかもしれないが、日本男子はバスケ後進国。今一度基礎を叩き込み、スタンダードを上げてほしい。

男子代表での目標はまだ明らかにしていないが、世界大会での1勝と現実的なことではなく、W杯ベスト8以上で五輪出場など具体的で大きな目標を設定するものだと期待している。

 

  • サイズアップ

女子代表の東京五輪はスモールボールで結果を出したが、一昨年のアジアカップでは赤穂ひまわり選手をSGで起用し、加藤優希選手(トヨタ紡織所属、加藤誉樹審判の妹)もこのポジションで試すなど男子代表同様サイズアップを模索していた。女子よりその選択肢が豊富な男子ならホーバスHCの理想が具現化出来るかもしれない。ラマス氏より試合視察する機会は増えるだろう。女子代表では年齢・経験問わずに多くの選手を試していたので、大学生もアンダーカテゴリー代表の経験すらない中堅・ベテラン選手もB2の選手も夢を持って欲しい。特に#長身ながらアウトサイドシュートが得意なシューター、ではなく#長身で屈強でディフェンスが得意なシューターはチャンスだと思う。

 

  • 選手とのコミュニケーション

日常を世界基準にするためには国際大会での指揮経験が豊富な外国籍コーチが望ましいが、通訳を介するので、どうしても伝わりにくい面があるが、ホーバスHCが日本語を話せる。女子と比べて代表活動に期間を割けないだけにこのメリットは女子以上に大きいのではないか。ただ男子チームの指導は初めてで、男子選手へのアプローチの仕方は手探りなところがあるかもしれない。

 

  • 代表活動に期間を割けない

女子は4月中旬からずっと合宿をしていた。(小休止はあり、その間にメンバーを絞り込んでいた)一方男子は6月上旬からで、八村選手、馬場選手が合流したのは五輪初戦の2週間前。これが基本スケジュールである。さらに女子は良くも悪くも所属チームでも代表合宿でも2部練習が当たり前で。これまた良くも悪くも学生時代から(語弊はあるが)軍隊のようなトレーニングスタイルで真面目・勤勉さがある選手が多く、教え込まれた戦術を遂行できる。規律が備わっている。

選手がホーバスHCのトレーニングスタイルに耐えられるか、ホーバスHCが男子仕様にアレンジできるか。

 

  • 采配は上手くない

合宿では色んな選手を試し、大会ごとにニューフェイスも出てくるが、交代策は比較的画一化されている。自認している通りタイムシェアスタイルではなく、調子の良い選手を引っ張る傾向にある。(五輪メンバーに選ばれながら1秒もコートに立たなかった渡辺飛勇選手のような可哀想な扱いはしないとは思う)時に先発投手をなかなか交代出来ない投手出身の監督のような采配も見られる。お気に入りの選手を信頼し過ぎる感もある。

 

同じ日本バスケでも男女では色んなことが大きく異なる。ホーバスHCもスタイルはだいたい同じと語りつつも選手とリレーションシップを構築してチームにしていくと明言しているので、まずはホーバスJAPAN男子verの片鱗が見えるであろう11月のW杯予選を楽しみにしている。

 

 

恩塚JAPAN

  • 女子代表のことを掌握している

女子代表に15年携わっている。東京医療保健大学を名門に育て上げており、指揮官としての実績もある。このタイミングでの就任がベストかとなると疑問符はあるが、恩塚HCの手腕には何ら疑問はない。

 

  • 個々の判断力、個人戦術を高める

規律、型を重視したホーバス体制からさらにレベルアップするためにそれらを活かしつつ、「瞬時に5人が自信を持って判断し、シンクロできることを目指す」としている。

東京医療保健大学監督としての指導方針も同様で、試合を見ていても賢い選手ばかりで、Wリーグに参戦したらプレーオフに進出できると思うくらいレベルが高い。恩塚HCが率いたWリーグチームとの強化試合でも五輪のチームからのマイナーチェンジは見て取れた。

 

  • 若手指導者に夢を与えられる

前回も触れた通り、叩き上げの指導者である。本人も夢を残すと宣言しているが、結果を出せれば、選手だけでなく指導者も、さらにいえば他競技の関係者にもトップレベルでの選手経験がない日本人でも世界で活躍できる場があると励みになるのではないか。

 

  • 色々な選手を試しにくいスタイル

ホーバススタイル以上に阿吽の呼吸が求められそうだ。膨大な数のフォーメーションを覚えることも難しいが、瞬時に判断してシンクロするスタイルを1回の合宿参加で消化しきるのはさらに難しい気がする。東京医療保健大学だと多すぎると思うくらい頻繁に交代する。短時間でどんどん入れ替えていくスタイルで、これを代表にも導入するとさらに難しさが出てくる。ただ消化出来ないとニューフェイスが定着していくのは厳しく、今までよりさらにバスケIQが高い選手が必要か。

 

  • 協会内での政治力

トップカテゴリーでの選手経験はない。指導歴も日本代表と大学で、WリーグBリーグ、旧NBL等での経験はない。バスケ界で影響力が強い人との繋がりはあるか、Wリーグチームの幹部との繋がりはあるか。低迷した時に後ろ盾となってくれる人がいるか。

 

インカレまでは兼任なのだろうが、W杯予選に向けて代表強化が滞らないか不安なところ。

また大学の選手たちは在学中に恩塚氏の指導が受けられなくなる可能性があることを承知の上で入学しているのが疑問を抱いた。学校選びってどういうコーチから指導を受けられるか、就職に有利かという点が重要だと思うが、監督交代は彼女らの人生を左右しかねない。優秀な人材が上のステージにステップアップするのは当然のことだが、大学生がないがしろにされていないか心配である。

 

この記事を見ると五輪までの期間が通常と異なり3年しかないことも今回の人事に影響していることが読み取れる。

また日本バスケは指導者の人材不足感が半端なく、海外とのコネもないので、やっぱり上手く事を収めたという前回の冒頭で書いたことに行き着きますね(笑)

代表チームに完璧なんてないけど、現時点でも期待感の方が大きいです(男子は6:4、女子は8:2かな?)その感触が3年の間でどんどん高まっていくことを願うのみですが、両代表ともHCを支える常勤の参謀役をつけてほしい。

 

そして私はルーカスJAPANを諦めません!男子ルーカスJAPAN、女子大神JAPANの希望も捨てません!!