第88回バスケ皇后杯準決勝レビュー

順当すぎる結果。真っ向勝負では敵わない相手に対して特に策はなく、ファール数の管理も出来ないようでは勝ち目は全くない。ジャッジへの疑問も聞こえてくるが、試合結果に影響するほどのレベルではなかったと思う。

ENEOSは貫禄を見せつけたが、以前ほどの圧倒的な強さはない。渡嘉敷選手、梅沢選手が復帰して高さを全面に押し出したスタイルに回帰しているが、コンディションが良くなくスキルも未熟な梅沢選手より中田選手のスピード、奥山選手や藤本選手のシュート力をもっと活かせられれば圧倒的に強いのにと思ってしまう。

女子バスケ界にも野心溢れる若くて優秀な指導者が集まるよう構造改革をしていかなくてはならない。今のままではWリーグや大学、高校のレベルアップは望めない。

 

終盤点差は開いてしまったが、試合開始から見応えたっぷりの攻防が各ポジションで展開された好ゲームだった。ともにディフェンス力が高い赤穂ひまわり選手と内尾選手、爆発的なスピードを誇る本川選手と篠崎選手、髙田選手と宮澤選手、町田選手のゲームメイクを封じにかかる稲井選手。バチバチのマッチアップはTVで見ていても気持ちが昂ぶった。個人的にゾーンディフェンスを長い時間使うのは弱者の悪あがきだと捉えているが、この試合ではバスケの本質が出ていたと思う。

その中で篠崎選手のドライブを封じた本川選手、21分の出場ながら3ptシュート4本を含む18ptの大活躍だった。

町田選手から自由を奪った稲井選手の嫌らしいプレーも評価すべきポイント。1Qでリバウンドを確保しオフェンスに繋げようとする中で背後からスティールしたシーン、町田選手のバックコートバイオレーションを誘発したシーンは昨シーズンのリーグSFでの安間選手を彷彿とさせた。日本の女子バスケ選手は良くも悪くも優等生タイプが多く、ああいうプレーできる選手が少ないが、相手の機先を封じる意味で非常に効果的だった。

この試合町田選手は6pt・5ast、篠崎選手は3pt・3astに留まったが、その中でも4Q半ばまでは接戦に持ち込めたのは岡田選手の活躍が大きい。町田選手とは違うスピード感、力強さで12pt。課題だった3ptシュートも3/7の成功率だった。

富士通の流れがくるかと思ったところだったが、デンソーは単騎アタック、ひまわり選手のオフェンスリバウンドからの2次攻撃などトヨタ自動車を思わせる強引さで(笑)リードを維持した。そして稲井選手・渡部選手の2ガードでオフェンスを整えて、7点リードでの折り返し。デンソーにとってこの点差は同等以下の相手なら15点差の価値がある、は言い過ぎですかね。でも実際17点差勝利ですからね(究極の結果論←)

 

3Qも一進一退の展開が続いていたが、オコエ選手のオフェンスファールとテクニカルファールの連続が痛恨だった。そして11点差に広げる本川選手の4本目の3ptシュートは決定打、とはさすがにならず(笑)岡田選手、内野選手の3ptシュートで食らいつき6点差まで詰めた。内野選手は準々決勝に続きチームに勇気を与えた。デンソー本川選手以外のスターター選手のプレータイムが長くなり、疲労も出てきて、ディフェンスに綻びが出てきた。

富士通が勢いをつけて入った4Q、岡田選手が巧みかつパワフルなドライブでバスケットカウントを獲得。FTも決めて5点差。このあとの両チームの3回のオフェンスで勝負が決まった。

残り8分ある中で富士通は何故か焦りが出て、3ptシュートありきのオフェンスになってしまった。ショットクロックも充分ある中で早打ちし、3回全て失敗。対するデンソーはひまわり選手3ptシュート、髙田選手左ドライブからのレイアップシュート、稲井選手3ptシュートで一気に13点差まで広がった。

髙田選手が豪快なドライブから決めた時に完全にデンソーが飲み込んでおり、富士通としてはタイムアウトのタイミングが遅れた。飲み込まれてしまってはタイムアウトも効果なし、デンソーはオールコートプレスで時間も相手のメンタルも削り、近藤選手のショートコーナーからの得点でダメ押し。

残り4分ほどある中で髙田選手以外ベンチに下げたのは富士通ファンの反感を買ったが(笑)、決勝を見据えると妥当な判断。最後まで休ませることは出来なかったが、それでも1分休ませられたのは効果はあるはずだ。

 

髙田選手依存から完全に脱却。このチーム力の高さを見せられるとトヨタ自動車が勝てるのか不安になってしまうが、対戦するのは3月なので大丈夫です(強がり)

 

さて決勝。マルコビッチHCのファッションに注目しましょう!!

ここも重要ですが…(笑)

 

真っ向勝負したら確実にENEOSが勝つ。準決勝ではデンソーもスターターのプレータイムが長くなった。ダメ押し点含め4Qで渋く点を取り続けた近藤選手の存在は大きく、MVP級の活躍だった本川選手は21分に抑えることができた。決勝では岡本選手のマークにつくことが予想されるだけに疲労を残さずに臨めるだろうが、髙田選手38分、ひまわり選手37分、さくら選手、稲井選手も33分。準々決勝で活躍した髙橋選手、篠原選手、皇后杯優勝の経験がある森選手を活かして本来のタイムシェアを取り戻したい。

そんなことはマルコビッチHCも百も承知で(笑)、策として中を封じるか外を封じるかなのだろうが、デンソーインサイド陣が豊富。ファール覚悟で止めるなどして渡嘉敷選手が最後まで持たないような展開にしたい。そして中を封じるにしても外を封じるにしてもどちらが走れるか。ENEOSに走られると林選手の3ptシュートの雨あられで早々に勝負がついてしまう展開も考えられる。カギはさくら選手、森選手、園田選手のボックスアウトではないだろうか。