ピクシー、華麗な初陣 J開幕!京都にドローも(中日スポーツ)
試合記録(名古屋公式HP)
光は射しこんでいた。強烈な光だった。去年と比べると格段に観ていて面白いサッカーだった。日本代表の目指すサッカーもこういうものではないか。守備的なサッカー、怪物外国人アタッカー頼みのサッカーが主流のJリーグにおいてセンセーショナルな存在となれるかもしれない。また2週前の岐阜戦からメンバーやピッチコンディション、天候に違いがあるとはいえ立て直してきたのは圧巻だった。
ただ冷静に考えると勝てる試合だった。サポとしては逆転して妖精丸出陣を飾ってくれればこの上ない喜びを感じられただろう。しかし決定力不足などちょっとやそこらで解消されるものじゃない。ピクシーが指導を始めて1ヶ月強。簡単に解消されたら日本代表に申し訳ない。だから満足はできないけど、納得はできた。
一方「拾った勝ち点1」と捉えることもできる。それは京都・加藤監督の奇采配。渡邊に不慣れな左サイドを任せ、中央は増嶋、手島のCBにシジクレイを中盤の底に置く急造だったという布陣。そして何よりビックリしたのは後半開始から西野を下げて角田を投入してきたこと。選手が守ることを意識してしまう選手交代で、しかも試合から消えていた柳沢や佐藤ではなかったのも驚きだった。そしてすぐ名古屋が追いついたが、その後田原を投入し、パウリーニョ負傷を受けて、アタリバを投入。なのでまたまた見方を変えるとあれだけ布陣を変えてよく引き分けたと思う。
名古屋にも采配ミスはあったと思う。失点を喫した後中盤両サイドの小川とマギヌンを入れ替えたのは賞賛できる。そのあと攻撃が活性化された。ただ交代は正直いただけなかった。特に藤田。明らかにコンディションが戻っておらず、らしからぬイージーミスを連発していたし、そもそも藤田に何を求めてピッチへ送り込んだのかがつかめなかった。片山もあまりボールに絡めなかった。杉本は持ち味は出していたが、いかんせん時間が短すぎた。
いくら有能な指導者でも采配ばかりは経験を積まないことにはうまくなれない。今後ストイコビッチ監督にはこの点も磨いてもらいたい。そうしたら日本代表監督にもお声がかかってしまいそうで、こちらとしてはかえって困るが(笑)
試合は立ち上がり10分くらいは名古屋のDFラインがバタバタし、連携ミスが多かった。先制点のきっかけとなったパウリーニョの突破も起点は竹内とバヤリッツァのお見合いからだった。
その後は前述のポジションチェンジが功を奏したのもあり、名古屋が一方的に攻め立てた。両サイドバックにセンターハーフの山口や中村も積極的に攻撃に加わり、アタッキングサードまで侵入するサッカーは観ていて気持がよく、少しだけアーセナルを感じることができた。
特に右SBに抜擢された竹内には良い意味で驚いた。指宿キャンプで大森が早々に離脱し、このポジションにはずっと青山が起用されていたが、3/1の非公開での練習試合での動きが良くなかったようで、その後の練習では終始竹内が起用されていたようだ。失点のきっかけは作ってしまったが、その後は守備での大きなミスはなく、アップダウンを繰り返し、また自ら仕掛けていた。たまに雑なクロスがあった同点ゴールのアシストとなったクロスなどターゲットにしっかり収まっていた。この試合のMOMは個人的には竹内だと思っているくらいで、青山が外されたのもうなずける。ストイコビッチ監督としても1週間を切った時点で自らがずっと使ってきた選手を外すのは英断だったと思う。
この竹内という選手は昨年のセカンドチームの練習試合でも右SBで起用されたときは好プレーを見せていた。まずスピードがある。また守備も攻撃的も積極的にアタックしていける選手であり、SBの方が向いていると思う。まだ1試合出ただけなので今後も積極性を忘れず、このポジションをものにしてほしいものだ。
もちろん課題はいろいろとある。決定力不足は言うまでもないが、それ以外でまず感じたのはタメが作れる選手がいないことである。昨年は本田、金というフィジカルが強く、ボールが収まり、展開力もある中盤の選手がいた。今年その代わりを担うのがマギヌンである。もちろん能力の高い選手だ。巧みなドリブル、正確なショートパス、豊富な運動量があり、ピクシーの目指すサッカーに欠かせない存在ではある。しかし展開力はない。またまだお互い理解し合えていない感もある。相手のレベルが劣るときはあのサッカーでも十分通用するが、格上と戦うときには心配だ。その中で展開力が求められるセンタープレイヤーの山口、CBの吉田にも問題があると感じた。
山口はチーム随一の運動量があり、攻撃でも守備でも気の利いた動きができる。実際同点ゴールは山口が右のフリースペースに流れて、ボールを受け、DFのマークをずらしたことから生まれている。その他昨年序盤戦でトップ下を経験したことで攻撃面での成長を感じるし、守備でも当たりに強くなったように思う。ただ岐阜戦時にも指摘したように中盤でボールロストすることが多すぎる。京都は人数をかけた攻撃が全くと言っていいほどできていなかったので、幸い決定的なピンチには繋がらなかったが、もっとシンプルなプレーを求めたい。次節は吉村が帰ってくる可能性があるが、吉村は中盤でシンプルな捌きができる選手で、山口よりは1対1に強い。またフリーランニングは上手くないが、ミドルシュートという山口にはない武器がある。要は一長一短なのだが、どちらが使われるか興味深いところだ。
吉田も高さ、当たりの強さは見せていた。またセットプレー時に良さを発揮していた。しかしイージーミスが多く、フィードの精度も悪かった。ただ今季始動からしばらく控えだった吉田だったが、帰名後は完全にレギュラーだっただけにピクシーの中で一番手なのだろう。まだ2年目の選手だし、パートナーにはバヤリッツァという現代型CBのお手本のような選手がいる。読みが鋭く、正確なロングフィードを持っており、自ら持ち込んで攻撃参加することもできる。かつて名古屋に所属していた大岩がトーレスの下で育ったように吉田にもバヤリッツァを研究して育っていって欲しい。
その他では攻撃時のセットプレーの単調さも目立った。キッカーの精度はもちろん中の動きも工夫が必要である。ベンゲル政権時はセットプレーからの得点が非常に多かった。今季の名古屋は相手によっては苦しい試合を強いられるだろう。そのときに武器が欲しい。ベンゲル時代はピクシーという名キッカーがおり、また高さのある選手・ミドルシュートの上手い選手が多かったが、今のメンバーでもやり方次第では取れるが、開幕戦を見る限り、セットプレーに期待感が持てなかった。
また後半の25分過ぎからは完全にスタミナ切れしていた。あのサッカーはスタミナが必要なサッカーだと感じたし、ナビスコ杯開幕後は過密日程が続く。到底11人では戦えず、バックアップメンバーの充実も必要だと思いながら、開幕戦の翌日はセカンドチームの練習試合が行わるウェーブスタジアム刈谷に足を運んだ。
練習試合「vsFC刈谷」の模様(名古屋公式HP)
内容は心底がっかりさせられるものだった。相手の刈谷はJFL開幕1週前ということでベストと思われるメンバーで臨んでおり、サポーターも多く詰めかけており、モチベーションが高かった。そういう盛り上がった状況に加えストイコビッチ監督、ボスコ、ディドコーチも視察に訪れている中にもかかわらず、セカンドチームというよりベテラン・中堅も多くいる1.5軍のような名古屋からはまるで覇気が感じられなかったのが非常に残念だった。
守備に関しては相手が守備的に戦っていたため大きく崩されることはなかったが、攻撃にはアイディアも積極性も何もなかった。特に残念だったのが青山、津田。直前でレギュラーから外され、開幕戦ではベンチにも入れなかったのが堪えたのか終始基本的なミスが多く、迷いながらプレーしているようだった。素材はいいものがあるが、そんなメンタリティでは今後はい上がってこられないだろう。フェルフォーセン監督時は高い評価を受けていた津田はこちらは最大の長所ともいっていいがむしゃらさが感じられなかった。
後半の45分に出場したルーキーの花井。技術は天下一品で、瞬時にアイディアを形にすることができる選手で、サッカー頭脳が高い選手だとも感じた。しかしあまりにも運動量が少なすぎる。一番若いのだからもっと走って欲しい。これではいつまで経ってもトップで出番は得られないだろう。期待しているからこそ厳しいことを申し上げたい。
またスーパーサブとして期待されていながら開幕戦でベンチ外となった深井だが、こちらは純粋に調子を落としていると感じた。唯一の得点となったPKに繋がる突破はあったが、それ以外はあまりらしさが見られなかった。開幕戦では膠着状態を打破できる選手がおらず、逆転ゴールが奪えなかっただけに深井の復調を期待したものだ。
その他増川、渡邊も長いシーズンを考えると出てきて欲しい選手である。
最後に。
何だか今年の名古屋はベルデニック監督2年目の03年第1ステージのように引き分けが大量発生する気がしてきた。バヤリッツァ、阿部がいれば守備が大崩れすることはないだろう。中盤に関しては「考えて走るサッカー」ができれば極端に支配率が下がる試合はないだろう。しかし決定力は一朝一夕で向上するものではない。ヨンセン、玉田はともに下がったボールを受けることが多いタイプのFWだけに中盤の選手の決定力が必要となってくるが、ここを上げるのは非常に難しいことだ。
よって開幕戦のような試合が続く気がしている。次節の相手・浦和は相当チーム状態が良くないと聞く。アウェーであり、良くないとは言ってもアジアチャンピオン様だ。勝つことは難しいだろうが、そんな中で会心の勝利ができれば自分の杞憂も吹っ飛ぶだろう。そんな試合を期待したい。