フィジカルは大前提 〜Wリーグトヨタ自動車が8連敗からの6連勝〜

バスケットボールというスポーツは上にある籠にボールが収まると得点と認定される。サッカー・フットサル、ハンドボール、ホッケー、ラクロスなど同じボールゲーム・コンタクトスポーツと異なるところであり、バスケットボールで身長が高い選手が有利なのもゴールが上にあるからである。

河村勇輝選手や町田瑠唯選手、山本麻衣選手などなど小さくても世界の大舞台で活躍している選手はたくさんいるが、女子バスケの五輪やW杯を見るとビッグセンターを中心に試合が動いている。Wリーグでも近年は日本の大学や高校を卒業した留学生選手が増え、時にはスローペース、大味な試合もある。

 

しかしトヨタ自動車には現状ビッグセンターが不在。センターを務める田中選手は180センチの大卒ルーキーで、PFが適任の選手である。桂選手も182センチでSFに近いPFである。ロスターの平均身長はフューチャーを含めたWリーグ14チームの中で2番目に小さい(とアイシン戦で実況をされていた佐藤俊介アナウンサーがそう仰ってました笑)さらに開幕2戦目で山本選手が負傷し、8試合欠場を強いられ、苦しい戦いが続いた。山本選手が欠場したシャンソン化粧品との1戦目で今シーズン初勝利を挙げるとそこから6連勝と一気に巻き返し、プレーオフ出場圏の4位で前半戦を終えることとなった。

 

その要因はいうと山本選手が復帰した、相手がENEOS富士通デンソーと比べるとだいぶ劣ったと見ることも出来るが、山本選手はシャンソン化粧品戦には出場していない。日立ハイテク戦も2試合合計で32分出場・13得点に留まっている。本来の山本選手なら1試合のスタッツである。

 

要因として以下の3点を挙げたい。

  • 相手のレベル

  • パレイ ルセアネヘイララ 紀子

  • フィジカル

なんだかんだ相手のレベルを要因から外すことはできない…

日立ハイテクやアイシンも昨シーズンと比べるとかなり強化されている。日立ハイテクは柏倉新HCの下で選手個々の役割がハッキリしてきた。リーグ屈指のスピードを誇る窪田選手が得点を量産、中野選手、奥山選手のフォワード陣も強力だが、ベンチメンバーが心許ない感は否めない。アイシンは佐藤アナも試合の振り返りで語っている渡嘉敷選手の存在が大きい。

現役Wリーガー最長身、アスレティック能力やスキルも備える日本女子バスケ史上最高の選手と評する人も多い。偉大な選手だが、こちらもベンチメンバーが…日立ハイテクよりもさらに頼りない…実績ある中堅・ベテランが移籍したのだから当然なのだが。。。

シャンソン化粧品含めHC采配もモンデーロHCのような相手が嫌がることや意外性ある選手交代とか無く、変化を作れなかったので、連敗していたトヨタ自動車の選手たちも恐れずに立ち向かえたのではないだろうか。

トヨタ紡織も10月は4勝2敗だったが、11月は北村選手がゾーンに入りデンソーから挙げた1勝に留まり、苦戦を強いられた。順位はトヨタ自動車より下…スポーツって複雑…苦笑)

 

パレイ ルセアネヘイララ 紀子、身長182センチ・体重89キロと他にはいない特徴を持ったセンタープレーヤーである。渡嘉敷選手やウチェ選手とは違うがある意味ビッグセンター。

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身長160センチほどの細身なスタッフを包み込んでしまいそうな体格だ。それどころかマスコットキャラクターですら包み込めてしまいそうだ←それはないw

東京医療保健大学を卒業後シャンソン化粧品での1シーズンを経て昨シーズントヨタ自動車に加入したが、これまでは出場機会に恵まれなかった。昨シーズンはビッグセンターが2人いたこともあり13試合出場、平均プレータイムは5分ほど、いわゆるガベージタイムしか出番はなかった。今シーズンもシャンソン化粧品戦までは同様の使われ方だったが、日立ハイテク戦ではgame1の1Qでチャンスが巡ってきた。大神HCの心変わりは謎でしかないが、コートに立ってすぐ結果で応えた。

3ptシュートを狙う奥山選手とはスピードのミスマッチだったが、体格・体圧と粘り強さでターンオーバーを誘うと相手陣内へ一直線。バスケット・カウントを獲得し、チームは1Qからボルテージ最高潮となった。そしてそこからオフェンスは一気に滑らかになった(←抽象的な表現 笑)

パレイ選手はスタッツに現れないところでの貢献度が高いいわばロールプレーヤーだが、彼女がスクリーンを掛ける、相手リバウンダーをシールすることでどの選手も積極的にシュートを放ち、ドライブで仕掛けていた。この試合での出場時間は12分ほどだったが、決して長くはない時間の中でチームに好影響をもたらした(当然相手のレベル差はあり、用意していたプレーの遂行力は違ってくるだろうが…

 

相手がどこであれトヨタ自動車の選手の屈強さは見て取れるが、アイシン戦ではその差が一目瞭然。同じWプレミアのチーム同士とは思えないくらいの差があった。いくら平均身長が高くてもスピードがあっても立派な戦術を練っても(ひたすらゾーンディフェンスは戦術でも何でもなく付け焼き刃、その場しのぎでしかないが)基礎フィジカルが備わっていなければ土俵に立つことすら出来ない。

※タイトルの「フィジカルは大前提」にようやく触れることができました笑笑

フィジカルで大きく上回るトヨタ自動車が終始圧倒した。2試合とも4Qは気が緩んでしまったのか追い上げられ、特にgame2は3Q終了時で22点リードが最終8点差まで迫られたが、あくまでそこまで(クロージングという課題はある)

アイシンはディフェンス、リバウンドで常に身を削られる格好となり、オフェンスにも悪影響を及ぼした。game1の3ptシュートが1/13などFG成功率は低調のまま2試合を終えた。またベテラン選手が多いからか一部選手のプレータイムが毎試合長いからか分からないが、トランジション(特に攻→守)の遅さも気になった。

 

ということで一気に巻き返したトヨタ自動車だが、現状では上位3チームとの差はまだまだ大きい。プレーオフに進出したとしても参加することに意義があるレベルで終わってしまうだろう。2巡目スタートとなるホーム豊田市でのENEOS戦で真のチーム力を把握できるのではないか。ここで1勝出来るようだと期待は膨らむ。

さらには大物ビッグセンターのアーリーエントリー加入も噂されているが(?)、大きい選手に頼りすぎ今のチームの良さを残してバージョンアップしていってほしい。

そして3シーズンぶりの優勝を置き土産に夢のロス五輪日本代表HCへと羽ばたいていただければと思う。