フィジカルよりメンタル 〜バスケ皇后杯 トヨタ自動車は決勝進出ならず〜

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今シーズンのリーグ戦でトヨタ自動車ENEOSに4連敗。3,4戦目は皇后杯ファイナルラウンド直前の週末にトヨタ自動車のホームタウンである愛知県豊田市で開催され、多くの観客が詰め掛けたが、2戦とも勝利を届けることは出来なかった。そこから中3日での皇后杯準々決勝でもENEOSとの対戦となったが、下馬評を覆す勝利で準決勝進出を果たした。

準決勝の相手はアイシン、リーグ戦ではトヨタ自動車の2戦2勝。共に快勝で特に1戦目に関しては3Qで試合の大勢が決まり、アイシンは諦めて主力選手を休ませるほどだった。しかし準決勝では下馬評は覆され、アイシンが勝ち上がった。

同じ相手に何度も負けてられないという反発心からだろうか。準々決勝のトヨタ自動車も準決勝のアイシンも今シーズンベストゲームだと思う(アイシンはあんま見てないけど笑)

前回の当ブログでフィジカルの重要性を説いたが、一発勝負のトーナメント大会やプレーオフともなると一番重要なのはメンタルなのかもしれない。

その一方で富士通はリーグ戦で連勝しているデンソー皇后杯準決勝でも勝利し決勝進出を果たしている。リバウンドメンタリティを跳ね返した富士通の強さは偉大である(後半テミトペ選手がファールトラブルになったところでソハナ選手を投入していたらデンソー勝てたのではと思うがさてはて…)

私は2018-19シーズンからWリーグなど女子バスケを見ているが、ENEOSや銀河系軍団の頃のトヨタ自動車のような憎たらしい強さは富士通には無い。普通に安定的に強いんですよ、何よりも美しくて華麗で多くの人に慕われるスタイルなんですよ、それが憎たらしいんですよね←

 

それはさておきトヨタ自動車の準々決勝、準決勝を振り返ってみます。準々決勝のポイントとしては

  • 星選手に自由を与えなかった
  • 2人目で狩り取る
  • 早い球離れ

あたりが浮かびました。

星選手、直近のリーグ戦では2戦とも2桁得点の活躍だったが、準々決勝では0pt、アシストも2に留まっている。一方で主に星選手のマークを担っていた山本選手はリーグ戦では土曜日0pt、日曜日も8ptに留まっているが、準々決勝では14pt・5ast。世界のYAMAMOTO完全復活を印象づけた。

リーグ戦ではENEOSインサイドプレーヤーに対するペイントエリアでのディフェンスはダブルチームが主体だったが、どうしてもファールが増えてしまう傾向があった(ENEOS戦に限らずの話ではあるが)準々決勝では2人目のディフェンダーがヘルプにいくのか曖昧な位置取りをし、チャンスと見るや一気に寄って狩り取りオフェンスに繋げるスタイル。不用意なファールも少なく、攻守一体の攻撃的なバスケを展開できていた。サイズで劣るトヨタ自動車の理想形ではないか。

ハーフコートオフェンスでは球離れがよく、シンプルなピックアンドロールや合わせのプレーから得点を積み重ねた。相手の得点後の切り替えを早くし、安間選手が鋭いドライブから得点するなど一瞬の隙を突いたプレーも光った。局面局面で見ても2Qタイムアウト明けの連続3ptシュート、3Qは得点が伸びなかったがリバウンドは確保し崩れず、4Q出だしの連続スティールなどこのチームの良さが随所に出た試合だった。

ENEOSは長岡選手がチーム最多の得点、リバウンドなど奮闘したが(トヨタ自動車の銀河系軍団時代はエブリン選手、ステファニー選手、宮下選手、ソハナ選手、河村選手とチームメートだったとか恐ろしいチームだったと改めて…苦笑)ルイスHCの采配には疑問符をつけざるを得ない。選手を信頼しすぎたのかとにかくタイムアウトが遅かった。48年ぶりの準々決勝敗退らしいが、そこは良くも悪くも外国籍指揮官ゆえか。チームの伝統や実績よりも優先したいものがあっただろうか。それが自分の哲学なのか長い目で見たチームビルディングなのか4戦4勝の相手だから油断や慢心があったのか何なのかは分からない。

トヨタ自動車としてはこれ以上同じ相手に負けられない状況でリーグ戦から中3日で修正、対策の手を打ったコーチングスタッフ含めたチーム全員の強い気持ちが結集した勝利だった。

 

準決勝、ポイントとしては

  • 固かったトヨタ自動車
  • 強い気持ちを見せた渡嘉敷選手
  • ヘッドコーチチャレンジ

でしょうか。

トヨタ自動車は試合開始直前のスタメン選手たちの表情が固かった。2Q途中まではオフェンスリバウンドが取れず、二次攻撃三次攻撃を仕掛けることが出来なかった。試合を通してシュートがショートすることも多かった(横山選手、三浦選手が出場できずプレータイムが長くなり疲労もあったのだろうが)山本選手が完全復活していなければもっと早めに試合は決着していたかもしれない。

一方のアイシンも体力面で厳しく、準決勝の立ち上がりでの負傷もあった吉田選手を長く使わないと成り立たないチーム。戦術渡嘉敷を遂行する上で吉田選手は欠かせないので…その戦術渡嘉敷も真新しいことや大胆な仕掛けをしているわけではないのだが、絶対的な高さと経験があり、周りも彼女たちを活かすためのプレーを会得している。そして渡嘉敷選手が勝ちたい、チームの歴史を変えたいという強い気持ちを見せて、周りを牽引した。トヨタ自動車から終始固さが取れなかったのもその気持ちに圧倒されたからかもしれない。

(アイシンに移籍しなくてもENEOSで実現できたことだとは思うが、どこかで誰かと気持ちのすれ違いが生じたのだろう)

56-56で迎えた4Q残り5秒、ルーズボール争いでトヨタ自動車ポゼッションがコールされたが、アイシンがヘッドコーチチャレンジ。これが成功しアイシンポゼッションに変更→アイシンタイムアウト→フロントコートからのオフェンス。この時点で吉田-渡嘉敷の絶対的ホットラインのあるアイシンに優位性がある。リーグ戦では1Qでヘッドコーチチャレンジを早々に使ってしまうこともあったチームだが、この試合ではここまで残していた。

ラストオフェンスでパスを通した吉田選手、一度止められてもねじ込んだ渡嘉敷選手、ルーズボールに飛び込んだ近藤選手、チャレンジを残していた梅嵜HCなどなど戦術渡嘉敷を遂行したアイシンが一枚上手(うわて)だった。

結果論ではあるが、アイシンラストオフェンスの時のトヨタ自動車のラインナップ、守り方は一工夫出来なかったか…スタメンの5選手で真っ向勝負を挑んだが、スロワーの吉田選手に幅があり手も長いパレイ選手をつけたら吉田選手は面食らったかもしれない。どんな手を打っても渡嘉敷選手に託すのは間違いないのでトヨタ自動車で一番のビッグラインナップにして渡嘉敷選手にトリプルチームで対応とか。

結果論なことは分かっているが、もっと足掻いて欲しかったなと…分かりきった作戦に対して真っ向勝負で挑み、その作戦を完遂されてしまうのは見てて何だかんだ切なかった…もしアマカ選手がいたとしても同じ結末だっかもしれないのだけど……

 

明日の決勝は富士通×アイシンとなった。リーグ戦では4戦とも富士通が圧勝しており、チーム完成度や選手層、疲労度など富士通優勝しかイメージ出来ないが、渡嘉敷選手が言うとおりアイシンの選手たちは決勝の舞台を楽しんで欲しい。

と優等生キャラ演じてみたけど、あれだけヘロヘロだった渡嘉敷選手に最後やられて負けた悔しさはなかなか忘れられないし、やっぱうちの子たちが決勝の舞台に立って欲しかったです………