2020-21シーズンからのレギュレーション変更について

Bリーグは19日に来シーズンからアジア特別枠を導入すること、オンザコートルールなどレギュレーションの変更を発表した。

18-19シーズンからのレギュレーション変更を18年6月に発表し、一部クラブ関係者や多くのファンから不満が噴出したが、その時の反省が活かされてはいる。

また現レギュレーションでは外国籍選手のプレータイムが極端に長くなり、また試合登録メンバーから外れた外国籍選手がベンチ後ろでジャージ姿で座っているのは不憫だという声がファンから多く挙がっていた。

某選手は今回の発表の随分前から情報が入っていたようだが、そうでない選手やクラブがあったとしても来季の契約交渉解禁は1月1日であり、公正性は保たれるのではないか。

外国籍選手の登録人数にも変更があり、プレータイムは分散できるだろう。

なお主な変更点は次の通り。

・外国籍選手のベンチ登録が3人までに

同時にコートに立てるのは2人まで

・アジア特別枠を導入

帰化選手を登録していないチームが使え、帰化選手同様他の外国籍選手2人との併用が可能。

対象国は韓国、中国、チャイニーズタイペイ、フィリピン、インドネシア

〇日常を世界基準に出来るのか

前回変更時は「代表強化」を掲げたが、日本人ビッグマンはあくまで繋ぎで短い時間起用されるだけで、外国籍選手2人がほとんどの時間でインサイドに君臨するチームが多かった。

結果竹内兄弟、太田選手に続く存在が台頭せず、東京五輪後が心配されている。

今回はW杯後にも各所で聞かれた「日常を世界基準に」を謳っているが、果たしてそれは可能だろうか。

確かに外国籍選手が増えれば一見世界と戦っている感は出る。

しかし現状ベンチ入りは日本人(帰化選手含む)10人+外国籍2人なのが、来季からは日本人8人(帰化選手含まず)+外国籍・帰化選手orアジア枠4人が可能となる。

外国籍選手のレベルやポジションにもよるが、プレータイムが減る選手が増えるのではないか。

特にビッグマンに関しては居場所を失う選手が続出すると思う。

インサイドは今以上に外国籍選手同士のマッチアップが増えるだろう。

世界基準を間近で見る・練習から世界基準を体感することも重要だが、試合に出てこそナンボ。

その中でも生き残った選手は成長し、日本代表に定着するような存在となるだろうが、そこに続く選手が現れにくいと考える。

そうなると日本代表では競争がなく、結局はBリーグトップレベかせいぜいアジアで戦える選手に留まってしまうと思う。

高橋コーチの仰ることが本来あるべき姿だし、日本代表候補にも名を連ねたことがある中西選手がこれを言ってほしくはなかったが、本音として理解できるし、日本男子バスケが置かれている現状は厳しいものだ。

Bリーグ、男子代表の課題はリバウンド争い

Bリーグではリバウンド争いに参加するのは外国籍選手ばかりで、日本人選手もボックスアウトする選手が少なく、外国籍選手同士の1対1で勝つか負けるかの戦いとなっているケースが多い。

飛び込みリバウンドにいく選手も少ない。

リバウンド争い=外国籍選手の仕事となっている感が否めない。

リバウンド争いに加わることに慣れていない、ゴールに近い位置で身体をぶつけ合うことに慣れていない選手が多く、その結果がW杯だ。

ここで女子日本代表の戦いぶりを見てみよう。

ハイライト映像につき日本のナイスディフェンスのシーンが収められていないのは恐縮だが、全員でリバウンドを取りにいっている姿勢は感じられると思う。

#10渡嘉敷選手らインサイドの選手がボックスアウトし、#81宮下選手、#88赤穂ひまわり選手らフォワードの選手、時にはPGの選手がリバウンドを拾い、ファストブレイクを仕掛ける。

相手が良いオフェンスで終われておらず、逆に日本はイージーレイアップやオープンでの3ptシュートで加点していく。

気になる方はYouTubeにこの試合の全編もアップされているので見ていただきたいが、彼女たちは全員日本国内のWリーグでプレーしている。

Wリーグには外国籍枠が存在しない(留学生出身者は除く)

192センチの渡嘉敷選手は例外として1人2人のサイズやフィジカルでリバウンドを制することが出来ず、チームでボールを奪いに行く姿勢が日頃から身についている。

宮下選手は所属チームではBリーグでいうところのマブンガ選手のように全てを託されており、男子の代表クラスの選手と比べると正直責任感が違うと思う。

外国籍枠がないことも全てを託されることも良いこととは思えないが、日頃からの習慣がないと見た目だけ世界基準にしても意味がない。

帰化選手=日本国籍を尊重の方針はどこへ?

前回の変更時の記事でチェアマンは帰化選手について「国籍が日本であること」を尊重と説明している。

その方針によって帰化選手は外国籍選手と40分間いつでも併用できるようになった。

完全に日本人と同じ扱いになったが、来季からはアジア枠選手と同じ扱いになる。

これが今回の発表の中で最大の疑問かもしれない。

優位性が下がる為、必然的に給料は下がるだろう。

帰化が噂されるロシター選手やエドワーズ選手、バーレル選手のようなレベルなら問題ないだろうが、ベテラン選手や外国籍選手と対等に戦うのは難しいが純日本人よりは上くらいのレベルの選手は契約更新が危ぶまれる。

現状のカテゴリーでのプレー継続も難しいかもしれない。

(コネや発掘力さえあれば)アジア枠で若くて動ける選手を獲ってきた方がメリットがある。

帰化を検討してる選手も二の足を踏むかもしれない。

極東の地でサラリーがそこまで高くない、プレータイムも確保できないとなるとメリットが少ないからだ。

チーム登録・試合登録とも外国籍選手2人、帰化選手orアジア枠選手1人で帰化選手は外国籍選手2人と同時起用可能、アジア枠選手は不可

このレギュレーションではダメなのか。

これなら帰化選手の優位性は保たれ、日本人ビッグマンもアジア枠選手と競う形となるだろうから、まだ何とか生き残れるのではないか。

〇ビジネス的効果はあるか?外国籍ガードは増えるか?

アジア枠創設の意図としては日本(沖縄)、フィリピン、インドネシアで共催する2023年W杯も意識したマーケティング戦略だろう。

テレビ放映権や現地スポンサー、Bリーグ観戦が主目的の訪日観光客の獲得を狙っているようだ。

しかし日本国内でもBリーグ知名度・関心度はまだまだ低い中で時期尚早だと考える。

中国は国内リーグの競技力・人気とも高く、韓国は反日感情が渦巻いている。

インドネシアは日本以上にバスケ発展途上国だ。

日本の治安の良さをアピールして、フィリピン、チャイニーズタイペイから掘り出し物を獲得するのがまずやれることではないか。

代表クラスの人気選手を獲得できない限り放映権等は難しいだろう。

Jリーグではタイ代表のチャナティップ選手は様々な効果を生んだが、今のBリーグに代表クラスの選手が来るメリットが思い浮かばない。

またチェアマンが思い描く外国籍ガードもどうだろうか。

昇降格があるリーグにおいて目先の勝敗にこだわる中で、現状の日本人ビッグマンのレベルも考慮すると可能性はかなり低いと思う。

言葉の壁もあり、チームビルディングの上でリスクが大きい。

〇ベースを整えてから競争社会へ

今は強制的にでも日本人ビッグマンの出場機会を設ける・クラブが育てざるを得ない環境を整備すべきと考える。

例えばオンザコートをホームチームは2-1-2-1、アウェーチームは1-2-1-2とズレを作り、日本人と外国籍選手のマッチアップ機会を増やすとか外国籍枠を減らすとか。

並行して育成年代の体制づくりを推し進める。

10年、いや20年かかるかもしれない。

W杯には毎回出場できているが、グループステージを突破できないとか狭き門の五輪には出場できないというレベルくらいに到達したときに来季からのようなレギュレーションにして、競争力を高めていくのがベターかと思っている。

Jリーグでも外国籍枠増や海外戦略など拡大路線に打って出たのは創設から20年ほど経ってからの話で、地に足をつけた戦略が必要だ。

今はBリーグのファンは温かいし、アリーナという空間を楽しんでいる人やおらが町のクラブを応援している人が多いと思うが、いつまでもそれが続くわけではない。

プロスポーツなので競技力が高くなければ見向きされなくなる。

2年でまたレギュレーションは変わると思うが、次こそ最低でも5年は続けられるレギュレーションにしてほしいものだ。

変化は悪いことではないが、変化しすぎるのもファンの興味を削ぐこととなりかねない。