女子代表 東京オリンピックプレ予選

正式名称は長ったらしくプレ・クォリファイング・トーナメントだが、要は東京オリンピックのアジア・オセアニア予選が先週開催された。

日本は開催国枠、アメリカは2018年W杯優勝国として既に出場権を得ているが、この予選にも出場しており、その意義には疑問を感じる。

また大陸別選手権=大陸別予選で良いのではと思うし、同大陸内での試合ばかりになってしまうとも思う。

世界ランキングを決めるための試合を増やす、大会を増やして、バスケの世界的な人気を高めたい意図があるのかもしれないが、その割にはアジアカップはインド、この予選はマレーシアと共にバスケ発展途上国

マレーシアに至ってはこの予選にもアジアカップ出場していない国であり、やはり疑問しかない…

ただ今年の春夏で強豪国との強化試合をあまり組めなかった日本としてはアジアカップと比べてサイズアップを図ったチャイニーズ・タイペイやキャンベージ選手が招集されているオーストラリアと戦える、しかもオリンピック出場をかけた相手と戦えるのは貴重な機会であることは間違いない。

(この予選がなければ宮下選手に道は拓けなかったかもしれないので、それだけでも意義があった)

と前置きはこの予選の正式名称に文句言えないくらい長くなったが(笑)、日本国内ではガチな女子バスケファン以外はほぼ注目していなかったであろう今予選について語っていきたい。

先述の通り、日本は東京オリンピック出場権を得ており、この予選はトライアウト・サバイバルの要素が強かった。

出場選手は以下の通り。

PG 本橋菜子 渡邉亜弥 吉田亜沙美

SG 林咲希 赤穂ひまわり 根本葉瑠乃

SF 宮澤夕貴 宮下希保

PF オコエ桃仁花 谷村里佳

C 渡嘉敷来夢 梅沢カディシャ樹奈

アジアカップから町田・本川・馬瓜エブリン・中田・髙田・長岡の6選手が外れ、吉田・根本・宮下・オコエ・谷村・梅沢の6選手が選ばれた。

アジアカップメンバーの中で最年長の髙田選手に関しては休養、控え選手を試したいという意図が強いと推測しているが、その他の選手に関してはまさにサバイバルではないだろうか。

吉田選手の復活と宮下選手のシンデレラストーリーについて語っておけば、この予選の感想となりそうだが、それでは物足りないのでプラスアルファも書きます。

2選手中心に選手評と今後のメンバー選考をメインテーマとします。

〇吉田選手が復活したPG

正直なところ吉田選手の現役復帰には懐疑的だった。

怪我、家庭の事情などやむを得ない事情ならいざ知らず、やり切った・燃え尽きたという理由で引退したわけです。

コーチングスタッフとしてチームに関わっていたわけでも地域リーグや3x3でプレーを続けていたわけでもなく、セカンドキャリアに入っていた選手がWリーグの追加登録期限のタイミングで現役復帰を表明。

そしてすぐに代表入りとなると他の選手のモチベーションが下がらないか気掛かりだった。

プレーで黙らせる・結果が全て、この言葉が相応しい吉田選手のプレーぶりには参りましたとしか言えない。

バスケIQ、経験、視野の広さなどPGに必要な能力をブランクがあっても全て錆びついておらず、ブランクの期間も実は極秘でトレーニングをしていたのではないかと思ってしまうくらいだった。

(身体つきからするとそうは思えないが)

本橋選手がティップオフからエンジン全開でチームにエナジーを与え、疲れたら・流れが相手に傾いたら吉田選手を投入する。

それにより他の4人が動く・走る。

動いていないとパスがもらえないが、動いてズレを作ればイージーシュートに持ち込めるパスが出てくる。

渡嘉敷選手との阿吽の呼吸が健在なだけでなく、宮下選手らこれまで一緒にプレーしたことがない選手の特長も掌握していた。

こうして昨季のJX-ENEOSスタイルがわずか3試合で出来上がってしまった感がある。

そこで立場的に苦しくなるのが町田選手で、チームを落ち着かせる役割を吉田選手が担えて、また吉田選手と町田選手を比べると得点力でも吉田選手が勝る。

アジアカップに続いて結果を出した本橋選手、健在ぶりを見せつけた吉田選手は五輪有力か。

ホーバスHCは2ガードを用いることはほとんどないが、それでもアクシデントを考えるとPGはもう1人必要。

3番手PGはプレータイムがほぼない可能性が高いため、個人的にはパリ五輪を狙える若手選手を抜擢してほしいと思っている。

川井麻衣選手、齋藤麻未選手に期待したいところだ。

齋藤選手に関してはPGが本職ではないが、サイズがあり、PGの選手と併用してコンボガード的な起用も可能だ。

コンボガードと言えば今予選にも出場した渡邉選手も所属チームで結果を出し続けており、当然今後も候補に入ってくるだろう。

〇ひまわり選手一歩リードも実力者揃いのSG

8月のさいたまでの強化試合でブレイクした赤穂ひまわり選手が安定して活躍し、スターターに完全定着した。

林選手は膠着状態となった時に投入され、オフェンスに流動性を与え、1本の3ptシュートで流れを手繰り寄せる。

上記2選手は堅そうだが、ホーバスHCは根本選手への期待感が大きいようだ。

今季はアジアカップまで代表での試合出場がなく、所属チームでも決して調子は良くないと思ったが、この予選でメンバーに入った。

随所で持ち味は発揮したが、本来のパフォーマンスには程遠く、オーストラリア戦ではDNPとなった。

ベンチに2人のピュアシューターを配する点にも疑問を感じたが、インド戦、チャイニーズタイペイ戦では2人を同時起用する場面もあり、ホーバスHCの3ptシュートを増やしたい意図をくみ取ることはできた。

シューター2人が好調ならばその采配も大いにありだと思うが、理想にこだわった感があり、枠を1つ無駄にしてしまったのは否定できない。

個人的にはドライブで攻め込む場面が少ない・アクセントとなれる選手がいないと思ったので、スラッシャータイプやスピードに長けた選手が1枚必要だと感じた。

ずばり本川選手、水島選手、ポジションは異なるが馬瓜エブリン選手です!

本川選手、エブリン選手なら欧米の屈強な選手にも当たり負けしないフィジカルがあり、水島選手ならシュート力もある。

2月の五輪予選ではこの3選手のうち最低1人は選んでほしい。

〇新風吹き荒れるSF

10月後半エブリン選手の調子が上がっており、復権の場が与えられるかと予想していたが、これまで5人制A代表は大所帯での合宿に参加したのみだった宮下選手が今回選ばれた。

所属チームでは獅子奮迅の活躍ぶりを見せている宮下選手だが、ディフェンス、オフボールの動き、トランジションに課題があり、それを克服する期待も込めて3x3代表に選ばれていたと想像していて、このタイミングで5人制は時期尚早かと思っていた。

短期間でホーバスHCのシステムを理解し、ディフェンスではフィジカルとアジリティを活かしてマークマンを離さず、オフェンスではファストブレイクで先頭を切って走っていた。

オーストラリア戦に関してはブレイクからの彼女の得点は少なかったが、走ることで味方のスペースを作り出し、それが信頼を集め、3ptシュートを打てるチャンスでボールが回ってくる。

その結果がオーストラリア戦での35分出場だったのではないか。

今後も有力候補になってくることは間違いないが、SGのところで挙げた3選手などライバルは多く、所属チームでの更なるレベルアップが求められる。

※戦術宮下においてどうレベルアップしていくか...

〇控えに課題を残すインサイド

髙田選手の偉大さを改めて痛感させられたこの予選。

代表での経験が浅い3選手が起用されたが(オコエ選手に関しては2018年W杯に出場しているが)、いずれも期待に応えられなかった。

オコエ選手はディフェンス面でチームを助けたが、試合の中での波が大きく、オフェンス面での物足りなさも残った。

サイズとシュート力を兼ね備えた谷村選手はホーバスHCの期待も大きく、アジアカップのメンバーにも選ばれていたが、負傷により直前で出場を断念した。

リベンジの機会だったが、梅沢選手も含め国際大会の雰囲気に慣れるに留まった。

その中で宮下選手が好調だったこともあり、オーストラリア戦ではほとんどの時間帯で宮澤選手がインサイドに入った。

この策はアクシデント時限定にすべきで、2月の予選では本職の選手の台頭が待たれる。

チームとしてはキャンベージ選手擁するオーストラリアにリードを許す時間帯がほぼなく、盤石と言ってもいいレベルで勝利した。

キャンベージ選手をダブルチームで封じにいっても他のポジションで隙が出来ることはなく、選手交代をしても質を維持できる。

宮澤選手を中心にコアメンバーと若手メンバー、そして復帰した吉田選手がしっかり融合しており、質量ともに充実した練習が出来ていることが十二分に伝わってくる3試合だった。

欧州の強豪国と同組になることが確実な2月の予選への期待感も膨らむが、最後にそのメンバー12人をまだ3か月近く先の話だが、予想してみる。

PG:本橋 吉田 渡邉

SG:赤穂ひまわり 林 本川(水島)←願望込み

SF:宮澤 宮下(馬瓜エブリン、本川

PF:髙田 谷村(馬瓜エブリン)

C:渡嘉敷 長岡

3枠を本川、宮下、エブリン、谷村の4選手で争う構図ではないだろうか。

アジアカップにもプレ予選にも出場していない選手がここから滑り込むのは難しいかもしれないが、実力者の巻き返しに期待したい。

宮下選手のようなサプライズ招集の可能性だってまだまだある。

むしろ代表経験浅い・全くない選手の方が先入観などがなく、ホーバスHCとしても戦術を落とし込みやすいのかもしれない。

いずれにせよ12月からのWリーグ皇后杯の戦いからますます目が離せない。

皇后杯のファイナルラウンドは男子の天皇杯と同会場、その翌週にはBリーグWリーグともオールスターがある。

2月後半には男子のアジアカップ予選も行われる。

日本一丸でバスケ界が盛り上がることを願っている。

(男子でもニューヒーローの出現があることを期待しています)