第88回バスケ皇后杯準々決勝Day2 レビュー

デンソーの巧みな試合運びが光った。立ち上がりは高田選手のインサイド本川選手のドライブインを主体に攻め、選手交代をしていき、近藤選手、畠中選手で外も見せる。投入直後に3ptシュートを沈めた近藤選手はさすがです!

さらには元気印高橋選手、激しすぎるくらいのディフェンスも魅力なシューター篠原選手でフィジカル、スピードなど勢いをつけて、かと思えば渡部選手の落ち着いたゲームコントロール。これだけ変幻自在な選手起用をされたら相手は戦いにくいっちゃありゃしないです。本川選手以外は派手さはないが、誰がコートに立っても個性が融合している。マルコビッチHCの戦略が浸透し、毎試合見てるファンの方ですらアッと驚く交代策にも選手が応えられている。

この試合に関しては篠原選手の活躍が目立った。前半で3本の3ptシュートを決めたが、外した1本もハリーバックして相手のオフェンス機会を奪った。

後半は見ていないが(笑)、プレータイムが一番短い選手で10分、長い選手でも25分と見事なタイムシェア。出場12選手中11選手が得点を決める全員バスケだった。

髙田選手がチームの中心であることは変わりないが、彼女に依存しないチームが出来つつある。

日立ハイテクは2Qのタイムアウトを取るタイミングが遅かったか。篠原選手の3ptシュート3本目のあとに取ったが、既にデンソーに完全に飲み込まれていた。

だかそれ以前に(シャンソン化粧品もだが)怪我人が多く、コンディション、ピーキングに問題があるのではないだろうか。男子サッカーのようにJリーグルヴァンカップ天皇杯ACLと大会がたくさんあるのなら時には試合ごとにプライオリティをつけないと選手の身体が持たないが、女子バスケにおいて皇后杯ファイナルラウンドという大舞台にチームを整えられないのは管理体制がよろしくないのかもしれない。

 

ファイナルラウンドの組み合わせ抽選が非公開なんてトヨタ自動車を苦しめる意図がある。会場町田瑠唯ファンばかりでアウェイの雰囲気を作られた。ENEOSと好勝負出来るのはトヨタ自動車だけだ。

 

ハイ、苦しいですね負け惜しみですね。はい、すみません。完敗ですよ。。

三菱電機の試合見て40分安定した試合をすることは難しいとか言ってましたけど、それが推しチームにも見事に当てはまるとは思ってもみなかったですよ…

1Qはスターターに抜擢されたソハナ選手が攻守においてインサイドで相手に圧を与え、気迫溢れる長岡選手中心に得点し大きくリードしていた。

2Q以降の失速は不思議だが、冷静に振り返ると負けるべくして負けた。戦前から顕在化していたこと含めて要因は色々と。

 

  • 安間選手の穴

この試合でスターターに起用された山本選手が33分出場し、川井選手は10分に留まった。梅木選手に至ってはDNP。ここにモンデーロHCの苦悩が窺える。Bリーグなら試合数が多く、試合こなす中で新戦力をフィットさせていけるのかもしれないが、Wリーグはその場が少ない。加えてチーム間の実力差が大きく、Bリーグに例えるならB1のベスト4常連チームとB2ライセンスを持たないB3チームが同じカテゴリーで相まみえる状態なので、正直なところ下位チームとの対戦では試合勘維持程度にしかならない。これが私が2部制導入を主張する理由です。

話は逸れましたけど(笑)、開幕前から懸念していたことで、戦力に合わせたスタイルを構築できていない=安間選手がいた時と同じ戦い方をしているように見える。山本選手がトップから強引にドライブインする場面が多い。川井選手のパスセンスを活かしたシンプルなインサイドフィードやパッシングスタイルからディフェンス陣形を崩す形があっても良い。

 

大神さんが引退後ほとんどの試合でスターターとして出場している三好選手。彼女の3pt成功率が高い試合はほとんど勝っている(と思う笑)1Qの早い段階で1本目を打てて、それが決まると彼女自身もチームも勢いに乗れるが、この試合では1本目が外れて、結局0/5。昨シーズンのリーグファイナルgame1ではシュートタッチが悪いなりにやれることをやって、最後に大仕事をしたので、忘れかけていたが、やはり三好選手の3ptシュートはこのチームの肝である。

 

  • 河村選手の負傷退場

1Q残り3分ほどのところで3ptシュートを決めた際にディフェンダーに足を踏まれ、コートに戻ることは出来なかった。ベンチでの様子を見る限りでは大怪我ではなさそうなことは不幸中の幸いだが、チームに動揺が感じられた。2Q以降リバウンドが改善された相手に対してディフェンス強度が落ちた。長岡選手、ソハナ選手の負担が増した。

 

  • 後半の入り方

2Qで猛追を受けたが、何とか2点リードで折り返した。東京羽田とのgame1、シャンソン化粧品との2戦ではハーフタイムに修正して3Qで試合を決めてしまったが、この試合ではコーチにも選手にも修正力がなかった。前半プレータイムがなかった宮下選手をコートに送り、悪くはなかったがシュートを決められていない中で次の一手を打つ前に富士通に勢いがついてしまった。モンデーロHCとしては持ち駒を活かしきれなかった。

 

とここまではトヨタ自動車の敗因分析だったが、あの1Qを耐えた富士通の忍耐力には称賛しかない。ここからはいくつか富士通の勝因を。

  • ゲームプラン通り?

富士通としてはロースコアに持ち込んで我慢比べ、相手が焦れたところで町田選手、篠崎選手が仕留めるという大まかなプランを持っていたと思う。

試合の入りは選手に硬さが見られ、攻守でリバウンドを取れず、得意のファストブレイクも出せず、押し込まれる展開だったが、1Qの失点は15。トヨタ自動車としてはそこまで点を取れているわけではない。

↓えぇ、プラン通りのようですね笑

中でも宮澤選手のディフェンスでの貢献度はピカイチだった。肩の状態がおもわしくなさそうだが、割り切ってディフェンスに徹して、ディフェンスリバウンド10、4ブロック。影のMVP。

リーグ戦4試合欠場し、皇后杯ファイナルラウンドに照準を合わせてきた中村選手含めて勝者のメンタリティ恐るべしである。

 

  • 影のMVPはもう一人

MVPは一人だろって話ですが、語彙力ないのとどうしてもこの選手の活躍を挙げたいのです。内野選手です。

出場12分、得点は3ptシュート2本で6pt。一見なんてことないスタッツだが、1Q残り18秒でのシュートは2Q以降に勇気を与えた。2Q半ばにも1本、追い上げムードを加速させた。昨シーズンはスターターでの出場が多かった選手だけに悔しい気持ちもあるだろうが、準決勝進出の立役者の1人であり、個人的にはWリーグ前半戦のベストシックスマン。SNS動画に残るのは町田選手や篠崎選手だが、こういう少ないチャンスをモノにできるいぶし銀タイプも欠かせない存在。

 

  • 町田選手、篠崎選手の勝負強さ

ここは言わずもがなですが、もうここまでくると人間じゃないですw

4Q残り6:25でのスティールからの得点はあぁやられたと思った。

3:04の3ptシュートはまだまだ時間あるのにダメだと思ってしまった。MVPは篠崎選手、これは異論なしでしょう!

 

準決勝はトヨタ紡織×ENEOSデンソー×富士通の組み合わせとなった。正直なところENEOSのツインタワーを封じられるチームはあるのかという疑問は拭い切れないが、東京五輪の日本代表も巨人たちがそびえ立つフランスやベルギーを倒して銀メダルに輝いており、期待している気持ちもある。中でもデンソーに期待。マルコビッチHCがどういう策を講じてくるかに注目したい。昨シーズントヨタ自動車がリーグ優勝を果たした。続いてデンソーが初タイトルを獲得すれば日本女子バスケ界における理想の監督像が変わってくるかもしれない。そういう側面からもデンソーに期待している。