五輪で銀メダル獲得という快挙を成し遂げた女子日本代表。渡嘉敷選手ら主力と目論んでいた選手の怪我や引退によりスモールバスケへとマイナーチェンジを施し、それが見事にハマった。
ただ日本にはホームアドバンテージがあった。試合時の応援はなかったが、選手村に入らずナショナルトレーニングセンターに滞在。食事や気候などにも慣れている。また五輪前に強化試合を満足に組めなかったことは他国にスカウティングされにくいメリットもあった。特徴的な日本の戦い方、まして渡嘉敷選手不在のチームはさらに曲者で他国としては情報不足だっただろう。
今後は日本への警戒感が強まる。ステップアップが求められる中で恩塚氏がHCに昇格した。準備期間は約1ヶ月、銀メダルメンバーは5人いるがベテラン不在。代表歴少ない・初めての若手が何人もいる。経験を積ませる次世代の若手を育てる大会にしたいところだが(W杯予選出場権は懸かっているがアジア枠は4あり、勢力図を考えると5位以下はほぼあり得ない)、日本はアジアカップ4連覇中である。コーチも選手もこれを途切れさせるという不名誉なことはしたくない。
結果と育成を両立させることは難しいが、これほど究極に難しい大会はなかなか無いかもしれない。
というプロローグは置いておいて(←)、グループステージ3連勝で準決勝進出を決めました!
3試合を簡単に振り返ってみます
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vsインド 136-46
格下相手ではあったが、3ptシュートがよく決まった。意図して3ptシュートの形を作るというよりはドライブやパスワークで切り崩す意識高く持ってオフェンスを展開していたが(シューターよりも打開力のある選手を並べる時間帯も長かった)、ボールムーブメントがよく、結果的に外でオープンの形を作れて、3ptシュートを打てていた。
Japan made it rain 3s in Amman ☔️!!@JAPANBASKETBALL #FIBAAsiaCupWomen #basketball pic.twitter.com/NtxljqTTV0
— FIBA Women's Asia Cup (@fibasiacupwomen) 2021年9月27日
3ptシュートとペイントエリアでのシュートと期待値の高いシュートに特化していたホーバス体制だったが、今大会では空けばどんどんミドルシュートも打っており、恩塚色を感じさせた。
Wリーグチームとのトレーニングマッチでは不調だった宮下選手、永田選手がフィットしてきたこともこの試合の収穫。
136対46のスコア✨で初戦快勝🎉😊の #AkatsukiFive この試合 #FIBA もその活躍に注目した😍😍 #宮下希保 選手の #インド🇮🇳戦での #スーパープレー 集です💪🏀
— BS-TBSスポーツ (@sports_bstbs) 2021年9月27日
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2シーズン前によく見た戦術宮下が久々に見られ(あれとはだいぶ違いますね、でも特長が発揮されてましたね)、永田選手は大学時代を思い出させる躍動感溢れるプレーだった。
ディフェンスはペイントエリア内での不用意なファールが多く、ボックスアウトも不徹底。髙田選手、長岡選手の偉大さを改めて感じた。トップの位置でのマークの受け渡しミス、ヘルプの遅れから3ptシュート打たれる場面も多く、相手のレベルを考えると失点は多い。ディフェンスには課題が残った
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vsニュージーランド 62-50
サイズ、フィジカルを活かしてインサイド主体で攻めてくる相手に対して連動したプレスでボールプッシュを遅らせた。ペリメーター付近ではドリブルを多く使わせて、タフショットを誘発。不用意なファールもなく、相手ターンオーバーや粘り強いリバウンドからファストブレイクの形を作り出せていた。特に1Q残り3:20頃からの山本選手、赤穂選手で切り崩して根本選手がコーナー3pt、セカンドチャンスを中田選手が決めた場面はNEWJAPANスタイルを感じさせ、最後の永田選手のパスから東藤選手がボールを残してレイアップシュートを決めた場面も綺麗な形であり、試合の締めくくりとしても最高だった。もっとこれらの形を作り出していきたい。
こうしてディフェンスは前日から修正し、速い展開も繰り出したが、ハーフコートオフェンスは停滞し、得点が伸びなかった。その中でインド戦ではプレータイム少なめだった馬瓜選手がらしさ全開のプレー。中をこじ開けてファールをもらい、打破していった。オコエ選手も外だけでなくトップから割っていくドライブや合わせからの得点。この2選手のフィジカルゴリ押しアタックが光った。中田選手もリバウンドで奮闘した。
インド戦前半では疲労か練習量不足かTV番組でのマラソンの影響か分からないが不調だった林選手は完全復調。安定感あるプレーを見せ、4Q立ち上がりのクロックぎりぎりでの3ptシュートは流れを手繰り寄せた。
新生 #AkatsukiFive🇯🇵🏀⛹️♀️#アジアカップ 第2⃣戦
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苦しみながらも💦62-50で開幕連勝👏☺
🆚#ニュージーランド🇳🇿 #ハイライト✨🔥
#めざせアジア5⃣連覇
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ハーフコートオフェンスが停滞した要因としてドライブやパスで切り崩すことを意識してか手数をかけすぎた形が特に山本選手がPGの時に目立った。時にはシンプルにインサイドに収めても良いし、そのためには西岡選手を使った方が良いと思う。
東京医療保健大学以外では初めて指揮を執る恩塚HCも今大会は采配の経験値を高める場となる。1Qは5分経たないうちにスターターが全員ベンチに下がり、試合の流れは悪くなった。後半は比較的固定して戦い、安定したが、それでもインド戦で結果を出した宮下選手、永田選手がほぼ出番を与えられなかったのは疑問。先述の西岡選手も含めて肉弾戦に強みを出せる選手がベンチを暖めていたのは勿体なかった。
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vs韓国 67-62
日本代表って勝てばいい、勝てば官軍。ましてこのチームは準備期間1ヶ月、新顔も多い中での戦い。なのでグループステージ3連勝・1位通過で100点なのです。
でも銀メダルで世間の見る目は厳しくなってるし、代表って色んなチームから選手が集まってそれぞれのチームのファンが見る。普段そのスポーツ見てなくても代表だけ見る人だっている。だから批判や批評、ネガティブなことも聞こえてくるが、女子バスケ代表がそこに仲間入りしたことは個人的には良いことだと思ってます(笑)
とはいっても一言でカオス、そして恩塚HCのメンタル面が心配である。
恩塚HCは大会前にメディアインタビューで「フリーランスにしすぎてカオスになってしまう。あるいはナンバープレー(セットオフェンス)をやりすぎてロボットになってしまう。そのどちらとも言えない状況のなかで選手自身が考えてプレーできる仕組みを、私たちがモデルになって作ることができたら」と語っていた。この考えは素晴らしいと思うが、韓国戦に関しては(ニュージーランド戦もですかね…)フリーランスにしすぎてカオスになってしまっていた。オフェンスが停滞していてもセットオフェンスはしない(なら宮下選手や永田選手使った方が個で打開できる力あるのに…)ショットギリギリであたふたする場面が何度もあった。1on1なのか、シュートなのか、ドライブなのか。ガードなのか、フォワードなのか、センターなのか。役割分担や決まり事が整理されていないように感じた。その中でグループ最難敵の韓国相手にタイトなディフェンスと中田選手、ステファニー選手中心にリバウンドで粘り、リードして折り返すことが出来たのは良かった。
3Qはさらにオフェンスが停滞し、韓国に逆転を許したが、4Qで宮崎選手にスイッチが入る。ボールプッシュを速め、赤穂選手、馬瓜選手のフリーランニングを活かした。自らも3ptシュート、レイアップ、ミドルシュートなど多彩なパターンでこのクォーターだけで12pt(たぶん 笑)
2年前の戦術宮下はどうかと思ったが、同じコーチに育てられた宮崎選手により戦術兵器ぶりは圧巻だった。
🇯🇵Miyazaki was locked in tonight ‼️
— FIBA Women's Asia Cup (@fibasiacupwomen) 2021年9月29日
18 pts. 7 reb. 9 ast.#FIBAAsiaCupWomen @JAPANBASKETBALL pic.twitter.com/Q2PoJ28WE9
韓国は残り4分すぎから心身ともに疲労が顕著に現れ始めたが、そうなったのも日本のディフェンスあってこそ。相手の心身を削るディフェンスは指揮官が代わってもなお健在だ。林選手の言うとおり日本のディフェンスは大きな武器で、それによりチャイニーズ・タイペイとの準決勝進出決定戦というオプションマッチは回避できた。しかしオフェンス
は3人目の動きがもっと欲しいところ。
激闘💥⛹️♀️🆚#韓国🇰🇷 #ハイライト🔥
— BS-TBSスポーツ (@sports_bstbs) 2021年9月29日
白熱のスコアは67ー62😲#シーソーゲーム#女子バスケットボール🏀#アジアカップ #めざせ5⃣連覇🏆#AkatsukiFive 🇯🇵#日本代表#Basketball#FIBAAsiaCupWomen#wリーグ#bstbs
🔟月2⃣日(土)#予選リーグハイライト 昼1時📺😃#準決勝 夜8時59分📺👀 pic.twitter.com/nyociDdNDw
#AkatsukiFive 女子日本代表
— バスケットボール日本代表 (@JAPAN_JBA) 2021年9月29日
🏆FIBA 女子アジアカップ2021[予選ラウンド第3戦]
日本67-62韓国
逆転勝利で予選ラウンド1位通過し、準決勝進出決定https://t.co/vrOZwaMbiJ
「相手の強さやしつこさに負けず、徹底して戦い続ければ勝利が見えてくるのは分かっていた」林咲希選手#FIBAAsiaCupWomen pic.twitter.com/xhKga8Xeep
以下グループステージ通して気になったこと。
- 恩塚HCのメンタル面
五輪期間からではあるが、顔がやつれ気味なのが気になる。韓国戦では最後のタイムアウトで「オフェンスはチャンスがあったらアタック、こっちの方が良いなと思ったら勇気を持って選択する。ディフェンスは一瞬のところ、気持ち込めて」と言っていたが、紅白戦やトレーニングマッチなら哲学や抽象的な指示で選手に考えさせることはあり。しかし公式戦、しかもグループステージ1位をかけた大一番でその指示を受けて、選手は気持ちが上がらないし、戸惑わないだろうか…
アジアカップの指揮を執ると発表された時、ホーバス氏は休養との説明があったが、恩塚HCも同様に休養が必要だし、そもそも本職がある。アジアカップ後はゆっくり休んでと言いたいが、そうもいかない。せめて今後は女子日本代表専任のACをつけてほしい。ホーバス氏もACからの昇格だが、彼にはWリーグでの経験があった。恩塚氏がACとしてついていた(専任ではないが…)トップカテゴリーでの経験がないのなら尚更サポート役が必要。コーチの分業化が進んでいる現代スポーツにおいてはチーム強化の上でも絶対必要。千葉ジェッツも外国籍ACを招聘してからチーム力が安定し、初優勝を果たした(あれ?昨シーズンって宇都宮でしたっけ?笑笑)
恩塚HCの大学→日本代表へのアジャストも求められる。タイムシェアありきでは通用しない。
- コントロール型PGの不在
セットオフェンスをしていないので、難しさはあるが、町田選手もしくは藤岡選手がいたらこういう時にオフェンスを整えられただろう。町田選手は休養、藤岡選手は現役復帰後間もないという事情はあるが、ゲームをコントロール出来るPGの台頭が待たれる。町田選手がパリ五輪も出場するにしても競い合う選手が必要。軸丸選手の肉体改造期待してます!
※山本選手は3x3を経験してスコアラー寄りになっていると思うので、当面は本橋選手と争うことになるのではないだろうか。上手さとインサイドプレーヤーにも当たり負けしない強さを兼ね備えており、また3x3を極めすぎたがゆえに持ちすぎるきらいがある。周りをもっと活かしていきたい。
- ビッグセンター育成
今回は西岡選手が選ばれているがプレータイムが少ない。もっと使ってほしいが、恩塚HCの要求水準に達していないのかもしれない。個人的にはディフェンスでボールウォッチャーになり、マークを外してしまうこと・後追いでファールを取られることが多いように思う。中田選手の奮闘が目立つが、五輪やW杯を考えるとビッグセンターも必要。渡嘉敷選手が回復すれば代表にも復帰するが、PG同様競い合う選手が台頭してきてほしい。
(タクとタクで争うのもアリですよね?!)
- ピュアシューター枠の争い
今回は林選手、根本選手が選ばれているが、恩塚HCの起用法を考えると今後はこの枠は1人になるかもしれない。本橋選手(or山本選手)もシュート力は高く、ピュアシューターを減らして、PFを増やすべきか。
と手短にするつもりがダラダラと書いてしまいましたw
オフェンスの交通整理さえ出来れば充分5連覇は可能だと思うので、整理されていることを願って、まずは土曜日の準決勝ですね!!