天皇杯決勝&岡田ジャパンに期待すること

鹿島サッカーの神髄を見せていただいた天皇杯決勝。

直近で鹿島の試合をしっかり見たのは昨年の9/15名古屋戦だったが、

その時の鹿島の出来は最悪と言っていいほどだった。

プレスは掛からなくて、アンカー経験の乏しい山口慶が試合のイニシアティブを握っていて、左SBの新井場は何回杉本・小川に裏をとられたことか。

攻撃時もまったく連動性はなく、後半には信じられないミスから3失点目を献上。

名古屋も決してよくなかったが、鹿島の完敗だった。惨敗と言ってもいいくらいだった。

夏場だったが、代表戦で1週間空いており、当時鹿島には代表はU22の内田のみであり、原因不明だった。

それから鹿島は連勝街道を突き進み、Jリーグで奇跡の優勝。

天皇杯も勢いそのままに決勝まで勝ち進んだ。

そして今日を迎えたわけだが、鹿島の強さが分かった。

前半8分に先制し、その後も終始優勢で試合を進めていたが、無理に攻めにいかず、じっくり攻めていた。

またコンパクトな陣形を保ち、相手陣から3人がかりでプレスをかけて姿勢は圧巻だった。

それに鹿島の伝統として受け継がれている対戦相手やそのサポーターからすると憎らしいまでのボールキープや巧にファールをもらうなどの試合巧者ぶりが発揮できていれば強いはずだ。

マルキーニョス、本山の前線からの献身的な動きが今の鹿島サッカーの起点となっているが、個人的には小笠原の"成長"が躍進の原動力となっていると思っている。

イタリアでプレーする前から能力の高いMFで、老獪さを持っている選手ではあったが、運動量や集中力に問題があり、守備への貢献度も低かった。

しかし鹿島復帰後の小笠原はまるで別人かと思うくらいである。

以前と比べるとやや下がり目の位置でプレーし、サイドチェンジを織り交ぜた巧みな散らし等ゲームメイクだけでなく、守備面での貢献が非常に高い。

その真骨頂が前半23分に見られた。

センターサークル付近左で正当な激しいチャージでボールを奪うと、すぐに前を向きストヤノフに勝負を仕掛け、ファールを誘い、血の気の多い相手を苛立たせることにも成功した。

私はこの小笠原を日本代表のMFの中心に据えて欲しいと思っている。

オシムジャパン時には遠藤や中村憲剛が担っていた役割を与えて欲しい。

今月半ばからの合宿でも彼らは選ばれており、しばらくは変わらないだろう。

もちろん彼らも優れたプレーメイカーであることは否定しない。

しかしフィジカルの強さ、老獪さ、国際経験の面で劣るのではないか。

また遠藤に関してはプレスの厳しい相手への対応に疑問が残る。

こうして鹿島、小笠原のよいところを書いてきたが、鹿島に苦言も1つ申したい。

新井場は9月の名古屋戦同様だった。

特に前半自サイドを崩されていた。

オーバーラップは何度もしていたが、クロスの精度が余りにも悪い。

いくら右利きとはいえG大阪時代から左サイドのプレーしている選手である。

反対サイドの内田が先制点だけでなく、効果的に攻撃に絡んでいただけに余計に際だっていた。

来季ACLを戦う鹿島の補強ポイントはCBを含めたDFだろう。

失点は少ないが、層が薄く、スピードに不安が残る。

SBは内田が五輪本大会などで抜けることがあり、このポジションのスペシャリストもいない。

FC東京・伊野波の獲得に乗り出していると言われているが、DFの補強に成功すれば、戦う術を知り尽くしているといっても良い鹿島だけに決してACL優勝は夢ではないと考える。

最後に敗れた広島に関して。

今日は柏木不在が大きな影響を及ぼし、攻撃が単調となり、完敗だったが、改めて降格するような実力のクラブではないと思った。

中盤は実力者が揃い、今季崩壊したDFラインもストヤノフがフィットしたことで立て直されていた。

ただ今日クローズアップされたのは前線のターゲットマンの不在。

佐藤・平繁の2トップでは双方の持ち味が活きていなかった。

駒野、柏木に移籍の噂があるが、彼らを引き留めることとともにFWの補強も重要ポイントだろう。