ラグビートップリーグ改革に見る企業スポーツの在り方

昨秋日本で開催されたW杯は日本代表チームがベスト8に進出したこともあり、大盛況。

現在行われている国内リーグも満員の試合が多く、スクールウォーズ以来の(?)ラグビーブームが到来している。

その中でラグビー協会はリーグ改革を進めている。

一時は清宮副会長が主導し、完全プロ化へと舵を切っていたようだが、バレーボールVリーグの現在形でもあるビジネス化に落ち着きそうだ。

要点としては

〇選手の雇用形態はプロ・アマ混在

〇各企業は運動部・福利厚生機関ではなく、運営するための事業部を設置

〇チーム名に地域名を入れる

〇競技力格差縮小のため1部リーグを8~12チーム数に

(参入希望チームが多ければ3部制導入も)

〇ホームエリア選定、スタジアム確保など参入要件制定

競技力を向上させ、興行の質を上げ、地域に愛される・運営企業の社員以外のファンを獲得し、稼げる体質に変えていく。

プロスポーツと旧来型の企業スポーツのいいとこ取りと言ったところだろうか。

□日本でラグビーのプロ化は元々無理があった

ラグビー保有選手数が多く、当然人件費が高い。

選手の疲労度・消耗度が高く、年間試合数を無闇に増やすことはできない。

サッカー以上に夏場は不向きで、怪我も多く、コンディションケアのためのスタッフや設備も多く必要だ。

JリーグBリーグのクラブではアマチュア時代と比較して、親会社が負担するお金が逆に増えたケースが多いとされ、上記理由も加味するとプロ化は厳しいと思っていた。

かと言って最低15億円とも言われるチーム運営費を毎年各企業が垂れ流し続けるわけにもいかず、今回決まった方向性は妥当ではないだろうか。

□企業チームが利益を生み出す存在へ

NIKKEIの記事内で書かれているように「企業の福利厚生ではなく、スポーツで稼ぐための組織に変わること」、「コストセンターからプロフィット(利益)センターに変えること」が大事である。

ここをいかにスピード感を持って、実行に移せるかが正否のカギを握るだろう。

企業チームが部活・福利厚生から脱することが出来れば、スポンサーもつきやすい。

Vリーグの企業チームがビジネス化を図るために地元で営業活動をしたところ、「何で企業の活動を支援しないといけないの?」との旨対応されたこともあるそうだ。

部活・福利厚生のイメージが強ければそれは当然のことで、利益を生み出す組織であることが浸透すれば、必然的に付いてくる。

完全なプロ化ではないので、チームに大きな資本は入らないだろうが、リーグのスポンサードや1マッチスポンサー、グッズ企画・製作などが想定できるのではないか。

□拮抗した試合が増えれば観客はより魅力を感じる

また2部もしくは3部制にして、拮抗した試合を増やしていきたい意図は感じられるが、下位チームはより一層の努力が求める。

ラグビーは実力差があるとスコアが大きく開く傾向があるとされる。

実際2/2の試合では97-0という例がある。

初めて見た試合がこういう一方的なスコアで、面白い!また観に行こう!と思う人は少ないだろう。

これは先日当ブログでも触れたようにWリーグも同様で、結局JX-ENEOSが優勝するんでしょ?と思われてしまったら、興味を持っても長続きしない。

スポーツは筋書きのないドラマだなんて言われるが、勝つチームが決まっているような状態では興ざめだ。

□Wリーグもラグビーに倣って改革を

Wリーグには色々と改革すべき点があるが、まず2位以下のチームの競技力向上。

また下位チームの中にはシーズンで1,2勝しか出来ないチームもあり、ラグビー同様2部制導入(復活)を検討してほしいところ。

2〜4の新規参入チームがあれば1部8チーム、2部6〜8チームで編成できそうだが…

現状JX-ENEOSだけでなく、セミファイナル常連チームは日本代表クラスの選手を多数擁し、高いレベルにあるが、2部制にすれば地域リーグの強豪が新規参入しないかという期待を抱いている。

現状の下位チームとしても身の丈にあったカテゴリーに属すことができる。

その上で試合数を増やす、ホームゲームを増やす。

Bリーグクラブが優先的に使用するアリーナが各地に整備されれば、現状Bリーグの試合で使用しているアリーナに余裕が出てくるのではないだろうか。

こうして女子バスケもメジャースポーツの仲間入り。

と簡単に進めば苦労しないが、淡い期待を抱いています。

一見メリットしかない企業スポーツのビジネス化が日本のスポーツ界で今まで出来なかったのはJリーグの成功と関係があると私は思う。

Jリーグに続けと理念ばかりが先行したプロ化の話が浮上しては消えの繰り返しで、ラグビーもバレーボールもここまできたのではないだろうか。

また日本ではスポーツで儲けること・本業以外で儲けることを悪とする風潮があり、完全プロ化か旧来型の企業スポーツの形を維持するの二択しかなかった面も否めない。

その風潮が変わるキッカケとなったのがプロ野球近鉄バファローズの消滅。

この後プロ野球JリーグではIT企業の参入が相次いだ。

BリーグでもIT企業やエンターテイメント関連企業、比較的新しい非製造業企業が参入している。

これらの企業は社内の意思決定が非常に早いようだ。

住友金属が親会社のJリーグ鹿島アントラーズ新日本製鐵との経営統合プロスポーツクラブを保有する意義等を検討した結果、社内の意思決定を早くし、時代の流れについていくため、メルカリに譲渡された。

ここ15年ほどで日本のスポーツ界を取り巻く環境は大きく変わっており、企業スポーツも変化を迫られている。

何でもかんでもプロ化・ビジネス化は最善の道とは言えない。

女子サッカーもプロ化に向けて動いているが、女子バレーや女子ハンドボールに多く見られる市民クラブ化で地元企業との連携を進める方が適しているかもしれない。

ラグビートップリーグの改革が成功すれば1つのモデルケースとはなるだろうが、会社にとって・選手にとって・その競技の発展において最善の道を選んでほしい。

それが切なる願いである。