Wリーグ2020-21レギュラーシーズンレビュー

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この社会情勢下でチームの総合力が問われたシーズンだったが、西地区はAクラスとBクラスがハッキリと分かれた。東地区は後半戦でのシャンソン化粧品の躍進には称賛しかないが、プレーオフを逃した2チームは物足りなかった。
選手の移籍が活発となり、ENEOSへの挑戦権を獲得したいチームに有力選手が分散する傾向の近年だが、そのチーム間での戦いは面白いものがある。しかしENEOSとの差はまだまだ縮まっておらず、下位チームは前述の通り。結果リーグ内でのトップとボトム、打倒ENEOS勢とプレーオフ圏外チームの実力差は広がったように思う。最終スコア2ポゼッション差以内が東地区8/48、西地区6/60(オーバータイムまでもつれた試合は東西1ずつ)。連戦で星を分け合ったのは東地区4/24、西地区5/30。東地区は最終週で接戦、星を分け合うカードが増えた。西地区はトヨタ自動車デンソー三菱電機の3チーム間の対戦とアイシンAW×山梨で起こったのみ。いわゆるアップセットが最終週のシャンソン以外はなく、順当な結果がシーズン通して続いた。

怪我なのか今シーズン出場なしに終わった選手、チームに帯同すらしていない選手が多いのも気になった。オーバートレーニングなのかこの社会情勢下におけるメンタル的な部分なのか。

 

以下チームごとに。

ENEOS

最終週でシャンソン化粧品に1敗、翌日は勝利したものの辛くも1点差だったが、前週までは皇后杯含め女王ぶりを誇示していた。プレーオフに向けて再加速していくはずだが、シャンソン化粧品を見る限り選手たちは一様に身体が重いように感じた。

シーズン通して怪我人が多く、宮崎選手、岡本選手の負担が極端に大きい。プレーオフは根性で乗り切れるだろうが、来シーズン以降反動がこないか心配してしまう。

 

富士通

長年チームを支えた実力者2人が引退し、12人体制で臨んだ今シーズン。さらに栗林選手、王選手は最後までコートに立つことはなく、山梨から移籍加入した星田選手はチーム戦術にフィット出来ず、プレータイムは限られた。選手層の薄さとサイズ不足の中で取りこぼしはせず、日立ハイテクとは2勝2敗。緻密なモーションオフェンスと超ファストブレイクは見ていてうっとりしてしまう。

ENEOS皇后杯含め3戦とも完敗。SFに進出した場合は高さ、強さはリーグ屈指のトヨタ自動車との対戦。どう対抗するか見てみたい。来季はアーリーエントリーで既に合流している3選手をフィットさせるとともにインサイド補強も必要か。

 

日立ハイテク

内海HCの下、大型補強もあり躍進した(私はここまで躍進するとは思ってませんでしたスミマセン)谷村選手の高さ・強さは最大の武器だが、決してそこに依存せず、薮内前HC時代の良さも残しつつ、得点力を大きく上げた。昨季まで所属していたトヨタ紡織では良さが活きていなかった佐藤選手も内海HCの戦術に見事マッチした。

ただロスター16人ながら9人でのローテーションが基本で、シーズン中に台頭してくる選手もおらず、皇后杯では選手のやり繰りに苦労していた。プレーオフではレギュラーシーズン最終戦を欠場した佐藤選手は復帰できるか。ローテーション内の9人が揃えばファイナルも狙える力はある。

来季さらにレベルアップするには若手選手の台頭が必須。プレータイムを貰えなかった中堅選手の退団、移籍補強もあるかもしれない。得点力の高いPG、スラッシャータイプのフォワードが加われば完璧だろう。

 

シャンソン化粧品

昨シーズンオフも主力選手が移籍、開幕直前に大卒ルーキーとマネージャーが退団。不安視されていたが、開幕週では東京羽田に連勝。その後は好内容も選手層の薄さが響き、負けが込んだ。皇后杯アイシンAWに敗れ、ファイナルラウンドには進めなかったが、アーリーエントリーで4選手が加わり、一気に強化された。吉田選手は得点源となり、佐藤選手はディフェンスでの貢献度が高い。まだ選手層は厚いとは言えないが、若いチームだけに怖いもの知らずでプレーオフに挑めば台風の目となるかもしれない。

ここ数シーズン主力の流出が続いているが、今オフこそは現有戦力を維持したい。それが出来れば名門復活も充分あり得る。

 

東京羽田

一昨シーズンはプレーオフ富士通を破りQF進出、打ち切りとなった昨シーズンも終了時点でプレーオフ圏にいたが、今シーズンは低迷。新潟からの3勝に留まった。本橋選手の大怪我による離脱は相当な痛手だったが、開幕時から低空飛行だったので、原因は他にある。能力のある選手は多いが、タイプが似通っる選手が揃っており、ロールプレーヤー的な存在もいない。HCの起用法にも偏りが見られ、選手が活き活きとプレーできていないように感じた。

一般ファンの多さではリーグ屈指なチームだけに頑張ってもらいたい。

 

新潟

仕事との両立、移動負担など他チームとは違う環境の中でシーズン半ばまでマネージャーが不在だった。選手をサポートする体制は充分だったのか疑問が残る。練習場にエアコンがないなどハード面も不十分だと聞くが、その中で最終戦はこれまでの得点力不足が嘘のように99点を取り、失点も70点台に抑えて勝利しシーズンを終えた。

今までの勝利とはひと味もふた味も違うと思う。これをキッカケに出来るか。環境整備や大ベテラン指揮官をサポートするコーチングスタッフ体制が必要だろう。戦力的にはもう1人頑強なインサイドプレーヤーが欲しいところか。

 

トヨタ自動車

圧倒的な選手層の厚さで西地区を制した。後半戦は三菱電機戦、山梨戦の出来が良くなかったが、試しながら・若手を起用しながら結果も出せたのはモンデーロHCの考えがチームに浸透している故か。誰が出ても約束事が徹底されていて、その上で各選手が特長を発揮していた。アーリーエントリーのソハナ選手は既に貴重な戦力となっている。

インサイドが強力でセカンドチャンス、サードチャンスをモノにできるチームだが、反面インサイド一辺倒になってしまう嫌いもある。最終週デンソー戦のように3ptシュートを増やしていきたい。外れてもオフェンスリバウンドをもぎ取ってくれるのだから。苦しい時に内外のバランスを意識できるか、リーグ制覇のカギはここだろう。

 

デンソー

マルコビッチHCの合流が10月中旬、その後もセルビア代表活動で2度渡欧。チームには混乱も見られたが、昨シーズンと比べディフェンスの強度が上がり、平均失点は東西合わせて最少。レギュラーシーズン最終週ではトヨタ自動車を58点、66点に抑えている。本川選手の加入によりオフェンスでの髙田選手依存度は下がったが、こちらもトヨタ自動車同様3ptシュートを増やしていきたい。

QFを勝ち上がればENEOSとの対戦だが、堅守を維持した上で近藤選手、篠原選手で得点が取れればファイナルさらにはその先も見えてくる。渡部選手の活かし方もカギ。

 

三菱電機

後半戦では前半戦で連敗したトヨタ自動車から1勝するなどファイナルに進出した一昨シーズンのしぶとさ、粘り強さが戻ってきた。王さんが引退してもインサイドは選手層が厚い一方でアウトサイドは川井選手、渡邉選手の負担が大きかったが、若手選手のプレータイムが徐々に増えてきた。特に永井選手の献身的な働きが目立つ。

SQF、QFは一発勝負、三菱電機に利があるようにも思えるが、川井選手、渡邉選手が余力を残して勝ち上がれるか。古賀HCが見崎選手、篠宮選手に託せるか。

来季も高卒ルーキーが複数名加入するとの情報があるが、序列を覆す若手の台頭、ポスト渡邉選手の育成にも期待。

 

トヨタ紡織

地区優勝も充分可能なチームだと思っていたが、新戦力をフィットさせることに苦心したシーズンだった。平末選手はプロの壁を乗り越え、PGとしてステップアップしていったが、佐坂選手は怪我もあったのか出場機会は少なかった。インサイドのサイズアップを目論み獲得した白選手がこのチームのスタイルに最後までフィットしなかったのが最大の誤算。オフェンスのリズムが崩れてしまい、プレータイムが少なかったが、昨シーズンの課題であったサイズアップは果たせず、トヨタ自動車デンソー三菱電機との対戦では全敗。飯島選手が主力に定着し、中野選手はシックスマンの役割を果たせていたことは収穫か。アーリーエントリーの岡田選手も楽しみな存在。SQF、QFは一発勝負だけにチャンスはある。

来シーズンこそ白選手、佐坂選手をフィットさせ、再浮上したい。

 

アイシンAW

インサイドの主力選手が移籍し、ロスターのバランスが悪く、コーチングスタッフの決定も遅れたアイシンAW。チームの雰囲気は良くなった。多くの選手がチャンスを得た。皇后杯準々決勝ではトヨタ自動車を慌てさせた。しかし結果としては昨シーズンと変わらなかった。リーグ戦では企業チームに勝てなかった。試行錯誤の連続でシーズンが終わってしまった感があった。

課題は山積しているが、まずはこのチームの長所・短所を整理し、確固たるチームコンセプトを作り上げることではないか。そしてフィジカル強化。ゴール下でのひ弱さが目立った。それだけでなく他のチーム(特に東地区のチーム)と比べるとオフボールでの動き出しや駆け引きが少ないように感じるが、オフボールの動きでもスタミナを消耗する。相手とのコンタクトが発生する。私がWリーグを見始めた3シーズン前と比べても試合のインテンシティは相当上がっている。フィジカル強化なくして強豪の仲間入りはできない。

 

山梨

一昨シーズン途中から指揮を執っている伊與田HCの戦術が浸透し、戦い方は徹底されているが、アイシンAWから1勝を挙げるに留まった。game1で3Qまで接戦に持ち込んでも4Qで力尽き、その流れのままgame2に入り、大敗のパターンが多いように思う。最終戦では意地を見せ、あと一歩のところまでいった。あの試合を毎節出来れば結果はついてくると思う。

フィジカルが不足しているのか、試合の中で走りすぎ・動きすぎなのか、相手のスカウティングが不足しているのか分からないが、コーチングスタッフを充実させるべきだと思う。

 

最後にプレーオフSQF、QFの予想を。

日立ハイテク×トヨタ紡織

三菱電機×シャンソン化粧品

SQFはともに今季初対戦。1試合目は谷村選手の高さが勝るか平末選手のスピードが勝るかというところだが、谷村選手を起点に外からのシュートの確率も高い日立ハイテクか。2試合目はタイプが大きく異なるチームの対戦、若手が多いシャンソン化粧品はフィジカルに戦う三菱電機に対して後手に回ってしまい、そのまま終始三菱電機が優勢に試合を進める展開を予想。

 

富士通×日立ハイテク

デンソー×三菱電機

SQFを勝ち上がったチームは連戦。体力的には不利。富士通デンソーは前日の試合をチェックできるメリットもあるが、前日劇的な展開で勝ち上がってきたりすると勢いがつく側面もある。

1試合目はインサイドの強さを活かした日立ハイテクの勝ち上がりを予想。2試合目はデンソーが戦術本川で接戦を制するか。

 

昨シーズンはプレーオフを開催できずに打ち切りとなってしまっただけに、楽しみでならない。各チーム・選手がベストパフォーマンスを発揮してくれる事を期待したい。