㊗3x3女子代表五輪出場権獲得㊗

大柄で屈強な相手とのフィジカルコンタクトを繰り返し、5点ビハインドとなった残り2分半以降は心身ともに疲労困憊・満身創痍だったと思う。それでも最後の力を振り絞った選手たち。快速を活かしてオーバータイムに持ち込むレイアップを決めた篠崎選手。懸命なボックスアウトでリバウンドを確保し、効果的なスクリーンでスペイン#10とのスピードのミスマッチを作り出した西岡選手。最後の最後まで走り続けFTを決め、ウイニングショットをアシストした山本選手。ドライブ・リバウンド・スクリーン・ブロックなど大車輪の活躍だったステファニー選手。

 

「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!!」

元首相の名言が浮かびました。と言っても試合中は祈るように見てて、終わった瞬間は涙してましたけど笑

 

 

では決勝Tを1試合ずつ簡単に振り返ってみます。

vsスイス 20-13

グループステージで接戦だったオーストラリア、ウクライナと比べるとサイズは下がるが、それでも日本よりは大きいチーム。小さい相手にサイズのミスマッチを前面に押し出して戦ってきたが、日本としてはグループステージで慣れており、かえって戦いやすかったのではないか。ウクライナ戦で露呈したスクリーンに対する守り方も修正されていた。スイッチを主体に守り、ファイトオーバーすることも当然あるが、使い分けや3人の意識共有が完璧にされていた。打たれた場合はガード陣が教科書通りのボックスアウト、インサイドを割られた場合は深追いせず潔く切り替え。約束事が徹底されていた。

それらを10分間遂行する日本の戦い方が継続できていた。よくバスケでは「ディフェンスからリズムを作る」というフレーズを聞くが、このチームの場合、「ディフェンスで相手のメンタルを削る」という表現がピッタリだろうか。

 

vsフランス 14-15

FIBAランキング1位、個人ランキングでも1,2,5位の選手を擁する強豪国。なら最初に決まった4チームの中に入っていないとおかしいのでは?そもそも大会に出るだけだも貯まるポイントの優劣で出場国が決まるシステムはどうなの?出場全チームを予選で決めるべきでは?など疑問はあるが、FIBAには5人制の発展途上国にもバスケを普及させたい意図があるようで、これ以上は言いません(笑)

さてフランス、とにかく強かった。切り込み隊長#5、大きくて強くて速い#28を中心に果敢にアタックしてくるチームで、日本は後手を踏んだ。ディフェンスもタイトで、それまでの5試合では日本が相手を疲弊させていたが、逆の展開を強いられた。アークのライン上あたりでのディフェンスが強固で、日本の思い描く形をなかなか作れなかった。それでもディフェンスで耐えてロースコアの展開に持ち込んだが、残り3分ほどでの#28のディープ2ptは痛かった。ステファニー選手がマークについていたが、一瞬の隙を突いて決めてきた。こういうプレーはWリーグでも3x3代表合宿でも経験することはできないだろう。

フランスのラストオフェンスの時にファール使えたとか9本打った2ptシュートが1本でも決まっていればというタラレバが敗因であり、決して圧倒的にやられた試合ではない。最後も山本選手が冷静にフェークを入れて、2ptシュートを放っている。次に向けて気持ちの切り替えさえ出来れば全く問題ないと思える一戦だった。

 

vsスペイン 20-18(OT)

両チームともこの日3試合目。ステファニー選手はフランス戦で足を痛めたようで、ややキレを欠いていた。スペイン#10は開始早々からいかにも身体が重そうだった。キツい中で日本が底力を見せた。

マークを振り切ってのゴール下でのシュートが決められない、パスミスファンブルなども見られた。スペイン以上に動きが鈍り、2ptシュートを立て続けにやられた。最大5点差がついた。これだけのビハインドは今予選初めて。正直万事休すかと思った。来週の最終予選を覚悟したが、彼女たちは原点に立ち返った。

4,5点差があっても無闇に2pt狙いはしなかった。喧嘩売られても買わなかった。スピード・クイックネスを活かしてゴールにアタックし続けた。自分に鞭打って動いて動いてチャンスを作った。失点を最低限に抑えた。この積極性が残り20秒切ってからのショットクロックバイオレーション誘発と同点ショットに繋がった。そしてオーバーファールになったのが一歩早かったのもスペイン。オーバータイムで日本はFTを獲得し、その後のディフェンスではファールで止めて一息つくことが出来た。

(今予選が進むにつれファールの使い方が上手くなってきた。日本女子チームはこの点が上手くないと言われているが、Wリーグでもこの経験を活かしてほしい)

 

そして日本に勝利の女神が微笑んだ。バスケの神様が日本に付いてくれた。

 

約1年半海外チームと試合をする事が出来なかったが、その中で選手たちは弛みない努力を重ね、鍛え上げてきた。山本選手は中の人がギブス選手なのかと思うくらい大柄な相手と戦っていた。フランス戦は苦戦を強いられたが、他の試合ではディフェンスの強度が最後まで落ちなかった。そういうチームを作り上げてきたことはただただリスペクトである。そして大会直前合同トレーニングを行なったというドイツ代表チームにも敬意と謝意を表したい。これまでの成果を予選前に試すことができたのではないだろうか。

 

最後に。

2ptシュートに頼らず、フィジカルコンタクトを恐れず、全員でゴールにアタックする。スポーツの醍醐味を味わえた大会だった。どんなスポーツでもそうだと思う。変化球や流し打ちばかりではすぐに覚えられる。見た目華やかな自分たちのサッカーはテレビゲームの中でしか通用しない。ブロックアウトやフェイント、ツーアタックばかり使っていては3セット取ることは難しいだろう。

相手にゴールに向かっていき、得点をもぎ取る・ボールを奪い返す。スポーツの、バスケットボールの魅力を再認識した月末だった。