Wリーグ21-22シーズン戦力分析 【東地区】

ENEOS

OUT

IN

  • HC 佐藤清美(再就任)
  • SF  三田七南(昭和学院高)
  • C    ロー・ヤシン(新潟)

エース宮澤選手、渡嘉敷選手の負傷離脱後インサイドを支えた中村選手が富士通に移籍。さらには宮澤選手までも…移籍自由化後も無風のシーズンオフが続いていたENEOSもついに荒波に飲まれることとなった。

  • PG 宮崎 髙田 星
  • SG 岡本 林
  • SF 藤本 奥山 モハメド 三田
  • PF 中田
  • C   梅沢 ヤシン 渡嘉敷

引退する石原選手も含めてプレーオフでも活躍していた3選手が抜けるのは痛手だが、それでもこのロスターを見れば非常に強力である。今までのように優勝候補筆頭とは言えないが、優勝候補の1つであることは間違いない。前シーズンはあまりにも怪我人が多かったが、宮崎選手は誰もが認める真のPGに成長。藤本選手はRSではプレータイムは少なかったが、プレーオフで大器の片鱗を見せ、新シーズンは完全ブレイクの予感が漂う。日本代表ホーバスHCが高く評価している奥山選手にはポスト宮澤として期待したいところ。

などなど多士済々で、スリーガード気味でラン&ガンスタイル、2〜4番ポジションにシューターを並べるラインナップも可能。ツインタワーに頼らなくても観客を魅了して勝つチームが作れる戦力が揃っているが、監督としてチームに関わっていた前HCの再登板では大きな変化・改革は望み薄か。ヤシン選手を獲得したとなるとなおさらか…

この辺りの保守性がここ数年移籍でのINもOUTもなかったチームから3選手が一気に流出する結果を招いたのかもしれない。

(留学生出身選手が加入するのは初めてとのことで、大きな変化ではあるが、渡嘉敷選手、梅沢選手の怪我の具合が芳しくないのかもしれない。実際に渡嘉敷選手は第一回エントリーからは外れている。トヨタ自動車に対抗するためのなりふり構わぬ補強なのかもしれない。この辺りは全く分からないチームです)

1,2シーズンで簡単に揺らぐほどの脆い土台ではないが、長い目で見るとチーム組織としてよろしくない方向に傾いている気がしてならない。新シーズンの結果よりも3シーズン後どうなっているかが気になるチームである。

 
富士通

アーリーエントリー

  • SG 赤木里帆(東京医療保健大)
  • SF 奥伊吹(松蔭大)
  • SF 渡邊悠(筑波大)

OUT

  • SG 谷口ニ千華(引退)
  • C    王昕(引退)

IN

前シーズンはENEOSトヨタ自動車との対戦では‘前線’の物足りなさが目立った。苦しい時間帯で町田選手、篠崎選手依存の傾向が強く、インサイドは経験、サイズ、パワーで劣った。その課題を解消すべく満点に近い補強が敢行された。

常勝軍団から加わった2選手はファイナル経験者が少なくなっている若いチームに勝者のメンタリティを還元してくれることだろう。宮澤選手は言わずと知れた国内最高のフォワード。内尾選手、内野選手はディフェンス面での貢献度が高い選手だが、宮澤選手の加入により外からの得点力は確実に増す。インサイドのサイズアップは果たせなかったが、ENEOSで鍛えられてきた中村選手の存在は若手選手に刺激を与えられるだろう。ハーフコートオフェンスではブレーキとなってしまうこともあるが、闘志むき出しのリバウンドと速攻で強みを発揮する。栗林選手も新シーズンは復帰見込み、宮澤選手は4番ポジション起用も可能とラインナップのバリエーションは広がった。トヨタ自動車ENEOSに充分対抗できるチームと見ていいだろう。

 

日立ハイテク

アーリーエントリー

  • PG 船生晴香(早稲田大)
  • C   目黒舞奈(奈良学園大)

OUT

  • PG 曽我部奈央(引退)
  • SG 佐藤ひかる(退団→アランマーレ)
  • SF 田中真琴(退団)
  • SF 藤永真悠子(退団)
  • C   鈴木知佳(引退)

IN

内海HCの下、飛躍の前シーズンだったが、曽我部選手、鈴木選手の引退は大きな痛手。彼女らの穴を埋められるだけの補強も出来ず、ルーキーや前シーズンはほぼノーチャンスだった新卒2〜3シーズン目の選手たちの成長にかかっている。若手の成長がないとプレーオフに出られるかどうかの立ち位置に逆戻りとなってしまう。

個人的には船生選手が兄・誠也選手のように1〜3番までこなせるユーティリティで華のあるプレーができる選手になってほしいと期待している。

 

シャンソン化粧品

アーリーエントリー

  • PG 大塚羽未(明星学園高)
  • SF 金田愛奈(大阪人間科学大)
  • SF 吉田舞衣(拓殖大

※「吉」は、「土」に「口」

  • PF 佐藤由璃果(筑波大)

OUT

IN

  • PG 藤岡麻菜美(現役復帰)
  • SF 大沼美琴(ENEOS

前シーズンはアーリーエントリーで加入した吉田選手、佐藤選手が早々にスターターに定着するとENEOSから1勝し、プレーオフでもインサイドに強みがある三菱電機相手に果敢に挑み、大接戦を演じた。流出を最小限に留め、現役復帰した藤岡選手、全休だった前シーズンからの復活を期す大沼選手という経験豊富な2選手の加入もあり、大きな期待が集まるチームだ。

流出が最小限とはいうものの、手薄だったインサイドからワシントン選手が日立ハイテクに移籍し、代役も確保出来なかったのは辛いところか。インサイドは量、サイズとも劣り、吉田選手、野口選手は4番ポジションでの起用がメインとなるだろう。ガード・フォワードは充実しており、タイムシェアも可能。このロスターをどう操り、活かすか。名将の采配に注目したい。

 

東京羽田

OUT

IN

早稲田大学や日本代表アンダーカテゴリーを歴任した萩原美樹子氏が新HCに就任。またこれまでは経験豊富なACが不在だったが、白鴎大でACを務め、ユニバーシアード代表等にも帯同していた佐藤謙介氏が入閣。コーチも選手もお互いのことを以前から良く知っている間柄だと思う。チーム作りはスムーズに進んでいるのではないか。ロスターは前シーズンの12人が全員残留し、高卒後にデンソーでのプレー経験がある粟津選手がWリーグ復帰を果たした。

ポテンシャルある選手が揃っているだけに新コーチ体制での巻き返しに期待したい。

 

新潟

アーリーエントリー

OUT

  • PG 二渡琴音(退団)
  • SG 平典紗(引退)
  • SF 千葉歩(退団→シャンソン
  • C   ロー・ヤシン(退団→ENEOS

IN

  • PG 陽本麻優(奈良学園大)
  • PG 山田瑞稀(メディセオ)
  • SG 中村華祈(札幌山の手高)
  • SF 中島彩衣(立教大)
  • PF 矢野祐未(立教大→丸紅)

大滝HCのスタイルが徐々に浸透し、最終戦でそれまでの得点力不足がウソのように99得点を決め、勝利で終えた前シーズン。そこから2枚看板が移籍、これはあまりにも痛い。特にリーグ屈指のサイズを誇るヤシン選手の替えは効かない。180センチオーバーの選手はおらず、イチから、いやゼロからに近いチーム再構築を迫られるだろう。前シーズン以上に厳しい戦いとなりそうだが、クラブとしては存続の危機と捉えて、選手のための環境整備等をしてほしい。

 

前シーズンは東西地区制だったが、その地区間をまたいでの移籍は石川選手(シャンソンデンソー)のみ。レギュラーシーズンの中で対戦した選手でないと特徴を把握しづらい面はあったのだろうか。それでもとにかく移籍が活発なシーズンオフだった。ENEOSから3選手が移籍するとともに留学生出身選手が加入した。トヨタ自動車には日本代表クラスが一気に3選手も加入した。近年は流出続きだったシャンソン化粧品は再建に向かっている。

男子が統一プロリーグになった波が女子にも波及しているだろうか。これまでの常識が通用しない・タブーとされていたことがタブーではなくなるといったことが今後も続くだろう。変化に対応できない会社・クラブ・選手は飲まれていくばかりだが、日本女子バスケの底力を見せるのは今。リーグの新会長の手腕にも期待。