Wリーグ2022-23 トヨタ自動車×ENEOS game1

トヨタ自動車○70-57●ENEOS 

両チームともHCが代わった。選手の能力値としては昨シーズンのトヨタ自動車を10とするとトヨタ自動車10→7、ENEOS8→9といったところか。しかし昨シーズン対戦時と変わらない結果・内容だった。4Qトヨタ自動車が若さと疲労ENEOSが林選手中心に意地を見せ、最終スコアこそ13点差だったが、それ以上の差を感じさせる試合だった。

日本代表3選手とソハナ選手でオータムカップとは別のチーム、昨シーズンプレーオフに近い輝きを取り戻したトヨタ自動車。一方のENEOSは代表選手が加わり、その中で大卒ルーキーの佐藤選手がスタメン。昨シーズンまでとは違い早めの交代策にも打って出ていたが、かえって混乱しているように見えた。

明暗を分けたポイントを整理していきたい。

 

フィジカル、兎にも角にもここに尽きる。バスケットボールというスポーツは背の高い選手がいると有利。日本の学生バスケでアフリカや中国からの留学生が活躍できるのはそういうことだし、Bリーグでもアジア枠が出来る前はほとんどの外国籍選手が身長2メートル以上のインサイドプレーヤーである。トヨタ自動車もソハナ選手というアドバンテージがあるが、それだけでなく皆フィジカルが強すぎる。デカいは正義だなんてよく言われるけど、ゴツいは正義が新時代かもしれない!

ダブルチームも交えたアグレッシブなディフェンスで渡嘉敷選手を追い込んで奪い、速い展開に持ち込むパワーバスケでENEOSのファールを誘い、先手を奪った。だんだんとオータムカップ同様縦一辺倒になってしまい読まれ始めて、3ptシュートが決まらない・イージーミスによるターンオーバーなどENEOSのリズムだったが、選手たちの表情には余裕が感じられた。そして平下選手がショットクロックぎりぎり、体勢も崩れた中で放った3ptシュートが決まった。彼女の試投1本目・チームとしてもこの試合初めての3ptシュートで流れがきた。流れを掴んだところで川井選手、梅木選手を投入し、悪いところは修正を図った(これがタイムシェアの在るべき姿だと思う)

ドリブルをより減らして素早く展開、横幅も広く使って、ピックアップしきれていない相手を攻め立てた。

ENEOSも渡嘉敷選手を囮に使ったり、彼女を活かすスペーシングが出来ているときは綺麗な得点が見られた。藤本選手のキックアウトから佐藤選手のコーナースリー、渡嘉敷選手や長岡選手がダイブしての得点とか良かったのでは。しかし3ガードが謎すぎた。速さを押し出すべきなのに渡嘉敷選手をリスペクトしすぎたか。インサイド中心の展開で、でもそういうラインナップになっていない。宮崎選手は代表戦での心身の疲労が抜け切っていない感が伝わってきたが、星選手が攻守に躍動していた。もっと彼女を信頼して、ゲームコントロールを託しても良かったと思う。

 

ロスターが若返っても層が薄くても変わらない強さを見せた前半のトヨタ自動車。大きくて強い選手が多いのに、ディフェンスのスイッチ・ローテーション速くて、フットワークが軽い。サマーキャンプ、オータムカップを欠場したソハナ選手が跳べて走れて賢いスーパーエースへとどんどん進化していて、宮下選手は適度にスコアラーで走って運ぶ戦術宮下(桜木ver)で山本選手、ステファニー選手はW杯の鬱憤を晴らす大活躍(本来の活躍ぶり?笑)かえって先が怖くなるくらいの破壊力だった。TV中継あるENEOS戦でまた圧勝してしまうのは申し訳ないなとか思ってたら、そうはいかなかったね(スコア上はね、スコア上は笑)

3Qの入りが良かったのはENEOS。渡嘉敷選手が広範囲に顔を出して(ストライカーか?笑笑)流動性あるオフェンスになってきたが、トヨタ自動車も流れを渡さない。ルーズボールトランジションでの集中力がすさまじい!どのチームも開幕戦は特に勝ちたいに違いないが、その気持ちの強さを感じさせてくれた。そして残り7分ごろハーフコートオフェンスから山本選手のパスはステファニー選手の頭を越えるかと思ったが、理不尽な腕の長さでキャッチして左コーナーの川井選手へ。3ptシュートをしっかりと決めて48-25でENEOSタイムアウト。これセコンドからタオルが投げ込まれた的なやつ=終戦宣言だと思って、実際タイムアウト明けの変化とか奇策とか特になかったが(むしろ大神HCの方が負けてる側の雰囲気でディフェンスアグレッシブに!などと檄を飛ばしていた)、5分切ってまさかまさかの林選手投入ですよ…

林選手ほどのクレイジーな選手(褒め言葉ですよ笑笑)が25分以上も出番なしってことはどう考えてもコンディションは万全には程遠い。TV中継で解説の原田裕花さんも取材談話として「まだ痛むこともある。5対5での練習に合流し始めたばかり」などと伝えていた。トヨタ自動車の尋常じゃない強さ、ガード陣のファウルトラブルで前からのプレッシャーを強めるわけにもいかず、やむを得ずなところはあっただろうが、でもねぇ…本来使うべきじゃないし、使うなら前半で少しでもコートに送って1本でも打たせる。遅くとも後半頭からではないかと……

なんてことを考えてましたが、冷や汗かきましたね、ええ。。1本目でいきなり決めるんですから!しかもシュートフォームが本来とはかけ離れたまるで別人のそれだったのに…

そこですかさずタイムアウトを取った大神HCの判断は良かったが、その後も林選手は脅威を与え続けた。しかし点差は広がっていき、3Qラストのステファニー選手のFTはダメ押しのダメ押しの感があった。

 

4Qはトヨタ自動車がクロージングに課題を残した。ステファニー選手、梅沢選手の疲労が顕著でハリーバックできず、攻守でリバウンドを確保できず。点差は徐々に詰まっていったもののタイムアウトでの川井選手のチームメイトへの厳しい指摘、山本選手のクロックコントロールなど要所要所で引き締めて、一桁点差までは迫られずに勝利した。

(最後の方のステファニー選手のアンスポは余分でしたね…張り切りすぎました…苦笑)

 

戦力レベルで考えるとトヨタ自動車連敗もあると思っていた中で先勝出来たことは大きい。これは若いチームにとって自信に繋がる。ただ開幕戦見てて強く思ったのは大神HCって負けず嫌いで完璧主義者で冷徹なリアリストかもなぁと。強豪チームを率いる指揮官として求められる要素ではあると思うけど、それらが強くなりすぎるとマイナスに作用する時もあるので、今後注目していきたい。

 

  • 山本選手・川井選手ツーガードの時間帯が長めだった

→ステファニー選手を3番ポジションで起用しミスマッチを作り出したい、起点を増やしたい意図があると思うが、ハンドラー1人で梅木選手、3番に平下選手などバリエーションを増やしたい。

  • ステファニー選手38分出場

展開的に1人の選手がここまで長く出る必要はなかったが、大神HCのステファニー選手への信頼の高さと初陣を絶対獲る意志の強さの現れか。レギュラーシーズンでは特定選手に過度な負担は掛けてほしくないのが本音…

  • 梅沢選手の起用法

生まれ持ったものであろう抜群の身体能力、しなやかなスナップで放たれるミドルレンジからのシュート、モンデーロ前HCの下で向上し続けたスペーシング、ディフェンス時のポジショニングなどなどでもはや存在そのものが理不尽なソハナ選手。彼女がスーパーすぎる故に休んでいる時間帯はどうしてもチームとしてのパフォーマンスが落ちてしまう。梅沢選手も桜花学園高、ENEOSで鍛えられ、日本代表経験があり、体幹の強さを活かしたリング至近でのプレーはソハナ選手を上回っていると思う。しかし現状は体力、集中力に難があり、ベストパフォーマンスを発揮するには出場時間15分・連続で出るのは5分までではないか。ステファニー選手も3,4年前はそういう感じだったので、練習のみでもいいので3x3に取り組めば劇的に成長を遂げるかもしれない。そうなるとツインタワーをオプションとして持て、幅が広がる。

昨日の試合を見た多くの人が感じた疑問はこ

の点だろうが、今シーズンのトヨタ自動車のカギといってもいいのではないか。

大神HCは要求レベルに達していない選手は何点差になろうが公式戦では起用しないアルバルク東京前HCのルカ・パビチェビッチ氏(以下ルカ)と同じ思考かもしれない。個人的には試合で使わないと成長しないと思っているし、今シーズンのチーム事情を考えれば尚更である。一方でプロである以上はチームとしての成長や能力の高い選手を優先する厳しさを追求していく方針も理解できるし、出番は与えられるものではなく勝ち取るものだ。実際に齋藤拓実選手やシェーファー・アヴィ・幸樹選手はアルバルク東京では不遇だったが、研鑽を積み、移籍を経て日本代表常連選手へと成長している。吉井裕鷹選手も出番に恵まれなかったが、怪我人が相次いだチーム事情もあり出番を増やし、日本代表にまで登り詰めた。ジーコ氏の言葉を体現している。

コーチ陣がDNPだった3選手をどう育てていくか、3選手が腐らずに反骨心を持って取り組めるか。ここは本当にカギとなってくる。ファンとしては全選手がコート上で躍動する姿を見たいと思うのは当然だし、出場時間が長い選手の疲労や怪我も心配してしまうが、大神HCは3連覇・2冠に向けて邁進していると思う。今は信じるのみ。

 

頑固というか確固たる信念を持っているであろう大神HC(コートネームもシンだしね笑)だが、タイムアウトでセットオフェンスの指示できるし(当然のことだけど当然じゃなくなってるのがこの界隈w)、流れが良くないときもポジティブな声掛けを心掛けている。そして何より明るい!元気がいい!

応援したい・ついていきたい指揮官だと思えた開幕戦だった。

 

さてgame2がもうすぐ始まりますね〜

林選手の起用法に注目です。個人的には長く使ってもらった方が良いと思ってます。そりゃ3ptシュートはバシバシ決められるだろうけど、オフェンスの時にミスマッチ作れて、倍返しできそうだから。

でも日本の宝だから無理してほしくないし、昨日の彼女が決めた時の盛り上がり考えるとアウェイ感あって何か嫌だし(笑)、ここは来週の富士通戦に備えて40分間ベンチを暖めてもらいたいです。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。でも↓のブログ、記事読んでいただいた方が丁寧で簡潔で分かりやすくてオススメです(なら先に照会しろよって話ですが笑笑)

しかし女子バスケ関連のメディア記事、語るファンが増えたのは嬉しい限りです。このブログタイトルは近い将来No WLEAGUEからWELEAGUEに変わってるかもしれませんw