Wリーグ東地区第5週レビュー


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富士通レッドウェーブ×日立ハイテククーガーズ

game1は両チームとも自分たちの特長を出そうと戦い、日立ハイテクはそれがハマり快勝。game2は前日から攻守においてアジャストした富士通が圧勝。両チームの実力は拮抗していると思うが、それゆえかバックトゥバックの難しさを実感する試合でもあった。

日立ハイテクは谷村選手が38分出場で30得点・15リバウンドと獅子奮迅の活躍を見せたが、北村選手・佐藤選手が3ptだけでなくドライブからの得点を決めるなどオフェンスパターンが増えてきたように思う。それ以上に目立ったのがディフェンス。曽我部選手が町田選手に自由を与えず、基点を潰した。今季鶴見選手より曽我部選手のプレータイムが増えているが、ディフェンス面への高評価であることは明らかだ。インサイドにボールが入ってもダブルチーム、ヘルプ、ヘルプに行くフリなど使い分けが絶妙で、富士通は外からのタフショットが増えた。

3ptアテンプトが日立ハイテクより10本以上多い32本だが、成功率は30%を切っているのがその証か。加えて日立ハイテクはサイズ、フィジカルを備えた選手が多く、3番ポジション以外は基本マッチアップで優位に立てる。その相手に富士通インサイド陣は完全なパワー負け。ならばガード陣で打開しようと谷口選手、岡田選手が奮闘。谷口選手は12得点の活躍。岡田選手もエナジー全開のディフェンスと積極的なドライブを見せたが、キックアウトから連動性がなかったり、フィニッシュで迷いが見られたりとチームにフィットしきれていない感があった。

その中でテーブスHCは町田選手・岡田選手・篠崎選手のスリーガード布陣を仕掛けてきたが、練習でやっていない策であることは明らかだった。それだけ厳しい展開であり、打つ手のなさを露呈してしまった。

 

game2は一転富士通がアグレッシブなディフェンスを仕掛け、終始圧倒した。3ptラインで激しくプレッシャーを掛け、インサイドにボールが入っても時にダブルチームで潰しにいき、谷村選手を封じた。簡単に捌かれてオープンで3ptを打たれる場面も多かったが、それは覚悟の上だったのだろう。3ptを捨ててでも谷村選手にはやられたくなかった。結果日立ハイテクは谷村選手の得点は約半分となっただけでなく、3ptの成功数も下がった。ボールの回りが悪く、本来のオフェンスの形ではなかったからだろうか。谷村選手依存ではないようで、スタッツ通り依存していることが浮き彫りになった一戦だった。9人でローテーションしているが、ダラーメ選手ら新卒1,2年目の選手の台頭にも期待したい。

ディフェンスでリズムを掴んだ富士通は速いオフェンスで圧倒し90点。game1はチーム全体のアシストが12だったが、game2は町田選手が1人で11アシストをマークするなどチーム合計で25。篠崎選手は29得点とこれだけ見てもこのチームのらしさが全開だったことが分かるし、チームとしても納得の前半戦ラストマッチだったのではないだろうか。広報さんのウキウキ感が出まくってますね(笑)

他の選手含めて45度からドライブインで仕掛けて、ノーチャージセミサークルエリアまでは攻め込まず、パスアウトからの3pt(成功率は50%超)やミドルシュートやフローター、スクープショットを多用し、パワー差を埋めるアイディアも見られた。

谷口選手は引き続き好調。篠崎選手とはタイプが全く違うので守りづらく、かつ併用も可能なので、2,3番ポジションのバリエーションは実に豊富である。game1ではらしさは出しつつも孤立気味なところがあった岡田選手もチームが良い流れの中で起用され、キッカケを掴みそうだ。町田選手という絶対的な存在がいる中で現状は繋ぎ役・ディフェンスでエナジー注入といったところだが、外からのシュートの精度を上げていけばテーブスHCとしても起用しやすくなるのではないか。イメージとしては山本選手(トヨタ自動車)、酒井選手(アイシンAW)のような役割だろうか。決着がついた試合終盤にしかプレー機会は与えられていないものの懸命なアピールを続ける星田選手含めて3人でPGをローテーションし、時にツーガードも出来れば、ディフェンス強度を40分維持でき、よりこのチームの良さが出せるかと思う。

 

両チームのファンではないが(どちらかというと富士通の方が好き)2試合とも見た立場からすると変化を楽しめたが、最終的には11点差に収まったgame1を含め2試合とも前半で決着がついてしまった感があったのは残念だった。当然スカウティングもアジャストもされるが、試合の中でアジャストしたり、ベンチがさらにもう一手二手打って、接戦になった上で、星を分け合っていたら誰が見ても見応えがある試合になっていたのではないだろうか。両チームに能力の高い選手が揃っているだけに余計にそう思えてしまった。さらに言えばそれが出来なければENEOSだけでなく、分厚い戦力を策士が操るトヨタ自動車デンソーの上をいくのは難しいのではないかと感じさせられたが、時間はある。両指揮官が皇后杯までにどうバージョンアップさせられるか。交流戦がないのは残念だが、激戦続きの皇后杯になることを期待したい。

 

新潟アルビレックスBBラビッツ×東京羽田ヴィッキーズ 

  • game1 新潟●54-58○東京羽田
  • game2 新潟●66-81○東京羽田

前週まで8連敗の両チーム。新潟は戦力的に厳しいのは否めず、怪我人もいるようでやり繰りも難しいが、ロー・ヤシン選手という(ENEOS戦以外では)絶対的な高さを誇る選手がいる。東京羽田に関してはどう考えてもこの成績はあり得ない。私は地区3位に予想していたし(贔屓目もあるが笑)、最低でも4週で2勝は出来るチームだ。

そう思いながらgame1を見たが、新潟は大黒柱ヤシン選手、高いスキルを活かして得点を量産できる千葉選手にボールを回す型がもっとあれば勝てる試合だった。game2も17分くらいは互角の展開だったが、軸丸選手の連続得点により前半でケリをつけた。

正直なところ試合内容としては凡戦。両チームが何故結果が出ていないのかを考えると他のチームと比べて圧倒的に試合中のコミュニケーションが少ないことが見て取れた。クロックが止まっている時にハドルを組む、ファールやイージーミスをした選手を励ます、交代でベンチに下がった選手にコーチが声掛けするなどバスケットボールという競技は試合中のコミュニケーションが取りやすい。それによって気持ちを切り替えることもアジャストすることも微修正することも可能だが、それが出来ないと悪い流れを変えることは難しい。

  1. コミュニケーションが少ないから弱いのか
  2. 弱いからチームに亀裂が生じてコミュニケーションが減っていくのか
  3. コーチングスタッフ編成に問題があるのか
  4. HCの性格などがチーム体質に影響しているのか

全てが正解だと思うが、両チームとも特に3,4の部分が大きいのではないか。両指揮官とも選手とはある程度距離を取って接する威厳のある先生タイプだと思う(新潟の場合は選手とのジェネレーションギャップがありすぎるのかもしれないが…)個人的には好きな手法ではないが、それはそれでアリ。ただそれならトヨタ紡織・中川HCやシャンソン化粧品・丁前HCのように時にはもっと熱くなってもいいのかなと思う。叱咤することもあってもいいと思う。プロレベルのアスリートって負けず嫌いの塊、やられたらやり返す・叱られたらそれに発奮する人ばかりでしょう。

叱咤しないのならデンソー・ヴクサノヴィッチAHCのように常に穏やかにコミュニケーションを取っていくべきだと思う。またHCの性格やチーム作りの方針に合ったACが必要だが、そういう存在もこの両チームにはいない。これはコミュニケーションだけでなく、戦術面・技術面にも大きく影響してくる。シーズン中の選手補強は出来ないリーグだが、コーチングスタッフなら可能であり、手を付けるべき部分だろう(お金もコネもないのかもしれないが…)

 

ENEOS×シャンソンは見てません…野口選手の活躍は聞いております。

 

東地区の前半戦ベスト5を勝手に選出しようとしましたが、長くなったので、別トピックにします。とりあえずリーダーズをご覧ください(笑)