皇后杯準決勝短評

ENEOS×デンソー

ツインタワーの欠場により平面戦を意識したENEOSはスペースの使い方が上手く、中村選手のドライブが活きた。それによりだんだんとデンソーは中に気を取られ、中田選手がミドル、宮崎選手がスリーを次々と沈めた。

ディフェンスでもメンバーが入れ替わっていることを感じさせない連携の良さが見られた。

しかし何より光ったのは選手たちの気持ち。試合前に渡嘉敷選手の怪我が重傷であることが発表された。その渡嘉敷選手もベンチに入り、チームを鼓舞していた。負けるわけにはいかない。負けたら「渡嘉敷が居ないと駄目か…」と言われるわけだから。その気持ちの強さがシュート、リバウンド、ディフェンス時のプレッシャーの掛け方に現れていた。

デンソーENEOSの名前に怖気づいてしまっていたのだろうか。リーグ戦でのトヨタ自動車戦のような積極性が見られなかった。「渡嘉敷が居ないENEOSなんてENEOSじゃねぇよ!」くらいの気概を見せてほしかった。準々決勝の富士通同様外からのシュートが決まらず、ENEOSにチャンスを献上してしまっていた。

後半立ち上がり本川選手の3ptシュート、髙田選手のバスケットカウントでデンソーに流れが傾きかけた。プレータイムが長いENEOSの選手たちの判断力が鈍り、リバウンドでの反応も悪くなっており、出血の治療で他の選手より休んでいる時間帯が長かった中田選手で何とか繋いでおり、一気に差を詰めるチャンスだったが、両チームが1回ずつタイムアウトを取る間にENEOSリカバリーできた。髙田選手が3つ目の個人ファールで下がらざるを得なくなり、そこから踏ん張れず、万事休すとなった。

セルビア代表HCを兼任するマルコビッチ氏も人の子。この試合での采配は冴えなかった。1Q残り1:38で髙田選手、さくら選手、ひまわり選手を下げて、畠中選手、森選手、園田選手を投入。長身選手を総入れ替えした格好だが、これが見事に失敗。14-14だったが、ディフェンスの連携が乱れて、20-14で1Qを終えることとなってしまった。6失点を喫した事実だけでなく、そのあとの選手交代も消極的になってしまい、スタメン選手に負荷がかかった。これが髙田選手のファールトラブルのときに持ち堪えなかった一因とも言えるのではないか。世界の名将の判断をも狂わせる魔力がENEOSにはあるのかもしれない…

 

日立ハイテク×トヨタ自動車

7選手でローテーションしていた日立ハイテクはよく耐えた(アイシンAWは22分で詰んだ…)曽我部選手、佐藤(奈)選手が出られる状態であれば結果は違っていたかもしれない。リーグ戦ではスタメン出場の機会はなかった星選手、白鞘選手が迷いなくプレーし、北村選手、谷村選手はトヨタ自動車インサイド陣に屈しないフィジカル、メンタルの強さを見せた。しかしトヨタ自動車の戦力が質量とも上回った。

カッティングを多用する日立ハイテクのオフェンスに序盤は手を焼いたが、すぐにアジャスト。エブリン選手、ステファニー選手、長岡選手は高さ、フィジカルの強さに加えプレーエリアも広く、そこがディフェンス面で活きた。リバウンドが拾えなくなってきたら河村選手が救世主となり、泥臭くボールを繋いでくれた。この4選手のインテンシティあるプレーが7人ローテーションの日立ハイテクにじわりじわりとダメージを与えていたのではないか。

平下選手は3pt3本を含む13得点。トヨタ自動車加入後最長のプレータイム、トーナメント大会のプレッシャーもあったであろう中で終盤はパフォーマンスは落ちたが、三好選手の不調をカバーした。ディフェンスでもルーキーらしからぬ落ち着いた対応を見せるなどタレント軍団の中で存在感を発揮している。

MVPは4Qで9得点を挙げ勝負強さを見せた長岡選手か。インサイド陣の最年長としてチームを引っ張る自覚が感じられる。渡嘉敷選手が東京五輪に間に合わない可能性もあるが、河村選手や谷村選手、中田選手(ENEOS)も含め元気な選手たちがホーバスHCの心配を軽減させてほしい。

 

 

この結果決勝はENEOS×トヨタ自動車となった。渡嘉敷選手離脱の緊急事態を乗り越え勝ち上がってきたENEOSは気持ちの強さを2日連続で出来るだけのメンタル的体力はあるのか。リーグ戦でのプレータイムが少ない中田選手、中村選手のコンディションへの不安もある。12人全員が出られる状態にあるトヨタ自動車も平下選手がパフォーマンスを維持できるか。三好選手の爆発も必要だし、山本選手がもっと変化をつけられるとENEOSとしては脅威だろう。

渡嘉敷選手不在ならトヨタ自動車が断然有利と言いたいところだが、全くもってそうではない。全く読めない試合なので、楽しみである。